「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・姫惑伝 6
神様たちの話、第229話。
ハンのいもうと。
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6.
夕食が終わったところで、マリアがテントの外に顔を出し、様子を確かめる。
「わー、真っ白」
「え? 魔法陣、動いてない感じですか?」
尋ねたビートに、マリアが顔をテント内に戻しつつ、「ううん」と答える。
「動いてるのは動いてるっぽいよ。結界の外はこんもり積もってるけど、内側はうっすらって感じだから」
「じゃあ、積雪量が魔法陣の効果を上回ってるってことですね。ちょっと描き足してきます。これ以上降り積もって全員凍死なんて、冗談じゃ済みませんからね」
「ではわたくしもお手伝いいたしますわね」
ビートとクーが外に出、テントの中にはハンとマリアだけになる。その途端、マリアがまたニヤニヤと笑みを浮かべながら、ハンに近付いて来た。
「で、で、さっきの話なんですけど」
「なんだよ」
「正直なとこ、クーちゃんのことはどう思ってるんです?」
「どうって……、どうも思ってない」
「またまたぁ。ごまかさなくっていいんですよー?」
ハンの回答を鼻で笑い、マリアは質問を重ねる。
「今はあたしと尉官しかいませんし、ビートもクーちゃんも忙しいでしょうから、素直に何でも話してもらって大丈夫ですよ。言いにくいなー、説明し辛いなーってことでも、あたしじっくり聞きますし。勿論エリザさんみたく、話のあちこちでいちいち茶々入れたりもしませんよ」
「……なら、言うが」
ハンはチラ、とテントの出入口に目をやり、ぽつりぽつりとした口調で話し始めた。
「確かに俺は、クーのことを嫌ってなんかいないし、どっちだって言えば好印象を持ってはいる。だが、正直に言えば、恋人だとか結婚相手だとか、そう言う相手としてはまだ、どうにもそうは思えないんだ」
「やっぱり妹的な感じですか」
「そうなるな。現状、手のかかる妹としか感じてない。……それが今後、そう言う相手として見ていくようになるのか、やっぱり妹だとしか思えないままなのかは、俺だって分からん。分かるもんか」
「でしょうね」
「だがどう言うわけか、俺の周りの人間は皆、クーと俺をくっつけたがってるんだ。エリザさんもだし、親父もお袋も、妹たちも。お前たちもだよな」
「まあ、その方が現状、面白いですもん」
マリアはいたずらっぽく笑いつつ、切り返して来る。
「でもみんながくっつけようとするのって結局、尉官が独り身だからですよね。いいトシして恋人も奥さんになりそうな人も近くにいないし、そこにクーちゃんが名乗りを挙げて迫って来ちゃったんですから、誰だって『じゃあこの二人くっつけちゃえ』ってなりますよ」
「むう……」
「だから、どーしても、どぉーしてもクーちゃんを奥さんにできないって言うなら、誰か他にいい人見付けないと。じゃなきゃみんな絶対納得しませんし、何なら本気で外堀埋めにかかりますよ、あたしたち。
何だかんだ言って、あたしたちは尉官がこのまま寂しく独りでおじさん、おじいちゃんになってくのは心配ですしね」
「余計なお世話だ。……しかしなぁ」
ハンは両手を頭の後ろで組み、うめくような口ぶりで続ける。
「他に誰かって言ったって、お前の言う通り、確かにいないんだよな。それらしい出会いも無いし。……あ、いや、お前はいるけど」
「なんかそれ、あたしを女の子として認識してないぞってセリフですよね。まあ、あたしも尉官はお付き合いするような相手としては見てないですけど」
「じゃあどう見てるんだ?」
「手のかかるお兄ちゃん、ですね」
「……だろうと思ったよ」
話しているうちに、ハンは無意識に、くっくっと笑みを漏らしていた。
「まあ、なんだ。この話はもう、この辺でいいだろ? これ以上、今ここでああだこうだと言ったところで、俺がいきなりクーに惚れるなんてことも無いし」
「そーですね。解決できないことをいくら悩んでも、お腹が減るだけです。今日はもう、ちゃっちゃと寝ちゃいましょう」
「だな」
そこでビートとクーが戻り、一行はそのまま就寝した。
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ハンのいもうと。
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6.
