「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・新尉伝 4
神様たちの話、第242話。
彼女は何者?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「どう言う意味だ?」
尋ねたハンに、エマは肩をすくめて見せる。
「ココ最近の陛下が暴走気味だってコトは、中枢でソレとなくうわさになってるね。実際、アロイ皇太子や君のお父さんをはじめとして、事ある毎になだめてる始末さ。
で、そのなだめてる連中の一人が、私を遠征隊第2中隊の隊長に推したのさ。どっちかって言うと穏健派だって評判らしいしね、私。実際、戦闘経験なんて無いし、訓練もあんまり出てないしね」
「つまりあなたも、積極的な戦闘は避ける姿勢であると?」
クーの言葉に、エマはニッと笑みを浮かべる。
「自分からしなくてもいい戦闘仕掛けるなんて、アホのやるコトさね。そして私はアホじゃないつもりだね」
「では……」
安堵しかけたところで、エマがこう続ける。
「でもね、ソレなりに戦果を出さなきゃ陛下は納得しないね。私がココに来て何の進展も無い、何の成果も出ないってんじゃ、ソレこそ陛下は隊長を軒並み罷免する。遠征隊も総取っ替えして、今度はもっと好戦的な連中が送られるだろうね。
そんなワケで、エリザ」
くるんと向き直り、エマが尋ねる。
「君なら可能な限り最速で最低限の被害で、かつ、最大限の戦果を挙げる策を進めてるだろ?」
「そらまあ」
横柄とも取れるエマの態度に構う様子も無く、エリザもニヤッと笑って返す。
「今年のはじめから色々やっとったコトが、着々実ってきとるからな。時期さえ来れば、いつでも行動でけるで」
「君がやるんなら問題無さそうだね。……ま、私からの話はコレくらいだね。
あ、あとさ、ハン。君の班に欠員出てたって話だけど、当面は私がサブで入るコトになったから。スライドする形で、マリアってのがポイントマン。ビートってのはそのまんま。ま、ポジションなんかどうだっていいけどね。だから第2中隊も、私が動かしてない時は君の命令に従うコトになる。ソレでいいね?」
「あ、ああ」
一通りまくし立て終え、エマは唐突に席を立った。
「じゃ、私はこの辺で」「待ちいや」
と、エリザがニコニコと笑ったまま声をかける。
「アンタに聞きたいコトあんねけど」
「何でもどうぞ」
「アンタ、いくつや言うてた?」
「22」
「ホンマ?」
「ウソついてどうするね?」
「……まあええわ。あともういっこ聞くけど」
「どうぞ」
「モールって知らん?」
「なにそれ?」
「ん……。知らんならええ」
エリザからの質問がやんだところで、エマは「もういい? じゃーね」と言って、そのまま部屋を出て行った。
「どうしたんです?」
尋ねたハンに、エリザが首をかしげたまま答える。
「いやな、なーんか話し方やら態度やら、アタシの師匠そっくりやなと思てな」
「師匠? 確か、モールと言う方だと聞いた覚えがありますね」
「せや。評判も聞いたコトあるやろ?」
「一応は、親父から。かなり偏屈で気分屋だが、陛下に並ぶ『魔法使い』であったと」
「まあ、大体そんなトコやね。アタシ、どうもあの子、師匠の娘かなんかちゃうんかと思たんやけど、22歳やったら計算合わへんねんな。アタシと旅しとる時辺りに産まれたコトになってまうし」
「そんなに似てるんですか?」
「まるで本人ちゃうかっちゅうくらいな。……ま、そのうちはっきりさせたるわ。
あの子が言うた通り、今は計画も詰めの段階に来とるからな。ココでいらん諍(いさか)い起こしてワヤにしたないし、アタシはそっちに集中するわ」
「承知しました。ところで……」
ハンは部屋の扉をチラ、と見て、エリザに尋ねる。
「彼女の身辺調査を行っておきましょうか? 今まで聞いた情報はすべて、彼女の口から出た話でしかありませんし、彼女が何らかの理由から嘘をついている、と言う可能性も少なくないでしょう。それを抜きにしても、どの程度信頼できる相手かどうか見定めないことには、連携の取りようがありませんし」
「せやな。……や、ソレはアタシがお店の子使てやるわ。同じ隊長のアンタが主だってそんなコトしとったら、角が立つやろ。シェロくん時の二の舞になりかねへんで」
「確かに。では、そちらもお願いします。その他に、俺やクーの方で動けることはありますか?」
「んー……」
エリザはメモをめくり、首を横に振った。
「や、今んトコは特に何も無いわ。あの計画動かすんは今月の末やから、今まで通りソレに向けて、しれっと訓練と誘導さしとくくらいで」
「つまりこれまで通り、と」
「そう言うこっちゃ」
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4.
