「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第4部
琥珀暁・平岸伝 5
神様たちの話、第210話。
沿岸部平定。
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5.
沿岸部における帝国の勢力が一掃され、この地を分割統治しているクラム王国とノルド王国の両国は、互いの立場と協力関係を改めて確認すべく、協議を行うこととなった。
「(帝国との関係は事実上、解消された。向こうの了承を得ない形でな。故に今後、帝国からの報復が懸念されるが……)」
そう切り出したノルド王に、エリザが応じる。
「(襲って来た際には協力してくれるか、っちゅうコトですな?)」
「(うむ)」
「(勿論、放っておくようなコトはしませんわ。仮にそうしてノルド王国さんらが滅亡したら、その後に重大な悪影響が及ぶやろうコトを想像に難くありませんからな。
とは言えタダで、無条件で、とは言えませんけども)」
「(承知しておる。ある程度は補償・補填できるよう、取り図ろう。とは言え我が国は豊かでは無い故、満額の補償はしかねるが)」
「(帝国さんとの関係解消したっちゅうコトは、そっちへ貢いどったカネも今後、払わんでええっちゅうコトになりますな。となれば減税もでけますやろ)」
「(ふむ、確かに)」
「(税金安うすれば商売も活発になりますし、王様も皆から好かれるでしょうから、ソレなりに豊かになると思いますで。アタシの方でも商売の方、指導したりますさかい)」
「(誠に痛み入る)」
その他、色々と話し合いを重ね、両国の関係が明確化・明文化された。
「(ああ、そうだ。これも伝えておかねばな)」
と、ノルド王が話題を切り替える。
「(ミェーチ軍団の一件であるが、こちらでの処分が決定した)」
「(あら)」
「(慰留はしたのだが、『此度の混乱で殿には尋常ならざる恥と迷惑をお掛けいたした。これ以上吾輩が城に留まっておっては、さらなる大禍を招きかねぬ』と言うて、結局我が元を去った。
うわさに聞くところによれば、彼らはここよりさらに北、西山間部へ向かったそうだ)」
「(山間部……西ですか?)」
尋ねたクーに、ノルド王の側近らが説明してくれた。
「(我が邦が沿岸部と山間部に二分されていることは、殿下はご承知のことと存じますが、山間部はさらに、東西に分かれておるのです)」
「(山間部の中央にゼルカノゼロと言う土地があり、そこから東西に二分されております)」
「(ゼルカノゼロには巨大な塩湖があり、この周辺はイスタス王国の領土です)」
「(そこと我がノルド王国との間にも小国がいくつかあり、恐らくミェーチ元将軍はそのどこかに食客、あるいは新たな将として落ち延びるものではないかと)」
「(さようですか)」
そのミェーチ軍団は、沿岸部の北にある峠を上っていた。
「(詳しく聞いてませんでしたが、これからドコに?)」
尋ねたシェロに、ミェーチ将軍が説明する。
「(うむ……、西山間部のレイス王国に知り合いがおる。まずはそこを訪ね、新たな拠点を築く足がかりにしようと考えておる)」
「(新たな拠点?)」
「(吾輩を慕って集まってくれた者たちを、吾輩の都合で放逐などできるはずも無い。どこかで態勢を整え、確かな戦力として地位を確立すれば、養うこともできよう)」
「(しかし、沿岸部における我々の醜聞は、西山間部にも既に届いているのではないでしょうか? 我々のコトをまともな軍事勢力と考えて接してくれるかどうか……)」
消極的な言葉を漏らすシェロを、ミェーチ将軍が叱咤する。
「(やってみなければ分かるまい? 実情はどうあれ、我々も帝国に反旗を翻し、そして――助力があったとは言え――その軍勢を退けた実績もあるのだ。醜聞より実績を重視する者があれば、きっと我々もまた、返り咲くこともできよう)」
「(そうでしょうか……)」
暗い表情を見せるシェロの肩を、ミェーチ将軍はばしっと叩く。
「(自信を持て、シェロ。お前は一人で沿岸部に旋風を巻き起こした男ではないか。きっと山間部でも、巷間を騒がすような活躍ができよう。吾輩はお前に、並々ならぬ期待を抱いておるのだ。
よろしく頼んだぞ、婿殿)」
「(ええ、……む、婿? って?)」
目を丸くするシェロに、リディアが背後から抱きついて来た。
「(山間部で落ち着いたら、是非わたしと結婚しましょう。それとも、わたしとはお嫌ですか?)」
「(い、嫌じゃないけど、でも、何で俺なんかと?)」
そう尋ねたシェロに、リディアははっきりと、シェロの故郷の言葉で答えた。
「あなただからいいんです」
「……そ、そう、っスか」
こうして半年間に渡る、沿岸部一帯をめぐる一連の戦いは終息した。
戦いの舞台はさらに北、山間部へと移って行く。
琥珀暁・平岸伝 終
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沿岸部平定。
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5.
