「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・平岸伝 3
神様たちの話、第208話。
第5次サウスフィールド戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
双月暦3年9月6日、午前2時頃――クロスセントラル南の村、サウスフィールド郊外にて。
「ゼロだ。全隊、報告を頼む」
まだもうもうと土煙が上がっている中、ゼロが頭巾を巻いて、討伐隊全員に状況を尋ねる。
《アンドレス班、周囲に異常は確認できず! とりあえずバケモノは、全部吹っ飛ばしたぜ!》
《シモン班、こっちも終わった。負傷者無し、待機中》
《ヤク班、軽傷2名。戦線より離脱中》
《ハロン班……》
各班から報告を受け、順次ゼロが応答する。
「ゼロだ。各班状況、把握した。死亡者がいないようでほっとしたよ。じゃ、とりあえず皆、僕のところに集合して」
《了解》
各班班長から口々に応答を受け、ゼロはふう、とため息をついた。
「どうしたんですか、陛下?」
「安心したからね。今回もみんな生きて帰れそうだって。それよりセザ」
ゼロは苦い顔をして、隣りにいた自分の班員、セザに釘を刺す。
「『陛下』は勘弁して欲しいんだってば。そりゃ王様のことはそう呼ぶんだって教えたのは僕なんだけども、自分がそんな風に呼ばれるのは、どうもね」
「そう仰られても」
セザも同じように、苦い顔を返してくる。
「私の陛下への敬愛を示すものですから」
「皆と同じように話しかけて欲しいんだけどなぁ」
他愛もない話をしているうちに、他の班の者たちがぞろぞろと戻って来る。
「おつかれさん、ゼロ」
その先頭に立つゲートが、手を振りつつ近付いて来る。
「おつかれ、ゲート。今回もどうにかなって良かった」
「そうだな。しかしさ」
一転、ゲートは神妙な顔をする。
「もういい加減、お前が現場に来るのはやめにした方がいいんじゃないか? お前に何かあったらどうすんだって、いっつも言ってるよな?」
「その話は何度もしたじゃないか」
ゼロは肩をすくめ、ゲートの提案を断った。
「誰かに危険な仕事を丸投げして、自分は遠い安全なところでふんぞり返ってるなんて、僕の気が気じゃないんだよ。
それにさ、みんなもうノウハウと言うか、ある程度慣れてきた感じもあるから、そうそう危険な目に遭うなんてことも無いだろうし」
「まーたお前は呑気なことを」
ゲートはふう、と不満げな息を吐きつつ、辺りを見回す。
「みんなボチボチ戻ってきてるな。この後は?」
「見張りを付かせて、この辺りで日の出まで休もう」
「おう」
やがて隊の全員が無事な姿で戻り、ゼロが呼びかける。
「みんな、おつかれさま。今晩はとりあえず、ここで休もう。先にアンドレス班とスレイ班、それからムース班とエリア班、後は僕の班とシモン班の順で見張りを行い、残りの者はここで……」
と――その時だった。
「ゼロ! 待て!」
フレンが顔をこわばらせ、ゼロの側に寄る。
「な、なに? どうしたの?」
「何か……妙だ。異様な視線を感じる。空気もさえぎられたような感じだ。まるで、周りがいきなり壁で囲まれたような……」
そう答えたフレンに、ゼロももう一度、周囲を見渡す。
「……確かに。変な雰囲気だ。みんな、周囲に投光!」
命じられ、全員が魔術で周囲を照らす。
次の瞬間――ゼロを含め、討伐隊の全員が戦慄した。
「な、……なんだ、あの数!?」
「周り中……埋まってる」
「何で今更、こんな数が……!?」
「全部倒したはずじゃ……」
これはまだ、ゼロが「三つのプロトコル」をはっきり見定める以前の話である。
バケモノを退治した後に、さらに大挙して押し寄せてくると言うような状況は想定しておらず――と言うよりも、既にこの地に現れた分を、襲撃した勢力のすべてであると誤認していたため、その算定でしか軍事物資を用意しておらず、さらにそれも、この時点でほぼ使い切ってしまっていた。
