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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第5部

    琥珀暁・接豪伝 7

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    神様たちの話、第217話。
    お話する? ソレとも「オハナシ」する?

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     エリザに懐柔された豪族たちは、本拠に戻ってすぐ、彼らの主君であるダリノワ王に話を伝えた。
    「……と言うことで、いずれ話をしたいと」
     だが――。
    「ならん」
     ダリノワ王はにべもなく、提案を一蹴した。
    「詳しい話は分からんが、胡散臭い。聞く価値も無かろう。以上だ」
    「し、しかし彼らと協力すれば……」
     説得しかけた斥候たちに、ダリノワ王は槍を向けた。
    「聞かぬと言っておるだろう! いい加減にせんか!」
    「うっ……」
    「この話はこれで終いだ! 分かったらとっとと……」
     ダリノワ王が声を荒げ、斥候たちを退かせようとしたところで――。
    「邪魔すんでー」
     突然、屋敷の中に女の声が飛んで来た。
    「……お、女将さん!?」
     面食らう斥候たちを気に留める様子も見せず、エリザはぺらぺらと手を振りながら、ダリノワ王の前へと歩み寄る。
    「アタシが今、皆さんがお話してた『女将さん』こと、エリザ・ゴールドマンです。よろしゅう」
    「帰れ」
     追い払おうとするダリノワ王に、エリザはにこっと笑顔を見せる。
    「ま、ま。多分そーやって邪険にしはるやろなと思いまして、こっちから来させてもろたんですわ。
     とりあえず、お話やら何やらする前にですな」
     そう言いつつ、エリザはぱん、ぱんと手を叩き、丁稚を呼ぶ。
    「お近付きの印と思いまして、ご飯ものをいくらか持って来てますんよ」
    「いらんわ!」
     ダリノワ王は怒りに満ちた顔で立ち上がり、槍を振り上げてエリザの前に立ちはだかる。
    「いい加減にしておけ、女狐。ここはわしの土地であるぞ。勝手な振る舞いをするのならば即刻、その細い首をへし折ってくれるぞ」
    「へーぇ、やれるもんやったらやってみはったらどないです?」
     が、エリザも笑顔をたたえたまま、一歩も引く姿勢を見せない。
    「言ったなッ!」
     挑発に乗る形で、ダリノワ王は槍をエリザの頭目がけて振り下ろす。ところが――。
    「ほい、『マジックシールド』」
     エリザは魔術を使い、自分の頭上に盾を作る。ダリノワ王の振り下ろした槍はその盾に弾かれ、先端が折れて天井に突き刺さった。
    「ぬッ……!?」
    「まだやる気です? やるんやったらなんぼでも付き合ったりますけどな?」
    「ぬ、……抜かせッ!」
     ダリノワ王は柄だけになった槍を投げ捨て、素手でエリザに襲い掛かる。しかしその手がエリザの腕をつかむより早く、エリザが魔術を発動させる。
    「『ショックビート』」
     次の瞬間、ダリノワ王はぐるんと白目を剥き、鼻から血を噴き出して、ばたんとうつ伏せに倒れてしまった。
    「……え……?」
    「女将さん……一体?」
    「な……何を!?」
     突然の事態に、成り行きを見守っていた斥候や丁稚らが顔を真っ青にする。しかしエリザはいつものように平然とした様子で、ニコニコと笑っていた。
    「ちょっと気絶さしただけや。安心し」

     2時間後――。
    「……う、うぬ?」
     ダリノワ王が目を覚まし、すぐに傍らに座っていたエリザと目が合う。
    「おはようさん。気分はどないです?」
    「……っ」
    「あら、そんな怖い顔せんといて下さい。アタシは最初から、平和的にお話したいなーと思て来とりますねん。ただですな」
     一瞬、エリザは目を細め、すうっとダリノワ王をにらみつける。
    「穏やかにお話でけへん人には、痛い目見てもらうコトにしとりますねん」
    「う……ぐ」
     と、すぐにいつも通りの笑顔に戻り、やんわりとした口調で続ける。
    「ソレ以外は基本的に、アタシは優しぃくするようにしとりますねん。……ソレでですな、お話、聞いてもらえますやろか?」
    「……わ……分かった。聞く。聞かせてもらおう」
     ダリノワ王はかくんかくんと首を縦に振り、エリザに従った。



     そして話をしてすぐ、ダリノワ王はエリザの申し出を受けることを受諾。エリザから金品を受け取る代わりにエリザと懇意にしているミェーチ軍団に居留地を提供することを取り決め、また、有事及び作戦行動時には三者とも、互いに協力することを約束した。
     これにより遠征隊、いや、エリザは西山間部での足掛かりを得ることに成功し、さらに途絶していたミェーチ軍団とも、関係を回復することができた。

    琥珀暁・接豪伝 終
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