DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 8
ウエスタン小説、第8話。
闇夜の銃撃。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
快晴ながら、この晩は新月であり、町の中は闇夜に包まれていた。
「人間、闇の中じゃあ満足な仕事はできない。灯りを必要とする」
説明しかけたジェフを、ハワードがさえぎる。
「分かってる。その灯りを頼りに南軍を探せと言いたいんだろ?」
「うむ、その通りだ」
「いつも思うが、君はやたら冗長的に、かつ、勿体ぶって説明するきらいがある。流石は元イギリス人だ」
皮肉を挟むジョナサンに、リロイが突っ込む。
「君だってそうだろ? 似た者同士だよ」
「そうは思わんね」
じゃれあっていたところで、アーサーがそれを止めに入る。
「作戦行動中だ。無駄なおしゃべりはそこまでにしたまえ」
「はいはーい」
と、程無く川岸に、人だかりができているのを発見する。
「……方向……右へ……」
「……調整……急げ……」
わずかに聞こえてくる話し声から、一行は南軍であることを確信する。
(頼んだ)
ジェフがトン、トンとアーサーの肩を叩き、狙撃を促す。アーサーは返事をする代わりに、肩に提げていたシャープス銃を手に取る。
一瞬の間を置き、アーサーは引き金を絞った。
銃声を聞きつけ、北軍基地は大騒ぎになっていた。
「確認したところ、基地内で発砲した者はおりませんでした!」
「では間違い無く、外からの銃撃と言うことだな!?」
「はい」
下士官からの報告を受け、基地司令はガタン、と椅子を蹴飛ばして立ち上がる。
「今すぐ周辺警戒に当たれ! 敵が攻めて……」
と、その瞬間――どごん、と大きな炸裂音が、司令室に届いた。
「……っ、な、ん?」
怒鳴りかけていた司令も、かしこまっていた下士官も、揃って窓の外を確認する。
「対岸に……」
「……火柱?」
何が起こっているのか分からず、司令も下士官も、顔を見合わせるばかりだった。
アーサーが放った弾は寸分違わず、M1857の側に置いてあった火薬樽を撃ち抜いていた。
そしてキャリバー弾が樽の中で起こした摩擦は、黒色火薬を発火・爆発させるに十分な熱量を発生させ――当然の結果として、樽を中心として大きな火柱が上がり、そこに固まっていた南軍兵士たちは瞬時に、木っ端微塵に吹き飛ばされた。
「やった!」
まだ川岸に残る炎が、ハワードの上気した顔を赤く照らす。
「油断するな」
アーサーがシャープス銃を肩に掛けつつ、ハワードの肩を叩く。
「まだ敵が残っているかも知れん。うかつに動くな」
「うむ、Aの言う通りだ。それに、補給線の回復は南軍にとって死活問題だ。これで諦めるとは考えにくい。
次の行動に備え、我々も一度態勢を整え直そう」
「了解」
まだ燃えている川岸を背に、5人はその場から立ち去ろうとした。
その時だった。
わずかな破裂音が彼らの背後で鳴り、そして彼らの真ん中から、どさっと重たげな音が響いた。
「なんだ?」
ジェフは辺りを見回すが、闇夜の中のため、状況がつかめない。一行の無事を確かめるため、彼は小声で呼びかけた。
「L?」「い、いるよ」
「A、無事か?」「問題無い」
「Sは?」「ここだ」
「H? 大丈夫か?」
リロイ、アーサー、ジョナサンからはすぐに返事が返って来たが、ハワードの声が聞こえて来ない。
「H? ハワード? どこだ?」
何度も声を掛けるが、ハワードは答えない。流石のジェフもうろたえ、一歩、二歩と脚が勝手に動く。
そして――ジェフの爪先に、何か柔らかく、そして重たいものが当たった。
@au_ringさんをフォロー
闇夜の銃撃。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
快晴ながら、この晩は新月であり、町の中は闇夜に包まれていた。
「人間、闇の中じゃあ満足な仕事はできない。灯りを必要とする」
説明しかけたジェフを、ハワードがさえぎる。
「分かってる。その灯りを頼りに南軍を探せと言いたいんだろ?」
