「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・交差録 4
晴奈の話、第234話。
ベストマッチな武器。
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4.
ロウはトレノ、そしてレヴィの二人を連れ添って、中央区の武具屋を訪ねた。
「いらっしゃ……、何だ、アンタか」
何度も通い、顔見知りになった店主が嫌そうな顔を向けてきた。これまでロウが購入した武器は一つ残らず、闘技場で壊されているからである。
「今度は何の武器を壊すつもりだい? あんまり頻繁に通われると、ウチの信用が無くなるんだがね」
「うっせ。……なあ、三節棍ってあるか?」
その名前を聞いた途端、店主の顔色が変わった。
「央南の武器だな。どこでそれを聞いた?」
「セイナ……、コウ先生ってヤツから勧められたんだ」
「コウ先生? ……ああ。最近闘技場で活躍してる、央南のサムライさんか。
ふーむ……、央南の武器なんて刀と矛くらいしか無いぞ、ウチには」
「そっか。邪魔したな」
店を出ようとするロウに、店主が慌てて声をかける。
「あ、あ、待て待て。ウチにゃ無いが、そうだな、裏通りにあるミツオの店なら扱ってるかも知れん」
「ミツオ?」
「ちょっと変わり者のオヤジだが、昔は央南とかクラフトランドだかで鍛冶屋やってたって奴だ。今でも注文されれば、刀でも槍でも作るはずだぜ」
「そっか。ありがとよ」
ロウは店を出て、裏通りへと入っていった。
「手ぇ放すなよ、二人とも」
「うん」「分かった」
世界最大の都市であるだけに、裏通りの治安も世界最悪である。女子供が不用意に入り込めば、生きて出られないどころではない。
とは言え闘技場で名を馳せたロウが一緒なので、トレノもレヴィもそれほど怖がってはいない。たまに寄ってくる不審者も、ロウの筋骨隆々とした太い腕を見た途端、あっと言う間に逃げ去ってしまう。
「っと、ここか」
入って数分ほどで、ロウたちは目的の店を見つけた。
店の中は薄暗く、気持ちの悪い臭いが立ち込めている。
「うえっ」「なんか、変なにおーい」
(死ぬほど金気臭え。鍛冶屋やってるってのは、確からしいな)
ロウたちの気配を察したのか、店の奥から鉢巻を巻いた、短耳の老人が現れた。
「ウチに何か用かい、『狼』の御仁」
「ああ。アンタがミツオさん?」
「そうだ。買い物かい?」
ロウはトレノたちを店の中に入れ、用件を伝える。
「三節棍が欲しいんだけど、あるか?」
「……妙なものを欲しがりますな、親父さん」
「お、オヤジ?」
父と呼ばれロウは一瞬うろたえたが、すぐにそう呼ばれた理由がトレノたちだと気付く。
「あ、いや。こいつらはみなしごだよ。オレが居候してる教会で養ってもらってるヤツら」
「そうかい、失礼した。そんで、三節棍だったな。今は無いよ」
ここでも目的の物が無いと聞き、ロウは憮然とする。
「……そっか」
「頼まれりゃ作る」
が、ミツオの言葉に一転、ロウは顔をほころばせる。
「本当か?」
「武器なら何でも、喜んで作らあ」
「ありがてえ! そんで、日数はどれくらいかかる? いくらだ?」
「そうだな、半月見てくれ。代金は、……そうだな、材料費が25000、それに手間賃やらを加えて36000クラムってところだ」
「分かった。じゃ、先払いしとくぜ」
「ありがとよ親父さん、……じゃねえや、旦那」
帰りの道中、トレノたちは妙に嬉しそうにしていた。
「うふふ……」「えへへ……」
「どした、二人とも?」
「おやじさん、だってー」「ロウさん、おとうさんー」
また父と呼ばれ、ロウは照れくさくなる。
「やめれって、へへ……」
「ねえ、ロウさん。ほんとにさ、おとうさんにならないの?」
「おっと、ぉ?」
レヴィの質問に、ロウはまたうろたえる。
「オレが?」
「なってほしーな」「うんうん」
「う、うーん……」
ロウが答えあぐねていると、レヴィが続けて提案してくる。
「それでさ、シスターにおかあさんになってもらうの」
「ぅえ!?」
三度うろたえ、ロウの顔は真っ赤になる。
「ロウさん、おもしろーい」
「かっ、からかうんじゃねーよっ」
ロウは片手で顔を覆い、恥ずかしさを紛らわせた。
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ベストマッチな武器。
