「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・接豪伝 2
神様たちの話、第212話。
策士の再会。
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2.
前回と違い、現在ミェーチ軍団が駐留しているのは街外れの小屋である。応接間などと言う気の利いた部屋を設ける余裕は無く、兵士たちが見守る中で、彼女との会話が行われることとなった。
「あー、まあ、お久しぶりやね、シェロくん」
流石の女丈夫エリザも、どことなく居心地悪そうにしているのを感じ、シェロは率直に尋ねてみた。
「今更何の用スか?」
「ま、ま、気ぃ悪うしとるんは分かっとるけども、ちょと聞いて欲しいコトあるんよ」
「聞いて欲しいコト?」
「こっちで色々やっとって、連絡遅れてしもてゴメンやけどもな、アンタの処分についてゼロさんからいっこ、物言い入ってな。『不名誉除隊は厳しすぎや。依願除隊にせえ』ちゅうてな。王様の一声やからハンくんも嫌や言われへんかって、ほんでまあ、そのようにしたっちゅうワケやねん」
「依願除隊に? ってコトは……」
「せや、この前は『二度と顔見せんな』とかきついコト言うてしもたけども、アレ、無し」
「は?」
ころっと掌を返してきたエリザの態度に、シェロは苛立ちを覚えた。
「何のつもりっスか、ソレ」
「ちゅうと?」
「そりゃ俺のやったコトはソレなりにひどいですから、何されたって文句言いやしませんけどね、ソレでも『アンタに温情見せてあげた』って態度が見え見えなんスよ。どうせ何か、別の話があって来たんでしょう?」
「お、察しがええな」
悪びれもせずそう返し、エリザはにこにこと笑う。
「アンタらがやろうとしとるコトに、アタシらも一枚噛ませて欲しいんよ」
「俺たちが? 何のコトです?」
とぼけて見せたが、エリザは事も無げに看破してくる。
「ハカラ王国の人らから近場の豪族倒してんかーっちゅうて頼まれたやろ?」
「え」
エリザの言葉を受け、シェロは面食らう。
「なんでソレを?」
「そらもうチョイチョイってなもんやね。アタシ個人の商売の関係で情報も集めとるから、アンタらがこっちでやっとるコトも粗方把握しとるんよ。
で、アンタはホンマにやる気か? いや、やられへんやろなぁ。ミェーチさんがそんなん絶対許すワケあらへんしな」
「ぐぬ……」
つい先程交わした会話までずばりと言い当てられ、シェロは言葉を失う。
「せやけど、ソレならこの後どないするん? このままミェーチさんと一緒にうーんうーん呪いの人形みたいにうなって悩んでてもしゃあないやろ?」
「大きなお世話ですよ」
辛うじて虚勢を張り、シェロは突っかかる。
「俺たちは俺たちで何とかしますから、あなたたちはあなたたちで勝手に石ころでも何でも売りつけてぼったくったらどうです?」
「分かってへんなぁ」
一方のエリザも、まったく態度を変えない。
「アタシがちょっと手ぇ貸したら、その話上手く行くやろなっちゅう目算があるんよ。せやなかったらわざわざ来るかいな」
「何ですって?」
「悪い話やないやろ? 今、アンタら大変やん。こんな狭い小屋に何十人も詰め込まれて、他にもまだ百人、二百人が野ざらし同然の生活や。この軍団のナンバー2、副団長の役に就いとるアンタが世話せなアカンもんな。早いトコ、落ち着けるトコ作らなアカンやろ?」
「だから、大きなお世話だっつってるでしょう?」
苛立ちが募り、シェロは声を荒らせる。
「こっちでやりますから、余計なコトしないで下さい。どうせあなたたちに手を借りたら、ソレをダシにして俺たちのコト、いいように操って利用するつもりなんでしょう?」
「せやな」
はっきりと肯定され、シェロはふたたび面食らった。
「なっ……」
「何や? アタシがソコを隠したりごまかしたりして、キレイゴト立て並べて話進めると思とったんか?」
「普通そう言うもんでしょう?」
「そう言うみみっちくてしょうもない真似は、自分がアタマええと思っとるアホのやるコトや。アタシがそんな、脳みその代わりにゴミが詰まっとるような三流のアホ参謀やと思とるんか?