結果、ゼロたちは満足に魔杖も盾も無い状況で、おびただしい数のバケモノを相手に、夜戦を強いられることとなった。
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双月暦3年9月6日、午前2時頃――クロスセントラル南の村、サウスフィールド郊外にて。
「ゼロだ。全隊、報告を頼む」
まだもうもうと土煙が上がっている中、ゼロが頭巾を巻いて、討伐隊全員に状況を尋ねる。
《アンドレス班、周囲に異常は確認できず! とりあえずバケモノは、全部吹っ飛ばしたぜ!》
《シモン班、こっちも終わった。負傷者無し、待機中》
《ヤク班、軽傷2名。戦線より離脱中》
《ハロン班……》
各班から報告を受け、順次ゼロが応答する。
「ゼロだ。各班状況、把握した。死亡者がいないようでほっとしたよ。じゃ、とりあえず皆、僕のところに集合して」
《了解》
各班班長から口々に応答を受け、ゼロはふう、とため息をついた。
「どうしたんですか、陛下?」
「安心したからね。今回もみんな生きて帰れそうだって。それよりセザ」
ゼロは苦い顔をして、隣りにいた自分の班員、セザに釘を刺す。
「『陛下』は勘弁して欲しいんだってば。そりゃ王様のことはそう呼ぶんだって教えたのは僕なんだけども、自分がそんな風に呼ばれるのは、どうもね」
「そう仰られても」
セザも同じように、苦い顔を返してくる。
「私の陛下への敬愛を示すものですから」
「皆と同じように話しかけて欲しいんだけどなぁ」
他愛もない話をしているうちに、他の班の者たちがぞろぞろと戻って来る。
「おつかれさん、ゼロ」
その先頭に立つゲートが、手を振りつつ近付いて来る。
「おつかれ、ゲート。今回もどうにかなって良かった」
「そうだな。しかしさ」
一転、ゲートは神妙な顔をする。
「もういい加減、お前が現場に来るのはやめにした方がいいんじゃないか? お前に何かあったらどうすんだって、いっつも言ってるよな?」
「その話は何度もしたじゃないか」
ゼロは肩をすくめ、ゲートの提案を断った。
「誰かに危険な仕事を丸投げして、自分は遠い安全なところでふんぞり返ってるなんて、僕の気が気じゃないんだよ。
それにさ、みんなもうノウハウと言うか、ある程度慣れてきた感じもあるから、そうそう危険な目に遭うなんてことも無いだろうし」
「まーたお前は呑気なことを」
ゲートはふう、と不満げな息を吐きつつ、辺りを見回す。
「みんなボチボチ戻ってきてるな。この後は?」
「見張りを付かせて、この辺りで日の出まで休もう」
「おう」
やがて隊の全員が無事な姿で戻り、ゼロが呼びかける。
「みんな、おつかれさま。今晩はとりあえず、ここで休もう。先にアンドレス班とスレイ班、それからムース班とエリア班、後は僕の班とシモン班の順で見張りを行い、残りの者はここで……」
と――その時だった。
「ゼロ! 待て!」
フレンが顔をこわばらせ、ゼロの側に寄る。
「な、なに? どうしたの?」
「何か……妙だ。異様な視線を感じる。空気もさえぎられたような感じだ。まるで、周りがいきなり壁で囲まれたような……」
そう答えたフレンに、ゼロももう一度、周囲を見渡す。
「……確かに。変な雰囲気だ。みんな、周囲に投光!」
命じられ、全員が魔術で周囲を照らす。
次の瞬間――ゼロを含め、討伐隊の全員が戦慄した。
「な、……なんだ、あの数!?」
「周り中……埋まってる」
「何で今更、こんな数が……!?」
「全部倒したはずじゃ……」
これはまだ、ゼロが「三つのプロトコル」をはっきり見定める以前の話である。
バケモノを退治した後に、さらに大挙して押し寄せてくると言うような状況は想定しておらず――と言うよりも、既にこの地に現れた分を、襲撃した勢力のすべてであると誤認していたため、その算定でしか軍事物資を用意しておらず、さらにそれも、この時点でほぼ使い切ってしまっていた。
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