DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 1
約9ヶ月ぶりのウエスタン小説、第12弾。
笑うならず者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「……ってわけさ」
「へぇ」
二人の男が、高い塀の上で煙草の煙をくゆらせながら談笑していた。
「じゃああんた、4回も結婚したってことか?」
「そうなる。全部、ケンカ別れしたけどな。いや、どれもこれもひでえ話だぜ? ロマンもクソもありゃしねえ。
最初の女はコブ付きだったんだけどもさ、それでもいいっつって一緒になったらよ、これがまあ、朝から晩までぎゃーぎゃーわめき倒しなわけさ。口を開けばすぐ、『ちょっとはケビンのことも見てあげてちょうだい』だぜ? あ、ケビンってのはそのコブの名前な」
「ああ」
「朝飯食ってたらケビン、銃の手入れしてたらケビン、酒瓶手にしたらケビン、何でもケビン、ケビン、ケビン! ケビンのこと構って! 自分のことばかり考えないでよ! ってうるっせえの何の!
だもんで最後は俺がブチギレて、女の顔張って出てったってわけさ。いや、もうそん時に『二度とコブ付きの女とは付き合わねえ』って胸に誓ったよ、マジでさ」
「たまんねえやな、そんなもん。俺だって御免こうむるね」
そこで二人はゲラゲラ笑い、煙草を捨てる。
「それが、……えーと、66年? だっけか」
「ああ。んで半年くらい放浪して、どこだかの街で見付けた商売女といい感じになってよ」
「そいつと2度目の結婚?」
「そうだ。だけどもよ、こいつもひでえヤツでな。
よし、こいつのために一丁、真面目になろうって決心して仕事に励んでたってのに、ある日ケガしちまって早引けして家に帰ったらよ、ベッドにかかってた毛布がもこもこ揺れてんだよ。まさかと思って毛布ひっぺがしたら、そいつと間男が、びっくりした目で俺を見上げてるんだよ」
「クソみてえだな」
「ああ、クソだ。たまらず俺は、その場で蜂の巣にしたよ。二人をな」
「それでパクられたのか?」
「いや、そん時はすぐ逃げたからな。ま、それでまた放浪して、女と仲良くなって、結婚して、浮気されてキレて、をその後、2回も繰り返してよ、……ああ、俺って男はつくづく、マトモな生き方ができやしないんだなって痛感したってわけさ」
「たまらんね。俺だったら神を呪うところだ」
「俺もさ。だから呪ってやったよ。たっぷりな」
「それが『ライダーズ』の話か?」
「ああ。色々派閥はあるけども、この国のヤツらは大抵、そいつのしもべだからな。そいつの御元にたっぷり送りつけてやったよ。100人か、200人か、もっとだったかな――とにかく、たっぷりだ。
そんなこんなでとうとう、俺には『血塗れの狼(スカーレット・ウルフ)』なんて言う、ご大層なあだ名が付いたってわけさ。地獄に行った時にはさぞや、並み居る悪魔たちが俺を褒め称えるだろうぜ」
そこで彼――ウィリス・ウォルトンは立ち上がり、塀の下を見下ろす。
「で、ダリウス。もうそろそろか?」
「もうじきってとこだな」
隣りにいたDJも同じように立ち上がり、地平線の向こうを指差す。
「ああ、あれだな。もっかい確認しとくぜ」
「ああ」
「向こうが合図したら、俺たちは飛び降りる」
「オーケー。ジャンプだけってんなら、馬の上で投げ輪回すよりよっぽど楽さ」
「いざって時にブルったりすんなよ? 時間はあんまり無えんだからよ」
「言ったろ? 俺はマトモじゃねえんだよ。飛べってんなら向こうが断崖絶壁だろうが滝壺だろうが、業火渦巻く地獄の底だろうが、すぱっと飛んでやるよ」
「ひゃあ、頼もしいね」
と、二人の背中に怒り狂った声がぶつけられる。
「囚人59号! 146号! ただちにそこから降りてこい! 既に発砲許可は降りている! 降りて来なければ射殺するぞ!」
「言ってろ。撃つ度胸なんか無えクセに」
DJは嘲った笑いを浮かべつつ、ウィリスに目配せする。
「じゃ、そろそろ行くか」
「ああ」
二人はニヤリと笑い――塀から飛び降りた。
@au_ringさんをフォロー
笑うならず者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「……ってわけさ」
「へぇ」
二人の男が、高い塀の上で煙草の煙をくゆらせながら談笑していた。
「じゃああんた、4回も結婚したってことか?」
「そうなる。全部、ケンカ別れしたけどな。いや、どれもこれもひでえ話だぜ? ロマンもクソもありゃしねえ。
最初の女はコブ付きだったんだけどもさ、それでもいいっつって一緒になったらよ、これがまあ、朝から晩までぎゃーぎゃーわめき倒しなわけさ。口を開けばすぐ、『ちょっとはケビンのことも見てあげてちょうだい』だぜ? あ、ケビンってのはそのコブの名前な」
「ああ」
「朝飯食ってたらケビン、銃の手入れしてたらケビン、酒瓶手にしたらケビン、何でもケビン、ケビン、ケビン! ケビンのこと構って! 自分のことばかり考えないでよ! ってうるっせえの何の!