アタシははっきり言うで。アンタを使うつもり満々やっちゅうコトも、アンタだけやなくてアタシにも利のある話やっちゅうコトもな」
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策士の再会。
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前回と違い、現在ミェーチ軍団が駐留しているのは街外れの小屋である。応接間などと言う気の利いた部屋を設ける余裕は無く、兵士たちが見守る中で、彼女との会話が行われることとなった。
「あー、まあ、お久しぶりやね、シェロくん」
流石の女丈夫エリザも、どことなく居心地悪そうにしているのを感じ、シェロは率直に尋ねてみた。
「今更何の用スか?」
「ま、ま、気ぃ悪うしとるんは分かっとるけども、ちょと聞いて欲しいコトあるんよ」
「聞いて欲しいコト?」
「こっちで色々やっとって、連絡遅れてしもてゴメンやけどもな、アンタの処分についてゼロさんからいっこ、物言い入ってな。『不名誉除隊は厳しすぎや。依願除隊にせえ』ちゅうてな。王様の一声やからハンくんも嫌や言われへんかって、ほんでまあ、そのようにしたっちゅうワケやねん」
「依願除隊に? ってコトは……」
「せや、この前は『二度と顔見せんな』とかきついコト言うてしもたけども、アレ、無し」
「は?」
ころっと掌を返してきたエリザの態度に、シェロは苛立ちを覚えた。
「何のつもりっスか、ソレ」
「ちゅうと?」
「そりゃ俺のやったコトはソレなりにひどいですから、何されたって文句言いやしませんけどね、ソレでも『アンタに温情見せてあげた』って態度が見え見えなんスよ。どうせ何か、別の話があって来たんでしょう?」
「お、察しがええな」
悪びれもせずそう返し、エリザはにこにこと笑う。
「アンタらがやろうとしとるコトに、アタシらも一枚噛ませて欲しいんよ」
「俺たちが? 何のコトです?」
とぼけて見せたが、エリザは事も無げに看破してくる。
「ハカラ王国の人らから近場の豪族倒してんかーっちゅうて頼まれたやろ?」
「え」
エリザの言葉を受け、シェロは面食らう。
「なんでソレを?」
「そらもうチョイチョイってなもんやね。アタシ個人の商売の関係で情報も集めとるから、アンタらがこっちでやっとるコトも粗方把握しとるんよ。
で、アンタはホンマにやる気か? いや、やられへんやろなぁ。ミェーチさんがそんなん絶対許すワケあらへんしな」
「ぐぬ……」
つい先程交わした会話までずばりと言い当てられ、シェロは言葉を失う。
「せやけど、ソレならこの後どないするん? このままミェーチさんと一緒にうーんうーん呪いの人形みたいにうなって悩んでてもしゃあないやろ?」
「大きなお世話ですよ」
辛うじて虚勢を張り、シェロは突っかかる。
「俺たちは俺たちで何とかしますから、あなたたちはあなたたちで勝手に石ころでも何でも売りつけてぼったくったらどうです?」
「分かってへんなぁ」
一方のエリザも、まったく態度を変えない。
「アタシがちょっと手ぇ貸したら、その話上手く行くやろなっちゅう目算があるんよ。せやなかったらわざわざ来るかいな」
「何ですって?」
「悪い話やないやろ? 今、アンタら大変やん。こんな狭い小屋に何十人も詰め込まれて、他にもまだ百人、二百人が野ざらし同然の生活や。この軍団のナンバー2、副団長の役に就いとるアンタが世話せなアカンもんな。早いトコ、落ち着けるトコ作らなアカンやろ?」
「だから、大きなお世話だっつってるでしょう?」
苛立ちが募り、シェロは声を荒らせる。
「こっちでやりますから、余計なコトしないで下さい。どうせあなたたちに手を借りたら、ソレをダシにして俺たちのコト、いいように操って利用するつもりなんでしょう?」
「せやな」
はっきりと肯定され、シェロはふたたび面食らった。
「なっ……」
「何や? アタシがソコを隠したりごまかしたりして、キレイゴト立て並べて話進めると思とったんか?」
「普通そう言うもんでしょう?」
「そう言うみみっちくてしょうもない真似は、自分がアタマええと思っとるアホのやるコトや。アタシがそんな、脳みその代わりにゴミが詰まっとるような三流のアホ参謀やと思とるんか?
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