「うむ、その通りだ」
「いつも思うが、君はやたら冗長的に、かつ、勿体ぶって説明するきらいがある。流石は元イギリス人だ」
皮肉を挟むジョナサンに、リロイが突っ込む。
「君だってそうだろ? 似た者同士だよ」
「そうは思わんね」
じゃれあっていたところで、アーサーがそれを止めに入る。
「作戦行動中だ。無駄なおしゃべりはそこまでにしたまえ」
「はいはーい」
と、程無く川岸に、人だかりができているのを発見する。
「……方向……右へ……」
「……調整……急げ……」
わずかに聞こえてくる話し声から、一行は南軍であることを確信する。
(頼んだ)
ジェフがトン、トンとアーサーの肩を叩き、狙撃を促す。アーサーは返事をする代わりに、肩に提げていたシャープス銃を手に取る。
一瞬の間を置き、アーサーは引き金を絞った。
銃声を聞きつけ、北軍基地は大騒ぎになっていた。
「確認したところ、基地内で発砲した者はおりませんでした!」
「では間違い無く、外からの銃撃と言うことだな!?」
「はい」
下士官からの報告を受け、基地司令はガタン、と椅子を蹴飛ばして立ち上がる。
「今すぐ周辺警戒に当たれ! 敵が攻めて……」
と、その瞬間――どごん、と大きな炸裂音が、司令室に届いた。
「……っ、な、ん?」
怒鳴りかけていた司令も、かしこまっていた下士官も、揃って窓の外を確認する。
「対岸に……」
「……火柱?」
何が起こっているのか分からず、司令も下士官も、顔を見合わせるばかりだった。
アーサーが放った弾は寸分違わず、M1857の側に置いてあった火薬樽を撃ち抜いていた。
そしてキャリバー弾が樽の中で起こした摩擦は、黒色火薬を発火・爆発させるに十分な熱量を発生させ――当然の結果として、樽を中心として大きな火柱が上がり、そこに固まっていた南軍兵士たちは瞬時に、木っ端微塵に吹き飛ばされた。
「やった!」
まだ川岸に残る炎が、ハワードの上気した顔を赤く照らす。
「油断するな」
アーサーがシャープス銃を肩に掛けつつ、ハワードの肩を叩く。
「まだ敵が残っているかも知れん。うかつに動くな」
「うむ、Aの言う通りだ。それに、補給線の回復は南軍にとって死活問題だ。これで諦めるとは考えにくい。
次の行動に備え、我々も一度態勢を整え直そう」
「了解」
まだ燃えている川岸を背に、5人はその場から立ち去ろうとした。
その時だった。
わずかな破裂音が彼らの背後で鳴り、そして彼らの真ん中から、どさっと重たげな音が響いた。
「なんだ?」
ジェフは辺りを見回すが、闇夜の中のため、状況がつかめない。一行の無事を確かめるため、彼は小声で呼びかけた。
「L?」「い、いるよ」
「A、無事か?」「問題無い」
「Sは?」「ここだ」
「H? 大丈夫か?」
リロイ、アーサー、ジョナサンからはすぐに返事が返って来たが、ハワードの声が聞こえて来ない。
「H? ハワード? どこだ?」
何度も声を掛けるが、ハワードは答えない。流石のジェフもうろたえ、一歩、二歩と脚が勝手に動く。
そして――ジェフの爪先に、何か柔らかく、そして重たいものが当たった。
- 関連記事
-
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 10 2019/08/03
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 9 2019/08/02
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 8 2019/08/01
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 7 2019/07/31
-
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 6 2019/07/30
-



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~