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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第5部

    蒼天剣・錯綜録 3

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    晴奈の話、第240話。
    ダメな話の仕方。

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    3.
     二人は近くの喫茶店に入り、フォルナはエランを落ち着かせた。
    「まったく……。こんな細々したことで一々落ち込まれては、お仕事にも差し支えるでしょうに。もう少し、堂々とされた方がよろしいですわよ」
    「で、でも……」
    「自信を持ちなさい、エラン。あなたは19の若さで金火公安に入局された、優秀な方でしょう?」
     励ますつもりで言ったこの言葉に、エランは目を丸くした。
    「え……。な、何でそれを?」
    「あっ」
     極秘情報だったことを思い出し、フォルナはしまったと頭を抱えた。朱海の信用に関わるので、「情報屋の朱海から聞かされた」とは言えない。何とかごまかせないかと、フォルナは頭を動かした。
    「それは、あの……、す、推理ですわ」
    「推理?」
    「えーと……、あなたの、その服。どう見ても、あなたの人柄や年齢とはかみ合っていらっしゃいませんもの。何かの事情があって、着ていると考えました。
     それと、えーと、この間お店にいらっしゃった時、情報をお求めされていましたから、恐らく情報を取り扱う職種。そして、身分を明かそうとされなかったので、極秘の任務についてらっしゃるのかと推察いたしました。
     それらの情報をまとめて、この街でそんな職業に就いてらっしゃる方と言えば、公安の方かしら、と」
    「はあ……、なるほどー」
     フォルナの言っていることは、半ばその場しのぎのデタラメなのだが、エランは簡単に信じ込んでしまった。
    「19、って言うのは?」
    「それは……、顔ですわ。先ほども申し上げたように、服装に対して幼すぎますもの」
     これはフォルナの本心から出た言葉である。もっと言えば、朱海からの情報が無ければ、フォルナは自分より幼いのではないかと思っていたくらいだ。
    「へぇ……」
     エランは感心したような声を上げる。反面、フォルナはとてもがっかりした。
    (この人、公安には向いてないんじゃないかしら)
     その後も30分ほど話をしたが、話せば話すほど、フォルナのエランに対する評価が下がっていった。
    「それでですね、先輩が『やっぱり目玉焼きには塩だな』って……」「はあ」
     まず、話自体が非常に面白くない。フォルナがまったく興味の無い、事情を知るわけも無い仕事の話を延々と続けている。
     しかもその内容は先輩がどうだとか、上司から何を言われただとか、まったく面白いポイントも関心を引くところも無い、非常にどうでもいいグダグダとした話なのである。
     結果、この30分フォルナは相槌しか打っていない。
    「で、やっぱり……」「すみませんが、そろそろお暇させていただきますわ」
     フォルナの苛立ちは頂点に達し、ついに席を立ってしまった。
    「え? あ、あの……」「それでは、失礼いたします」
     フォルナはそそくさと店を後にする。残されたエランは呆然としたまま、フォルナの後姿を見送った。

    「もう、折角のお休みを30分以上も無駄にしてしまったわ!」
     喫茶店を出たフォルナは、先ほど可愛い帽子を見つけた店に戻った。幸い、先ほどの帽子はまだ、誰にも買われていなかった。
    「すみません、こちらの帽子、おいくらかしら?」
    「80クラムになります」
     半ば苛立ちに任せ、帽子を買う。今までかぶっていた帽子をかばんの中に入れ、新しい帽子をかぶる。
    「似合うかしら?」
    「ええ、とっても。でも……」
     店員が頬に手をあて、ためらいがちに教える。
    「その、プリンちゃんになってます」
    「えっ?」
     それが何を指し示すのか分からず、フォルナは自分の服やかばんを調べる。
    「……?」
    「あの、髪染めていらっしゃいますよね? 根元辺りが、元の色に……」「まあっ」
     店員が持ってきてくれた鏡で確認すると確かに、髪の根元が染める前の茶色に戻ってきていた。言われて見れば確かに、カラメルの乗ったプリンのような色合いになっている。
    「染め直した方がいいと思いますよ」
    「そ、そうですわね。ありがとうございます」
     フォルナは帽子を深めにかぶり、店を出た。
    (そう言えばもう、髪を染めてから3、4ヶ月は経ってたわ。
     どうしましょ? また染めようかしら? それとも元の色に戻した方がいいかしらね?)
     そんなことを考えながら、フォルナはブラブラと街を歩く。
    (染めるとしたら、今度はお姉さまみたいに、黒髪に染めてみるのも面白いかも。あ、でもコスズさんやアケミさんみたいに赤毛と言うのも……)
     歩いているうちに、足が無意識に南の方へと向かう。
    (でも、あんまり頻繁に染めると髪が痛むと言うし……。どうしましょう?
     ……あら?)
     気が付くと、フォルナは闘技場の前にいた。

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    ある作家さん曰く、もっとも面白くない話は、
    「自分が見た夢の話、自分が観た映画の話、自分がしている仕事の話」だそうで。
    確かにその人にしかわからないようなことをダラダラ話されると、イラッときますね。
    話をする時は、相手にも良く分かるように話さなきゃと気をつけてます。

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    2016.06.03 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    夢はそのままお話としては確かに書けませんね。
    まあ、もっとも、私も夢で出てきたキャラクターをそのまま使っていますけどね。

    NoTitle 

    夢をそのまま夢で、面白おかしく書ける人はなかなかいませんね。
    確かに自分も、アイデアの2割、3割は夢から得ていますが、それをそのまま加工せず書いたら、間違いなく駄作に……(´・ω・)

    NoTitle 

    自分が見た夢を使って、「夢十夜」を書いて、読んで面白い作品に仕上げた夏目漱石先生はさすが文豪でありますなあ。

    「夢十夜」を映画にした……いえ……なんでもありません。
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