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ロウはトレノ、そしてレヴィの二人を連れ添って、中央区の武具屋を訪ねた。
「いらっしゃ……、何だ、アンタか」
何度も通い、顔見知りになった店主が嫌そうな顔を向けてきた。これまでロウが購入した武器は一つ残らず、闘技場で壊されているからである。
「今度は何の武器を壊すつもりだい? あんまり頻繁に通われると、ウチの信用が無くなるんだがね」
「うっせ。……なあ、三節棍ってあるか?」
その名前を聞いた途端、店主の顔色が変わった。
「央南の武器だな。どこでそれを聞いた?」
「セイナ……、コウ先生ってヤツから勧められたんだ」
「コウ先生? ……ああ。最近闘技場で活躍してる、央南のサムライさんか。
ふーむ……、央南の武器なんて刀と矛くらいしか無いぞ、ウチには」
「そっか。邪魔したな」
店を出ようとするロウに、店主が慌てて声をかける。
「あ、あ、待て待て。ウチにゃ無いが、そうだな、裏通りにあるミツオの店なら扱ってるかも知れん」
「ミツオ?」
「ちょっと変わり者のオヤジだが、昔は央南とかクラフトランドだかで鍛冶屋やってたって奴だ。今でも注文されれば、刀でも槍でも作るはずだぜ」
「そっか。ありがとよ」
ロウは店を出て、裏通りへと入っていった。
「手ぇ放すなよ、二人とも」
「うん」「分かった」
世界最大の都市であるだけに、裏通りの治安も世界最悪である。女子供が不用意に入り込めば、生きて出られないどころではない。
とは言え闘技場で名を馳せたロウが一緒なので、トレノもレヴィもそれほど怖がってはいない。たまに寄ってくる不審者も、ロウの筋骨隆々とした太い腕を見た途端、あっと言う間に逃げ去ってしまう。
「っと、ここか」
入って数分ほどで、ロウたちは目的の店を見つけた。
店の中は薄暗く、気持ちの悪い臭いが立ち込めている。
「うえっ」「なんか、変なにおーい」
(死ぬほど金気臭え。鍛冶屋やってるってのは、確からしいな)
ロウたちの気配を察したのか、店の奥から鉢巻を巻いた、短耳の老人が現れた。
「ウチに何か用かい、『狼』の御仁」
「ああ。アンタがミツオさん?」
「そうだ。買い物かい?」
ロウはトレノたちを店の中に入れ、用件を伝える。
「三節棍が欲しいんだけど、あるか?」
「……妙なものを欲しがりますな、親父さん」
「お、オヤジ?」
父と呼ばれロウは一瞬うろたえたが、すぐにそう呼ばれた理由がトレノたちだと気付く。
「あ、いや。こいつらはみなしごだよ。オレが居候してる教会で養ってもらってるヤツら」
「そうかい、失礼した。そんで、三節棍だったな。今は無いよ」
ここでも目的の物が無いと聞き、ロウは憮然とする。
「……そっか」
「頼まれりゃ作る」
が、ミツオの言葉に一転、ロウは顔をほころばせる。
「本当か?」
「武器なら何でも、喜んで作らあ」
「ありがてえ! そんで、日数はどれくらいかかる? いくらだ?」
「そうだな、半月見てくれ。代金は、……そうだな、材料費が25000、それに手間賃やらを加えて36000クラムってところだ」
「分かった。じゃ、先払いしとくぜ」
「ありがとよ親父さん、……じゃねえや、旦那」
帰りの道中、トレノたちは妙に嬉しそうにしていた。
「うふふ……」「えへへ……」
「どした、二人とも?」
「おやじさん、だってー」「ロウさん、おとうさんー」
また父と呼ばれ、ロウは照れくさくなる。
「やめれって、へへ……」
「ねえ、ロウさん。ほんとにさ、おとうさんにならないの?」
「おっと、ぉ?」
レヴィの質問に、ロウはまたうろたえる。
「オレが?」
「なってほしーな」「うんうん」
「う、うーん……」
ロウが答えあぐねていると、レヴィが続けて提案してくる。
「それでさ、シスターにおかあさんになってもらうの」
「ぅえ!?」
三度うろたえ、ロウの顔は真っ赤になる。
「ロウさん、おもしろーい」
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ロウは片手で顔を覆い、恥ずかしさを紛らわせた。



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