夕食が終わったところで、マリアがテントの外に顔を出し、様子を確かめる。
「わー、真っ白」
「え? 魔法陣、動いてない感じですか?」
尋ねたビートに、マリアが顔をテント内に戻しつつ、「ううん」と答える。
「動いてるのは動いてるっぽいよ。結界の外はこんもり積もってるけど、内側はうっすらって感じだから」
「じゃあ、積雪量が魔法陣の効果を上回ってるってことですね。ちょっと描き足してきます。これ以上降り積もって全員凍死なんて、冗談じゃ済みませんからね」
「ではわたくしもお手伝いいたしますわね」
ビートとクーが外に出、テントの中にはハンとマリアだけになる。その途端、マリアがまたニヤニヤと笑みを浮かべながら、ハンに近付いて来た。
「で、で、さっきの話なんですけど」
「なんだよ」
「正直なとこ、クーちゃんのことはどう思ってるんです?」
「どうって……、どうも思ってない」
「またまたぁ。ごまかさなくっていいんですよー?」
ハンの回答を鼻で笑い、マリアは質問を重ねる。
「今はあたしと尉官しかいませんし、ビートもクーちゃんも忙しいでしょうから、素直に何でも話してもらって大丈夫ですよ。言いにくいなー、説明し辛いなーってことでも、あたしじっくり聞きますし。勿論エリザさんみたく、話のあちこちでいちいち茶々入れたりもしませんよ」
「……なら、言うが」
ハンはチラ、とテントの出入口に目をやり、ぽつりぽつりとした口調で話し始めた。
「確かに俺は、クーのことを嫌ってなんかいないし、どっちだって言えば好印象を持ってはいる。だが、正直に言えば、恋人だとか結婚相手だとか、そう言う相手としてはまだ、どうにもそうは思えないんだ」
「やっぱり妹的な感じですか」
「そうなるな。現状、手のかかる妹としか感じてない。……それが今後、そう言う相手として見ていくようになるのか、やっぱり妹だとしか思えないままなのかは、俺だって分からん。分かるもんか」
「でしょうね」
「だがどう言うわけか、俺の周りの人間は皆、クーと俺をくっつけたがってるんだ。エリザさんもだし、親父もお袋も、妹たちも。お前たちもだよな」
「まあ、その方が現状、面白いですもん」
マリアはいたずらっぽく笑いつつ、切り返して来る。
「でもみんながくっつけようとするのって結局、尉官が独り身だからですよね。いいトシして恋人も奥さんになりそうな人も近くにいないし、そこにクーちゃんが名乗りを挙げて迫って来ちゃったんですから、誰だって『じゃあこの二人くっつけちゃえ』ってなりますよ」
「むう……」
「だから、どーしても、どぉーしてもクーちゃんを奥さんにできないって言うなら、誰か他にいい人見付けないと。じゃなきゃみんな絶対納得しませんし、何なら本気で外堀埋めにかかりますよ、あたしたち。
何だかんだ言って、あたしたちは尉官がこのまま寂しく独りでおじさん、おじいちゃんになってくのは心配ですしね」
「余計なお世話だ。……しかしなぁ」
ハンは両手を頭の後ろで組み、うめくような口ぶりで続ける。
「他に誰かって言ったって、お前の言う通り、確かにいないんだよな。それらしい出会いも無いし。……あ、いや、お前はいるけど」
「なんかそれ、あたしを女の子として認識してないぞってセリフですよね。まあ、あたしも尉官はお付き合いするような相手としては見てないですけど」
「じゃあどう見てるんだ?」
「手のかかるお兄ちゃん、ですね」
「……だろうと思ったよ」
話しているうちに、ハンは無意識に、くっくっと笑みを漏らしていた。
「まあ、なんだ。この話はもう、この辺でいいだろ? これ以上、今ここでああだこうだと言ったところで、俺がいきなりクーに惚れるなんてことも無いし」
「そーですね。解決できないことをいくら悩んでも、お腹が減るだけです。今日はもう、ちゃっちゃと寝ちゃいましょう」
「だな」
そこでビートとクーが戻り、一行はそのまま就寝した。
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