沿岸部における帝国の勢力が一掃され、この地を分割統治しているクラム王国とノルド王国の両国は、互いの立場と協力関係を改めて確認すべく、協議を行うこととなった。
「(帝国との関係は事実上、解消された。向こうの了承を得ない形でな。故に今後、帝国からの報復が懸念されるが……)」
そう切り出したノルド王に、エリザが応じる。
「(襲って来た際には協力してくれるか、っちゅうコトですな?)」
「(うむ)」
「(勿論、放っておくようなコトはしませんわ。仮にそうしてノルド王国さんらが滅亡したら、その後に重大な悪影響が及ぶやろうコトを想像に難くありませんからな。
とは言えタダで、無条件で、とは言えませんけども)」
「(承知しておる。ある程度は補償・補填できるよう、取り図ろう。とは言え我が国は豊かでは無い故、満額の補償はしかねるが)」
「(帝国さんとの関係解消したっちゅうコトは、そっちへ貢いどったカネも今後、払わんでええっちゅうコトになりますな。となれば減税もでけますやろ)」
「(ふむ、確かに)」
「(税金安うすれば商売も活発になりますし、王様も皆から好かれるでしょうから、ソレなりに豊かになると思いますで。アタシの方でも商売の方、指導したりますさかい)」
「(誠に痛み入る)」
その他、色々と話し合いを重ね、両国の関係が明確化・明文化された。
「(ああ、そうだ。これも伝えておかねばな)」
と、ノルド王が話題を切り替える。
「(ミェーチ軍団の一件であるが、こちらでの処分が決定した)」
「(あら)」
「(慰留はしたのだが、『此度の混乱で殿には尋常ならざる恥と迷惑をお掛けいたした。これ以上吾輩が城に留まっておっては、さらなる大禍を招きかねぬ』と言うて、結局我が元を去った。
うわさに聞くところによれば、彼らはここよりさらに北、西山間部へ向かったそうだ)」
「(山間部……西ですか?)」
尋ねたクーに、ノルド王の側近らが説明してくれた。
「(我が邦が沿岸部と山間部に二分されていることは、殿下はご承知のことと存じますが、山間部はさらに、東西に分かれておるのです)」
「(山間部の中央にゼルカノゼロと言う土地があり、そこから東西に二分されております)」
「(ゼルカノゼロには巨大な塩湖があり、この周辺はイスタス王国の領土です)」
「(そこと我がノルド王国との間にも小国がいくつかあり、恐らくミェーチ元将軍はそのどこかに食客、あるいは新たな将として落ち延びるものではないかと)」
「(さようですか)」
そのミェーチ軍団は、沿岸部の北にある峠を上っていた。
「(詳しく聞いてませんでしたが、これからドコに?)」
尋ねたシェロに、ミェーチ将軍が説明する。
「(うむ……、西山間部のレイス王国に知り合いがおる。まずはそこを訪ね、新たな拠点を築く足がかりにしようと考えておる)」
「(新たな拠点?)」
「(吾輩を慕って集まってくれた者たちを、吾輩の都合で放逐などできるはずも無い。どこかで態勢を整え、確かな戦力として地位を確立すれば、養うこともできよう)」
「(しかし、沿岸部における我々の醜聞は、西山間部にも既に届いているのではないでしょうか? 我々のコトをまともな軍事勢力と考えて接してくれるかどうか……)」
消極的な言葉を漏らすシェロを、ミェーチ将軍が叱咤する。
「(やってみなければ分かるまい? 実情はどうあれ、我々も帝国に反旗を翻し、そして――助力があったとは言え――その軍勢を退けた実績もあるのだ。醜聞より実績を重視する者があれば、きっと我々もまた、返り咲くこともできよう)」
「(そうでしょうか……)」
暗い表情を見せるシェロの肩を、ミェーチ将軍はばしっと叩く。
「(自信を持て、シェロ。お前は一人で沿岸部に旋風を巻き起こした男ではないか。きっと山間部でも、巷間を騒がすような活躍ができよう。吾輩はお前に、並々ならぬ期待を抱いておるのだ。
よろしく頼んだぞ、婿殿)」
「(ええ、……む、婿? って?)」
目を丸くするシェロに、リディアが背後から抱きついて来た。
「(山間部で落ち着いたら、是非わたしと結婚しましょう。それとも、わたしとはお嫌ですか?)」
「(い、嫌じゃないけど、でも、何で俺なんかと?)」
そう尋ねたシェロに、リディアははっきりと、シェロの故郷の言葉で答えた。
「あなただからいいんです」
「……そ、そう、っスか」
こうして半年間に渡る、沿岸部一帯をめぐる一連の戦いは終息した。
戦いの舞台はさらに北、山間部へと移って行く。
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第4部終了です。
これで小説のストックを全部使い果たしました。
続きは今現在、鋭意制作中です。
と言うわけで、しばらくは週1ペースでの更新となります。
あの3人もまた帰って来ます。
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