「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・接豪伝 6
神様たちの話、第216話。
提携提案。
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6.
食事が始まってから30分ほどが経ち、豪族たちは――食事の合間に、彼らは「ダリノワ家家臣団」と名乗っていることが分かった――昼間と同様、顔をほころばせていた。
「うーむ、こんなに美味いものを食べたのは今日が初めてだ。沿岸部は痩せた土地と聞いていたが、これほど食材に恵まれているとは」
「色々試行錯誤してみましてな、仰山お魚やら何やら穫れるようになったんですわ。アタシがこっち来たばかりの頃に比べたら、まあ沿岸部の皆さん、ええ顔色してはりますわ」
「それはうらやましい」
一人がそうつぶやいたところで、別の者がそれをたしなめる。
「そんなことを口に出すな」
「そうは言うが、村でこんな豪勢な食事が出たことがあるか?」
「我々は質実剛健を誇りとするのだ。贅沢など……」
「カキのバター焼き片手にそんなん言うてても、カッコ付きませんで」
「うぐっ」
エリザに突っ込まれ、彼は顔を真っ赤にする。それを笑って眺めながら、エリザが続ける。
「ところで皆さん、普段はどんなもん食べてはるんです? 今後の参考にでけたらと思いまして」
「帝国下の人間は畑を持ったり牛馬を飼ったりしているようだが、我々は狩猟が主だ。たまに交換・交易はしているが、食物はほとんど野のものだな」
「交易っちゅうと、おカネ使て買うたりしてはるんですか?」
「我々の村にはそのような習慣が無い。基本は物々交換だ。カネが絡む取引はほとんど無いが、相手が所望する場合もあるから、多少は持ち合わせている」
「おカネ無いと、取引し辛くありません?」
「うむ。相手が取り合わん場合もある」
「ふむふむ」
そこでエリザが、こんなことを提案した。
「せやったら、アタシらとちょと取引してみません?」
「取引?」
「聞いた感じやと皆さん、帝国下の人らとあんまり仲良うできひんで困っとるように聞こえますからな。や、確かに帝国そのものとは絶対仲良うでけんっちゅうのんは分かってるんです。アタシが言いたいんは、その帝国の属国になっとるトコと、っちゅうコトなんですわ」
「む、む……?」
「いえね、沿岸部でのお話なんですけども、アタシらが来て間も無く、巷に反帝国の風潮が起こったんですわ。元々からそう言う意識はあったみたいなんですけども、やっぱり帝国さんらはえげつないくらい強いっちゅう話ですやんか、せやからソレまで反乱も蹶起もでけん状況やったんですな。
で、アタシらが来たコトで、『もしかしたら帝国を倒せるんちゃうか』っちゅうような空気がでけたんでしょうな、ソレから半年足らずで沿岸部におった帝国軍は壊滅したんですわ」
「なに……!?」
エリザの話に、彼らは揃って目を丸くする。
「最終的に攻撃したんはアタシらの軍勢ですけども、沿岸部の人らの協力あってこその結果ですわ。ほんで、こっちでの話ですけどもな。西山間部でもアタシらが『やるぞー』言うたら付いて来る人らが、結構な数おるんちゃうやろかと思とるんですよ」
「ふむ……」
「ソコで、皆さんにお願いがあるんです。皆さんの戦いを支援させていただく代わりに、アタシらと手ぇ組んでもらえへんやろか、と」
「ふむ……」
「いや、しかし」
豪族たちは困った顔をし、エリザに答える。
「俺たちは単なる斥候、一家来であるし、俺たちだけでそんな話はできない。我らが主君に通さなければ、そんな決定は……」
「ええ、ええ。十分承知しとります。せやからね」
エリザはにこっと笑みを浮かべ、こう続けた。
「皆さんの方からお話、通しといて欲しいんです。お土産も仰山持たせますさかい、どうぞよしなにお伝え下さい」
「うむ、そう言うことであれば承ろう」
「女将殿の頼みとあらば、嫌とは言えません」
