DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 12 ~ ウルフ・クライ・アゲイン ~ 10
ウエスタン小説、第10話。
戦場推理。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
10.
爆発を聞きつけたためか、町のあちこちに人が立ち、ざわざわと騒ぎつつ、灯りを点していた。
「なんなんだ、今夜は……」
「うるっせえし、何か焦げくせえし」
「おい、河原で人が死んでんぞ!」
「マジかよ!?」
人混みをかき分けながら、ジェフは若者の姿を探す。
(どこだ……! あいつはどこに行った!?)
怒りで煮えたぎる頭を賢明に動かし、ジェフはどうにか推理を始める。
(あいつは――言葉は嘘臭かったが――南軍の兵士、いや、下士官であることは恐らく、間違い無いだろう。
兵士であったならば、M1857の発射準備に取り掛かっていたはずだ。であれば爆発に巻き込まれ、決して無事ではいられない。だがSとHをあの闇の中で狙撃できたことから考えて、五体無事な状態であることは疑う余地が無い。であれば準備に直接携わる者ではなく、準備を取り仕切り、指示するリーダーの立場にあったこと、即ち下士官クラスの人間であることになる。
そう言えばうわさを聞いたことがあるな。非常に優秀で、まだ20歳にもならないが、既に軍曹の地位を与えられたと言う若者が南軍にいると。名前は確か、ウォルトン。あいつがそうなのか?)
敵の正体を察し、ジェフは握りしめていた拳銃を確認する。
(そしてこうも聞いた。ウォルトン軍曹は残忍極まりない上にすこぶる感情的で、一度頭に血が上れば、敵味方の見境無く周りの人間を皆殺しにするような、悪魔のような人間である、とも。
奴がそのウォルトン軍曹であるなら、決して油断はできない。こうして無関係な人間が大勢いる中、平然と発砲してくるような卑劣漢だろう。となれば、ここにいるのは危険だ。私だけじゃあなく、町の人間も巻き添えになりかねん)
1発撃っていた弾を込め直し、撃鉄を起こす。
(奴がこのまま逃げることは考えられない。軍服を着て部下を引き連れ、さらには銃や大砲を装備していることから、奴も軍から命令を受け、この町に来ていることは明白だ。いくら悪逆非道の輩とは言え、軍に属している以上は命令を聞かねばならん立場にある。であれば何としてでも任務を遂行・達成しようとするはずだ。
そして達成しようとするならば、部下が全滅したとは言え、一人ででもM1857を撃たねばならん。それなのに我々を野放しにしていたのでは、撃ち殺されるのを待っているようなものだ。となれば先に危険を排除する――即ち、我々5人を皆殺しにせねばならない、と言うわけだ)
頭の中で論理を組み立てていくうち、怒りに燃えていた心は次第に静まっていく。その冷静さがさらに、ジェフを高次の思考に移らせた。
(だがLを狙うようなことはするまい。確かにまだ死んではいない、……はずだが、それでも深手を負わせたことは、奴も把握しているだろう。行動不能にはなっているし、本当に奴が優秀だと言うのなら、現状で最も危険性の高い相手――即ち攻撃能力を有する私とAの排除を優先するだろう。Lのとどめを刺しに行って背中を撃たれるような隙は、到底見せるまい。
以上の要素から、奴も私かAのどちらかを狙ってくる可能性は非常に高い。そして――奴が仮に天才的暗殺者、あるいは稀代(きたい)の名狙撃手であったとしても――こんな闇夜の中、カービン銃で狙撃などできん。撃つには目視可能な位置に動かねばならない。奴が我々を視認できると言うなら、我々もまた、奴を視認できると言うことだ。
それが攻撃のチャンスだ。……以上のことを踏まえれば、私が選ぶべき思考、取るべき行動はこれしか無い)
ジェフは大通りを離れ、町の裏手へと回った。
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爆発を聞きつけたためか、町のあちこちに人が立ち、ざわざわと騒ぎつつ、灯りを点していた。
「なんなんだ、今夜は……」
「うるっせえし、何か焦げくせえし」
「おい、河原で人が死んでんぞ!」
「マジかよ!?」
人混みをかき分けながら、ジェフは若者の姿を探す。
(どこだ……! あいつはどこに行った!?)
怒りで煮えたぎる頭を賢明に動かし、ジェフはどうにか推理を始める。
(あいつは――言葉は嘘臭かったが――南軍の兵士、いや、下士官であることは恐らく、間違い無いだろう。
兵士であったならば、M1857の発射準備に取り掛かっていたはずだ。であれば爆発に巻き込まれ、決して無事ではいられない。だがSとHをあの闇の中で狙撃できたことから考えて、五体無事な状態であることは疑う余地が無い。であれば準備に直接携わる者ではなく、準備を取り仕切り、指示するリーダーの立場にあったこと、即ち下士官クラスの人間であることになる。
そう言えばうわさを聞いたことがあるな。非常に優秀で、まだ20歳にもならないが、既に軍曹の地位を与えられたと言う若者が南軍にいると。名前は確か、ウォルトン。あいつがそうなのか?)
敵の正体を察し、ジェフは握りしめていた拳銃を確認する。
(そしてこうも聞いた。ウォルトン軍曹は残忍極まりない上にすこぶる感情的で、一度頭に血が上れば、敵味方の見境無く周りの人間を皆殺しにするような、悪魔のような人間である、とも。
奴がそのウォルトン軍曹であるなら、決して油断はできない。こうして無関係な人間が大勢いる中、平然と発砲してくるような卑劣漢だろう。となれば、ここにいるのは危険だ。私だけじゃあなく、町の人間も巻き添えになりかねん)
1発撃っていた弾を込め直し、撃鉄を起こす。
(奴がこのまま逃げることは考えられない。軍服を着て部下を引き連れ、さらには銃や大砲を装備していることから、奴も軍から命令を受け、この町に来ていることは明白だ。いくら悪逆非道の輩とは言え、軍に属している以上は命令を聞かねばならん立場にある。であれば何としてでも任務を遂行・達成しようとするはずだ。
そして達成しようとするならば、部下が全滅したとは言え、一人ででもM1857を撃たねばならん。それなのに我々を野放しにしていたのでは、撃ち殺されるのを待っているようなものだ。となれば先に危険を排除する――即ち、我々5人を皆殺しにせねばならない、と言うわけだ)
頭の中で論理を組み立てていくうち、怒りに燃えていた心は次第に静まっていく。その冷静さがさらに、ジェフを高次の思考に移らせた。
(だがLを狙うようなことはするまい。確かにまだ死んではいない、……はずだが、それでも深手を負わせたことは、奴も把握しているだろう。行動不能にはなっているし、本当に奴が優秀だと言うのなら、現状で最も危険性の高い相手――即ち攻撃能力を有する私とAの排除を優先するだろう。Lのとどめを刺しに行って背中を撃たれるような隙は、到底見せるまい。
以上の要素から、奴も私かAのどちらかを狙ってくる可能性は非常に高い。そして――奴が仮に天才的暗殺者、あるいは稀代(きたい)の名狙撃手であったとしても――こんな闇夜の中、カービン銃で狙撃などできん。撃つには目視可能な位置に動かねばならない。奴が我々を視認できると言うなら、我々もまた、奴を視認できると言うことだ。
それが攻撃のチャンスだ。……以上のことを踏まえれば、私が選ぶべき思考、取るべき行動はこれしか無い)
ジェフは大通りを離れ、町の裏手へと回った。
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