「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・平岸伝 2
神様たちの話、第207話。
ワーカホリックの休日。
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2.
「と言うわけで今日は休みだ」
「あら、珍しい」
ゼロへの報告の直後、エリザから「ほな明日休みな」と命じられ、ハンは半年ぶりの休日を取った。
とは言え、いつも仕事漬けのハンである。
「それで何故、わたくしのところに?」
尋ねたクーに、ハンは肩をすくめて返す。
「特にやることも無いし、誰かに会う用事も無い。とりあえず思い付いたのが、君だっただけだ」
「まあ、嬉しい。……とは申しましても、そのご回答は悲しすぎますわ。21歳の若い男性が、『やることが無い』だなんて。これがマリアなら、『ご飯食べに行きましょーよ☆』などと仰られるでしょうに」
「ホンマやわ」
と、クーの部屋の扉の、その向こうから声が飛んで来る。
「エリザさん?」
「アタシも自分の予想が当たって、こんな悲しいとは思わへんかったわ」
そうこぼしつつ、エリザも部屋の中に入って来た。
「アンタのコトやから、ヒマ持て余してあっちこっちウロウロしつつ部下の子らとか兵士さんとからに『何か手伝うことは無いか?』って尋ねて回って『あ、いえ、特には』とか『大丈夫です』とか断られて手持ち無沙汰になって鍛錬でもしとこかなーて修練場行ったら人いっぱいいててよっしゃ一緒に素振りでもしよか思て近付いたら『今日もこちらに?』やの『休日にもですか』やの遠回しに邪魔者扱いされてちょとヘコんでそのまま王宮までとんぼ帰りしてソレやったらマリアちゃんとかビートくんとかイサコくんとかと話しよかて探したけど三人とも外に出とるん思い出していよいよ何もやるコト無くなって途方に暮れかけたトコでよーやくクーちゃんも今日お休みやったっちゅうコト思い出してそんなら声でもかけとこか、……っちゅうトコやろ?」
「もしかして、ずっと見てたんですか?」
苦い顔をするハンに、エリザは「そんなヒマなコトするかいな」と返す。
「アンタのやるコトなんて、リンダやジニーちゃんらと遊ぶ時より予想付くっちゅうねん。ま、午前中はソレで潰れるやろなと思て、時間見計らってこの辺りで待ち伏せしとったんよ」
「結局暇人じゃないですか。エリザさん、今日は休日じゃないでしょう?」
呆れた目を向けながら、ハンは首をかしげる。
「俺に何か用が? それともクーに?」
「特には無いで。お話しよう思て来ただけや」
そう返して、エリザは手に提げていた籠を、テーブルの上に置く。
「はい、コレお茶とお菓子な」
「お茶?」
クーがきょとんとした顔で、ポットの中を覗き見る。
「こちらの邦でお茶をいただいた記憶が、と言うよりも茶葉自体を拝見した記憶がございませんけれど、茶葉をお持ちでしたの?」
「こっちで作った新商品や。ちょと離れた村でキレイな花畑見つけてな、近くの村の人らに聞いたら食用やて聞いたから、乾燥させたり煎ってみたり色々やってみたら、ええ感じのお茶が出せたんよ。村の人も『その発想は無かった』言うて喜んではったわ」
「まあ、素敵ですわね」
二人が楽しそうに茶器や皿をテーブルに並べている間、ハンはぼんやり突っ立っていた。それを見たエリザが、声を掛ける。
「ボーッとしてんと、こっち手伝い。ほら、お菓子出し」
「あ、はい」
席の用意が整い、エリザが座る。
「ほな、何話そかな」
「ではわたくしから、質問したいことが一つ」
クーも座り、こう続ける。
「この前お父様と話した際に、シェロの暴走は『セザの遺恨』に一因があると仰っていたのですが、わたくしが尋ねても、『昔の話だから』と仰るばかりで」
「あー、まあ、シェロくんのコトはついこないだやし、セザさんのコトも、ゼロさんにはあんまり思い出したない話やからな」
「と申しますと?」
「ゼロさんにとったら、その話は『自分のせいで友達が犠牲になった話』やからな」
「まあ」
クーは口元を押さえ、申し訳無さそうな顔をする。
「聞いてはいけない話でしたのね」
「ゼロさんにとったらな。ちゅうても、アンタが聞きたかったら教えるけど。どないする?」
そう問われ、クーは困った顔をしたが――結局、好奇心が勝ったらしく――おずおずとした様子で応じた。
「では、その、……お伺いします」