「どう言う意味だ?」
尋ねたハンに、エマは肩をすくめて見せる。
「ココ最近の陛下が暴走気味だってコトは、中枢でソレとなくうわさになってるね。実際、アロイ皇太子や君のお父さんをはじめとして、事ある毎になだめてる始末さ。
で、そのなだめてる連中の一人が、私を遠征隊第2中隊の隊長に推したのさ。どっちかって言うと穏健派だって評判らしいしね、私。実際、戦闘経験なんて無いし、訓練もあんまり出てないしね」
「つまりあなたも、積極的な戦闘は避ける姿勢であると?」
クーの言葉に、エマはニッと笑みを浮かべる。
「自分からしなくてもいい戦闘仕掛けるなんて、アホのやるコトさね。そして私はアホじゃないつもりだね」
「では……」
安堵しかけたところで、エマがこう続ける。
「でもね、ソレなりに戦果を出さなきゃ陛下は納得しないね。私がココに来て何の進展も無い、何の成果も出ないってんじゃ、ソレこそ陛下は隊長を軒並み罷免する。遠征隊も総取っ替えして、今度はもっと好戦的な連中が送られるだろうね。
そんなワケで、エリザ」
くるんと向き直り、エマが尋ねる。
「君なら可能な限り最速で最低限の被害で、かつ、最大限の戦果を挙げる策を進めてるだろ?」
「そらまあ」
横柄とも取れるエマの態度に構う様子も無く、エリザもニヤッと笑って返す。
「今年のはじめから色々やっとったコトが、着々実ってきとるからな。時期さえ来れば、いつでも行動でけるで」
「君がやるんなら問題無さそうだね。……ま、私からの話はコレくらいだね。
あ、あとさ、ハン。君の班に欠員出てたって話だけど、当面は私がサブで入るコトになったから。スライドする形で、マリアってのがポイントマン。ビートってのはそのまんま。ま、ポジションなんかどうだっていいけどね。だから第2中隊も、私が動かしてない時は君の命令に従うコトになる。ソレでいいね?」
「あ、ああ」
一通りまくし立て終え、エマは唐突に席を立った。
「じゃ、私はこの辺で」「待ちいや」
と、エリザがニコニコと笑ったまま声をかける。
「アンタに聞きたいコトあんねけど」
「何でもどうぞ」
「アンタ、いくつや言うてた?」
「22」
「ホンマ?」
「ウソついてどうするね?」
「……まあええわ。あともういっこ聞くけど」
「どうぞ」
「モールって知らん?」
「なにそれ?」
「ん……。知らんならええ」
エリザからの質問がやんだところで、エマは「もういい? じゃーね」と言って、そのまま部屋を出て行った。
「どうしたんです?」
尋ねたハンに、エリザが首をかしげたまま答える。
「いやな、なーんか話し方やら態度やら、アタシの師匠そっくりやなと思てな」
「師匠? 確か、モールと言う方だと聞いた覚えがありますね」
「せや。評判も聞いたコトあるやろ?」
「一応は、親父から。かなり偏屈で気分屋だが、陛下に並ぶ『魔法使い』であったと」
「まあ、大体そんなトコやね。アタシ、どうもあの子、師匠の娘かなんかちゃうんかと思たんやけど、22歳やったら計算合わへんねんな。アタシと旅しとる時辺りに産まれたコトになってまうし」
「そんなに似てるんですか?」
「まるで本人ちゃうかっちゅうくらいな。……ま、そのうちはっきりさせたるわ。
あの子が言うた通り、今は計画も詰めの段階に来とるからな。ココでいらん諍(いさか)い起こしてワヤにしたないし、アタシはそっちに集中するわ」
「承知しました。ところで……」
ハンは部屋の扉をチラ、と見て、エリザに尋ねる。
「彼女の身辺調査を行っておきましょうか? 今まで聞いた情報はすべて、彼女の口から出た話でしかありませんし、彼女が何らかの理由から嘘をついている、と言う可能性も少なくないでしょう。それを抜きにしても、どの程度信頼できる相手かどうか見定めないことには、連携の取りようがありませんし」
「せやな。……や、ソレはアタシがお店の子使てやるわ。同じ隊長のアンタが主だってそんなコトしとったら、角が立つやろ。シェロくん時の二の舞になりかねへんで」
「確かに。では、そちらもお願いします。その他に、俺やクーの方で動けることはありますか?」
「んー……」
エリザはメモをめくり、首を横に振った。
「や、今んトコは特に何も無いわ。あの計画動かすんは今月の末やから、今まで通りソレに向けて、しれっと訓練と誘導さしとくくらいで」
「つまりこれまで通り、と」
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