すっかり懐柔された彼らは、いとも易々(やすやす)と、エリザの頼みを引き受けた。
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食事が始まってから30分ほどが経ち、豪族たちは――食事の合間に、彼らは「ダリノワ家家臣団」と名乗っていることが分かった――昼間と同様、顔をほころばせていた。
「うーむ、こんなに美味いものを食べたのは今日が初めてだ。沿岸部は痩せた土地と聞いていたが、これほど食材に恵まれているとは」
「色々試行錯誤してみましてな、仰山お魚やら何やら穫れるようになったんですわ。アタシがこっち来たばかりの頃に比べたら、まあ沿岸部の皆さん、ええ顔色してはりますわ」
「それはうらやましい」
一人がそうつぶやいたところで、別の者がそれをたしなめる。
「そんなことを口に出すな」
「そうは言うが、村でこんな豪勢な食事が出たことがあるか?」
「我々は質実剛健を誇りとするのだ。贅沢など……」
「カキのバター焼き片手にそんなん言うてても、カッコ付きませんで」
「うぐっ」
エリザに突っ込まれ、彼は顔を真っ赤にする。それを笑って眺めながら、エリザが続ける。
「ところで皆さん、普段はどんなもん食べてはるんです? 今後の参考にでけたらと思いまして」
「帝国下の人間は畑を持ったり牛馬を飼ったりしているようだが、我々は狩猟が主だ。たまに交換・交易はしているが、食物はほとんど野のものだな」
「交易っちゅうと、おカネ使て買うたりしてはるんですか?」
「我々の村にはそのような習慣が無い。基本は物々交換だ。カネが絡む取引はほとんど無いが、相手が所望する場合もあるから、多少は持ち合わせている」
「おカネ無いと、取引し辛くありません?」
「うむ。相手が取り合わん場合もある」
「ふむふむ」
そこでエリザが、こんなことを提案した。
「せやったら、アタシらとちょと取引してみません?」
「取引?」
「聞いた感じやと皆さん、帝国下の人らとあんまり仲良うできひんで困っとるように聞こえますからな。や、確かに帝国そのものとは絶対仲良うでけんっちゅうのんは分かってるんです。アタシが言いたいんは、その帝国の属国になっとるトコと、っちゅうコトなんですわ」
「む、む……?」
「いえね、沿岸部でのお話なんですけども、アタシらが来て間も無く、巷に反帝国の風潮が起こったんですわ。元々からそう言う意識はあったみたいなんですけども、やっぱり帝国さんらはえげつないくらい強いっちゅう話ですやんか、せやからソレまで反乱も蹶起もでけん状況やったんですな。
で、アタシらが来たコトで、『もしかしたら帝国を倒せるんちゃうか』っちゅうような空気がでけたんでしょうな、ソレから半年足らずで沿岸部におった帝国軍は壊滅したんですわ」
「なに……!?」
エリザの話に、彼らは揃って目を丸くする。
「最終的に攻撃したんはアタシらの軍勢ですけども、沿岸部の人らの協力あってこその結果ですわ。ほんで、こっちでの話ですけどもな。西山間部でもアタシらが『やるぞー』言うたら付いて来る人らが、結構な数おるんちゃうやろかと思とるんですよ」
「ふむ……」
「ソコで、皆さんにお願いがあるんです。皆さんの戦いを支援させていただく代わりに、アタシらと手ぇ組んでもらえへんやろか、と」
「ふむ……」
「いや、しかし」
豪族たちは困った顔をし、エリザに答える。
「俺たちは単なる斥候、一家来であるし、俺たちだけでそんな話はできない。我らが主君に通さなければ、そんな決定は……」
「ええ、ええ。十分承知しとります。せやからね」
エリザはにこっと笑みを浮かべ、こう続けた。
「皆さんの方からお話、通しといて欲しいんです。お土産も仰山持たせますさかい、どうぞよしなにお伝え下さい」
「うむ、そう言うことであれば承ろう」
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