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ワーカホリックの休日。
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「と言うわけで今日は休みだ」
「あら、珍しい」
ゼロへの報告の直後、エリザから「ほな明日休みな」と命じられ、ハンは半年ぶりの休日を取った。
とは言え、いつも仕事漬けのハンである。
「それで何故、わたくしのところに?」
尋ねたクーに、ハンは肩をすくめて返す。
「特にやることも無いし、誰かに会う用事も無い。とりあえず思い付いたのが、君だっただけだ」
「まあ、嬉しい。……とは申しましても、そのご回答は悲しすぎますわ。21歳の若い男性が、『やることが無い』だなんて。これがマリアなら、『ご飯食べに行きましょーよ☆』などと仰られるでしょうに」
「ホンマやわ」
と、クーの部屋の扉の、その向こうから声が飛んで来る。
「エリザさん?」
「アタシも自分の予想が当たって、こんな悲しいとは思わへんかったわ」
そうこぼしつつ、エリザも部屋の中に入って来た。
「アンタのコトやから、ヒマ持て余してあっちこっちウロウロしつつ部下の子らとか兵士さんとからに『何か手伝うことは無いか?』って尋ねて回って『あ、いえ、特には』とか『大丈夫です』とか断られて手持ち無沙汰になって鍛錬でもしとこかなーて修練場行ったら人いっぱいいててよっしゃ一緒に素振りでもしよか思て近付いたら『今日もこちらに?』やの『休日にもですか』やの遠回しに邪魔者扱いされてちょとヘコんでそのまま王宮までとんぼ帰りしてソレやったらマリアちゃんとかビートくんとかイサコくんとかと話しよかて探したけど三人とも外に出とるん思い出していよいよ何もやるコト無くなって途方に暮れかけたトコでよーやくクーちゃんも今日お休みやったっちゅうコト思い出してそんなら声でもかけとこか、……っちゅうトコやろ?」
「もしかして、ずっと見てたんですか?」
苦い顔をするハンに、エリザは「そんなヒマなコトするかいな」と返す。
「アンタのやるコトなんて、リンダやジニーちゃんらと遊ぶ時より予想付くっちゅうねん。ま、午前中はソレで潰れるやろなと思て、時間見計らってこの辺りで待ち伏せしとったんよ」
「結局暇人じゃないですか。エリザさん、今日は休日じゃないでしょう?」
呆れた目を向けながら、ハンは首をかしげる。
「俺に何か用が? それともクーに?」
「特には無いで。お話しよう思て来ただけや」
そう返して、エリザは手に提げていた籠を、テーブルの上に置く。
「はい、コレお茶とお菓子な」
「お茶?」
クーがきょとんとした顔で、ポットの中を覗き見る。
「こちらの邦でお茶をいただいた記憶が、と言うよりも茶葉自体を拝見した記憶がございませんけれど、茶葉をお持ちでしたの?」
「こっちで作った新商品や。ちょと離れた村でキレイな花畑見つけてな、近くの村の人らに聞いたら食用やて聞いたから、乾燥させたり煎ってみたり色々やってみたら、ええ感じのお茶が出せたんよ。村の人も『その発想は無かった』言うて喜んではったわ」
「まあ、素敵ですわね」
二人が楽しそうに茶器や皿をテーブルに並べている間、ハンはぼんやり突っ立っていた。それを見たエリザが、声を掛ける。
「ボーッとしてんと、こっち手伝い。ほら、お菓子出し」
「あ、はい」
席の用意が整い、エリザが座る。
「ほな、何話そかな」
「ではわたくしから、質問したいことが一つ」
クーも座り、こう続ける。
「この前お父様と話した際に、シェロの暴走は『セザの遺恨』に一因があると仰っていたのですが、わたくしが尋ねても、『昔の話だから』と仰るばかりで」
「あー、まあ、シェロくんのコトはついこないだやし、セザさんのコトも、ゼロさんにはあんまり思い出したない話やからな」
「と申しますと?」
「ゼロさんにとったら、その話は『自分のせいで友達が犠牲になった話』やからな」
「まあ」
クーは口元を押さえ、申し訳無さそうな顔をする。
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「ゼロさんにとったらな。ちゅうても、アンタが聞きたかったら教えるけど。どないする?」
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