黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第5部

    琥珀暁・姫惑伝 3

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    神様たちの話、第226話。
    クーのときめき。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     丁稚奉公を終え、3日ぶりに玉座に就いたところで、クーは頭を抱えて深いため息をついた。
    「はあぁ……。わたくしがどうして、このような目に遭わなければならないのかしら」
    「そりゃまあ、仕方無いですって」
     と、その前にひょい、とマリアが姿を現す。
    「あっ、マリア!」
    「お久しぶりです。大変でしたねー」
     そんなことを言ってきたマリアを、クーは恨みがましくにらみつける。
    「あなた、この3日間、どちらにいらしたの? わたくしが汚れ仕事を強制される羽目になったのは、あなたにも責任の一端がございますのよ?」
    「どこって、お仕事してましたよ。尉官とビートと一緒に、東の方の測量に。尉官が『ようやく測りに行ける』って、珍しくご機嫌でしたから」
    「ぐぬぬ」
     公用と聞いては、自分の怒りをぶつけることもできない。歯噛みするしかなく、クーは黙り込んでしまった。
    「で、で、聞いたんですが」
     と、そんなクーに、マリアがあれこれ話しかけてくる。
    「クーちゃん、エリザさんのトコで罰受けてたんですってね」
    「……」
    「見てみたかったですねー、クーちゃんのエプロン姿」
    「……」
    「あら、お手手かっさかさになっちゃってますね。水仕事大変だったみたいですね」
    「……~っ」
     苛立ちが募り、クーはキッとマリアをにらみ、怒鳴りかける。
    「あなたっ……」「あ、そーそー」
     が、そんなクーを気にかける様子も見せず、マリアは話題を変える。
    「その測量でですねー、あたしたち変なの見付けたんですよね。何て言うか、遺跡? みたいな、そんな感じのトコなんですけどね」
    「それが一体、……遺跡? ですって?」
     マリアの話を聞いた途端、クーの怒りはどこかへ飛んで行ってしまった。
    「それは、どのような? 帝国軍が使っていた基地などでは無く?」
    「そんなのよりもっと古そうな感じでしたよ。あ、遺跡って言いましたけど、ビートは『これは正確には遺構(いこう:地中に埋もれる形で遺った住居跡)って言うんじゃ』みたいなこと言ってましたね。で、文字みたいなのもあったんですけど、全然分かりませんでした。これ、もしかしたらすっごくすごい感じのやつなのかなーって尉官と話してたんですけど、また来週くらいに調査へ出かけようかーって言ってるところなんですよね。クーちゃん、一緒に来ます?」
    「えっ?」
     思いもよらない提案に、クーは面食らう。
    「何故わたくしを? 調査目的であれば、公務でしょう? ハンが許すはずがございませんわ」
    「いや、むしろクーちゃんがいた方がいいですよねーってあたし、尉官に提案したんですよね。色々調べ物しなきゃいけないですし、そーゆー調査するんだったら、クーちゃんの力を頼った方がいいんじゃって」
    「さ、さよう、ですか。……コホン、な、納得いたしましたわ」
     自分では努めて冷静に応じたつもりだったが、声が上ずっているのを自分でも感じ、クーは咳払いでごまかす。
     その様子を眺めていたマリアは歯がチラチラと見えるくらい笑い転げながら、話を切り上げた。
    「あは、ははっ、うふふ……。あー、うんうん、乗り気で良かったです。じゃ、尉官にそー伝えときます。後でまた」
    「えっ、ええ。よっ、よしなに」
     ぎこちない返事をしたクーに背を向けて、マリアはその場を後にした。

     クーのいる王の間から廊下に進み、角を一つ曲がったところで、マリアはその陰に立っていたハンに笑いかけつつ、こそこそと声をかけた。
    「ってことなので、後で尉官からも言ってあげて下さいね」
    「ああ」
    「あ、でもあたしと一緒の方がいいですかね? 尉官とクーちゃんの二人きりじゃ、また尉官がドカーンってなって、こじれちゃうかもですし」
    「そんな心配はしなくていい。公務の一環だからな。淡々と伝えるだけだ」
    「本当に公務って思ってたら、そんなこと言わないですよね?」
    「む……」
     気まずそうな顔をするハンに、マリアはいたずらっぽい口調で突っ込む。
    「本当に尉官、色々不器用ですよねー。女の子の扱いとか、公私の分け方とか」
    「……」
     黙り込むハンをよそに、マリアはニコニコと笑みを向ける。
    「でも嫌いじゃないですよ、そーゆーとこ。だからちゃんとフォローしますよ。そもそもあたし、尉官の補佐ですしね」
    「……すまん」
     頭を下げたハンにぺらぺらと手を振って返し、マリアは立ち去った。
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