黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第5部

    琥珀暁・密議伝 4

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    神様たちの話、第221話。
    クーとおはなし。

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    4.
    「尉官、本っ当にお酒弱いんですから、そんなことしたらダメですよ」
    「ええ、承知しております」
     クーがハンを酔い潰した翌日、街に新しく作られた喫茶店にて、クーから事の顛末を聞いたマリアが、彼女をたしなめていた。
    「中身が叱責とは言え、お慕いしている方とのお話が止まってしまうのは残念ですもの」
    「や、そっちもクーちゃんには大事だと思うんですけども」
     マリアは困った顔をしつつ、クーにこう伝えた。
    「尉官、お酒呑むと翌日、ものっすごく体調崩しちゃうんですよ。顔色もいつもの三割増で青くなっちゃいますし。なのに無理矢理仕事出て来るから、周りの気が気じゃないんですよねー」
     これを聞いて、クーは「あら」と声を上げた。
    「では、今日も……?」
    「間違いなく真っ青です。あと、いつもコップ1杯でぐったりしちゃいますからあんまり無いですけど、うっかり2杯も呑んじゃうと、胃腸ぎゅるぎゅるになっちゃうみたいです。今よりもっとガリガリになっちゃったら尉官、お仕事できなくなっちゃいますよ?」
    「十分に留意いたしますわ。ありがとうございます、マリア」
     クーがにこっと笑みを返したところで、マリアが「あ、そー言えば」と声を上げる。
    「尉官とクーちゃんのお二人だけで話してたんですよねー、それって」
    「ええ、さようですわ」
    「何のお話してたんですかー? や、下世話なこと考えてるわけじゃないんですけどー、最近なんか、エリザさんも尉官も、こそこそっと話してることが多いんですよね。で、クーちゃんもちょくちょく同じよーにお話ししてるから、何か知らないかなーって」
    「え? ええと、それは……」
     クーはそれが「密約」に関する話だろうと察したが――。
    (エリザさんからも『秘密やで』と念押しされておりますし、いくらマリアが相手でも、漏らすことはいたせませんわよね)
     元来、嘘や隠し事が苦手なクーではあったが、ともかくその場は隠そうと努めた。
    「……そうですわね、軍事上・政治上の機密も含んでおりますから、あまり軽々にはお話しできる内容ではございません。申し訳ございませんけれど、この件に関してはあまりお尋ねいただかない方がよろしいかと」
    「あ、やっぱり何かやってるんですねー? また何か進行中ってことですね」
    「えっ!?」
     が、あっさり見抜かれてしまい、クーは口を両手で抑え、黙り込む。
    「もごもご……」
     そんなクーの様子を見て、マリアはケラケラ笑う。
    「や、だいじょぶですって。秘密なら秘密であたし、それ以上は聞きませんから。いつものアレです」
    「そうしていただけるとたいへんたすかります……」
    「あとですね、クーちゃん。聞かれたくないって話があること自体悟られたくないなー、気取られたくないなーって時はですね、例えば『わたくしは存じ上げませんわね』とかって、自分もまったく知らないですよーって感じでごまかした方が、勘繰られずに済みますよー。あたしの場合はなんか、クーちゃんがあんまりにも正直者すぎて聞くのためらっちゃいますけど、性格悪い人だったら、しゃべるまでとことん根問いされちゃいますよ、きっと」
    「ごしてきまことにいたみいります……」
     かくんかくんと首を振りつつ、クーは口に当てていた手を、顔全体に滑らせた。

     と、そこへ――。
    「あ、マリアさん。それから殿下も」
    「あれ、ビート? ……とトロコフさん」
     ビートとイサコが店内に入るなりマリアたちに気付き、近寄って来る。
    「珍しいね。仲良かったっけ?」
    「いや、ハーベイ君に話を聞こうとしていたのだが、彼から『立ち話もなんですから』と、こちらに連れて来られた次第である。
     しかし丁度良かった。タイムズ殿下にもお尋ねしたいと考えていたので」
    「わたくしに?」
     そう返し、クーは一瞬、チラ、とマリアに目をやる。
    (『知らない素振り』、でしたわね?)
    (そ、そ)
     マリアと目線を交わし、クーはイサコに向き直る。
    「いかがされまして?」
    「そちらの……、遠征隊の運営に関わることと思うのだが、シモン尉官本人に聞くのも面倒と言うか、あまり色良い答えが返って来そうに無いと言うか」
    「はあ」
    「いや、前置きは不要であるな。率直にお聞きいたそう」
     イサコは顔を強張らせ、恐る恐ると言った口調で尋ねてきた。
    「シモン尉官の側近と言うか、班編成はナイトマン放逐以降、ハーベイ君とロッソ君の2人のままだが、今後も現状を維持するのだろうか? 補充などは考えておらんのだろうか?」
    「えっ? そんなことですの?」
    「そ、そんなこと?」
     肩透かしを食い、ずれた返答をしたクーに、イサコは目を丸くする。
    「いやいや、放置すれば指揮系統に乱れが起こり得る、重要な案件だと思うのだが」
    「あ、あっ、さようですわね、失礼いたしました」
     クーは取り繕いつつ、もう一度マリアに目を向けたが――。
    (……んもう!)
     マリアは顔を背け、背中をぷるぷると震わせていた。
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