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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・交差録 5

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    晴奈の話、第235話。
    人生の先輩からの助言。

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    5.
     発注から半月後、ロウはふたたび、ミツオの店に足を運んだ。
    「よう、ミツオさん。三節棍、できたか?」
    「いらっしゃい、旦那。ついさっき完成したところだよ」
     ミツオは前回と同じ鉢巻姿で、嬉しそうに長細い袋を抱えてロウの側に寄った。
    「三節棍を作ったのは20年ぶりくらいだ。だが、なかなかの出来だよ」
    「へぇ……」
     ロウは袋を受け取り、すぐに開く。中から朱塗りの、鎖でつながった棍が3つ、連なって出てくる。
     それを手に取った瞬間、ロウの脳内にまた電流が走った。
    「お、顔つきが変わったね、旦那。三節棍『雅龍(がりゅう)』。相当、ぞくりと来ただろう?」
    「ああ、震えるぜ。こりゃ、逸品だ」

     店を出たロウは教会へ戻る前に何も無い空き地を見つけ、そこで素振りをしてみることにした。
     三節棍を袋から取り出し、まずはじっくりと眺める。
    (『雅龍』、か。……とりあえず、ホイっと)
     棍を構え、軽く振ってみる。
     素人ならこの瞬間、その奇妙な動きに翻弄されてしまう。通常の棍は一本の直線であり、それがうねるなどとは思わないからだ。
     だが三節棍は、その名の通り三つに分かれている。一本をつかんで振ってみると、残り二本が思いもよらぬ動き方をするのだ。そのため、振り方によってはまっすぐに流れず、自分の方に返ってきて自爆することもある。
     が、ロウはそんな醜態を見せることなく、それどころかその一振りで、この武器に用いるべき技術のすべてを思い出した。
    (……!)
     自分の記憶から抜け落ちていたその武器の使い方が、そのたった一振りでよみがえる。
     続いてもう一回、今度は手首を利かせて振る。
    「そらッ!」
     続いて×状に振り抜き、うならせる。
    「せやッ!」
     今度は三段打ち。先程の動きにもう一段、敵の頭を粉砕するイメージで打ち下ろす。
    「うりゃあッ!」
     一振りする度に、三節棍は生き物のようにアクロバティックな動きを見せる。
     そうして30分ほど素振りを続け、ようやく満足して棍をたたむと――。
    「すげえ!」
    「何だ、今の!?」
    「剣舞みたい……」
    「綺麗、いえ、勇ましい、と言えばいいのかしら」
     いつの間にか集まってきた野次馬から、パチパチと拍手が送られた。
    「……へへ、……やり過ぎたぜ」
     見られていたことにようやく気付き、ロウは頭をポリポリとかいて恥ずかしがった。
     と、野次馬の中から一人、中年の男が歩み寄ってきた。
    「素晴らしい! まるで黒炎教団の僧兵のようだ!」
    「こく、えん?」
     ロウが尋ねると、男はゆっくりとした口調で説明してくれた。
    「屏風山脈――ああ、いや、こちらではカーテンロックと言うんだっけか――に本拠地を構える、密教集団のことだよ。彼らの中には僧兵と言って、武術の鍛錬を修行として行っている者たちがいるんだ。
     何でも『武芸十般』と称し、刀剣や槍など様々な武器を見事に使いこなすと言う。君はまさに、その僧兵を髣髴(ほうふつ)とさせる。本当に、色々な武器が使えるんだなぁ」
    「おっさん、オレのコト知ってんの?」
     その痩せた男は、嬉しそうな顔をして短くうなずいた。
    「ああ、闘技場で何度か拝見させてもらっているよ。いや、実に素晴らしい動きだ」
    「あー、思い出した。確かアンタ、ナラサキとか言うサムライだよな? オレも何度か、アンタを見たコトあった。闘技場で」
    「おお、僕のことをご存知とは。光栄だよ、ウィアードくん」
     楢崎はずっとニコニコしている。闘技場で見せる、哀愁を帯びた顔とは大違いであり、ロウは少し面食らった。
    「アンタもう少し暗いヤツだと思ってたけど、案外そうでもなかったんだな」
    「はは……。最近は少し、いいことがあってね。今日のこれも、その一つだな。
     どうだい、ウィアードくん。少し、話でもしないか?」
     そう言って楢崎は右手を差し出してきた。
    「ああ、いいぜ」
     ロウは棍を袋に入れ、楢崎と握手を交わした。

     二人は近所の喫茶店に入り、改めて挨拶を交わした。
    「僕の名はシュンジ・ナラサキ。旅の剣士だ。ちょっと事情があって、今は闘技場に通っている。今はニコルリーグで頑張っているところだ」
    「オレはロウ・ウィアード。……そう言や、アンタとは話どころか、戦ったコトも無いよな。でも、相当強いってのは観戦してて分かる」
    「いやいや、そんなことは無いさ。ただ36年間、修行しかしてないだけだよ」
     それを聞き、ロウは目を丸くする。多少くたびれた印象は受けるが、楢崎はまだ30代後半に見えるからだ。
    「36年? ……アンタ、今いくつなんだ?」
    「今年で46になる。剣の道には10歳の頃、入った」
    「へぇ……。見えねーなぁ」
    「はは、よく言われる。小さい頃は逆に、老け顔だって言われたけどね」
     ロウは改めて、楢崎の姿を確認した。
     以前見た時は非常に疲れきった、どこか絶望感に囚われたような、寂しげな顔をしていた。だが今は、非常に精力的で活気にあふれた雰囲気をかもし出している。
     と、彼の左手薬指に指輪がはまっていることに気付き、ロウは何気なく尋ねた。
    「アンタ、結婚してんのか?」
    「あ、うん。……まあ、でも、10年前に別れたようなもんだね。この10年ずっと、旅をしているから」
    「何でそんな……? 奥さん、嫌いなのか?」
    「そんなことは無いよ。今でも大事に思ってる。でも、少し事情があるんだ」
     そこでロウは、楢崎から旅の目的――10年前に息子と生き別れになり、探し回っていることを伝えた。
    「そっか……。そりゃ、ひでえ話だな」
    「でも、最近は少し希望も出てきたんだ。いや、まだ見つかったわけじゃないんだけど、協力してくれるって人に会ってね」
    「奇特なヤツもいたもんだな、……っと、悪い悪い。
     でも、そっか。10年諦めないって、アンタ本当に息子さんのこと、大事に思ってるんだな」
    「そりゃそうさ。たった4年しか一緒にいられなかったけど、それでも自分の子供だから。何としてでも、見つけなくっちゃ」
    「そう、だよな……」
     ロウの脳裏に、教会の子供たちの顔が思い浮かぶ。そして、レヴィの言葉を思い出す。
    ――ねえ、ロウさん。ほんとにさ、おとうさんにならないの?――

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    2016.06.03 修正
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