だもんで最後は俺がブチギレて、女の顔張って出てったってわけさ。いや、もうそん時に『二度とコブ付きの女とは付き合わねえ』って胸に誓ったよ、マジでさ」
「たまんねえやな、そんなもん。俺だって御免こうむるね」
そこで二人はゲラゲラ笑い、煙草を捨てる。
「それが、……えーと、66年? だっけか」
「ああ。んで半年くらい放浪して、どこだかの街で見付けた商売女といい感じになってよ」
「そいつと2度目の結婚?」
「そうだ。だけどもよ、こいつもひでえヤツでな。
よし、こいつのために一丁、真面目になろうって決心して仕事に励んでたってのに、ある日ケガしちまって早引けして家に帰ったらよ、ベッドにかかってた毛布がもこもこ揺れてんだよ。まさかと思って毛布ひっぺがしたら、そいつと間男が、びっくりした目で俺を見上げてるんだよ」
「クソみてえだな」
「ああ、クソだ。たまらず俺は、その場で蜂の巣にしたよ。二人をな」
「それでパクられたのか?」
「いや、そん時はすぐ逃げたからな。ま、それでまた放浪して、女と仲良くなって、結婚して、浮気されてキレて、をその後、2回も繰り返してよ、……ああ、俺って男はつくづく、マトモな生き方ができやしないんだなって痛感したってわけさ」
「たまらんね。俺だったら神を呪うところだ」
「俺もさ。だから呪ってやったよ。たっぷりな」
「それが『ライダーズ』の話か?」
「ああ。色々派閥はあるけども、この国のヤツらは大抵、そいつのしもべだからな。そいつの御元にたっぷり送りつけてやったよ。100人か、200人か、もっとだったかな――とにかく、たっぷりだ。
そんなこんなでとうとう、俺には『血塗れの狼(スカーレット・ウルフ)』なんて言う、ご大層なあだ名が付いたってわけさ。地獄に行った時にはさぞや、並み居る悪魔たちが俺を褒め称えるだろうぜ」
そこで彼――ウィリス・ウォルトンは立ち上がり、塀の下を見下ろす。
「で、ダリウス。もうそろそろか?」
「もうじきってとこだな」
隣りにいたDJも同じように立ち上がり、地平線の向こうを指差す。
「ああ、あれだな。もっかい確認しとくぜ」
「ああ」
「向こうが合図したら、俺たちは飛び降りる」
「オーケー。ジャンプだけってんなら、馬の上で投げ輪回すよりよっぽど楽さ」
「いざって時にブルったりすんなよ? 時間はあんまり無えんだからよ」
「言ったろ? 俺はマトモじゃねえんだよ。飛べってんなら向こうが断崖絶壁だろうが滝壺だろうが、業火渦巻く地獄の底だろうが、すぱっと飛んでやるよ」
「ひゃあ、頼もしいね」
と、二人の背中に怒り狂った声がぶつけられる。
「囚人59号! 146号! ただちにそこから降りてこい! 既に発砲許可は降りている! 降りて来なければ射殺するぞ!」
「言ってろ。撃つ度胸なんか無えクセに」
DJは嘲った笑いを浮かべつつ、ウィリスに目配せする。
「じゃ、そろそろ行くか」
「ああ」
二人はニヤリと笑い――塀から飛び降りた。
- 関連記事
-
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 3 2019/07/27
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 2 2019/07/26
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 1 2019/07/25
-
DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 15 2018/10/09
-
DETECTIVE WESTERN 11 ~ 大閣下の逆襲 ~ 14 2018/10/08
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~