「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・新尉伝 6
神様たちの話、第244話。
双月暦24年度北方計画。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
第2中隊が到着してから一週間後、改めてハンとエリザ、クー、そしてエマの4人で、今後の計画について話し合われた。
「まず、私の本来の仕事の話だけど」
そう切り出し、エマが話を始める。
「当初、資材の確保ができ次第、まずは沿岸部の主要な街道に――つっても1本だけどさ――煉瓦敷いて整備してこうかって話してたんだけどさ、現状の生産能力だと、その道完成させるのだけでも1年かかるんだよね。だからその計画進めるには、まずは煉瓦の生産設備が増設・増強されなきゃ話にならないねって言ってたんだけど……」
「現状で既にいっぱいいっぱいやねんな。工房も人手も原料も燃料も、なんもかんも足らんし。アンタの言う通り進めようとしたら、30倍くらいに規模拡大せなアカンねんけど、そんなん現実的に無理やん? せやからとりあえずは砂と砂利引くくらいでええんちゃうかって提案してん」
「で、その案で行くコトにしたね。ぶっちゃけ、現状でソコまでしっかりした道作ったってあんまり意味無いからね。その上を通るのなんてせいぜい荷車くらいだし、煉瓦道みたいな頑丈な作りにする必要無いだろって話だね。煉瓦と比べたら砂利も砂もあっちこっちで採れるし、ソレで道路工事進める。煉瓦は街の中だけに敷くに留めるコトにするね。ソレだけなら現状の設備でまかなえるし。
で、次は戦争の話だけど」
エマの言葉に、ハンは表情を曇らせる。
「まあ、考えなきゃいけないよな」
「陛下の本意だしね。でもコレも今、計画進めてるトコだろ?」
「せやね」
エリザが応じ、そのまま説明に入る。
「西山間部における反帝国勢力――ミェーチ軍団と豪族さんらやね――の総勢は500くらいや。一方で帝国西山間部方面軍の兵力は1000、西山間部5ヶ国の各兵力は300ずつになっとるらしいわ」
「いずれも300名なのですか?」
尋ねたクーに、エリザはうなずいて返す。
「せや。ちゅうのも、帝国さんからのお達しのせいらしいな。『300人以上兵隊増やすな』て、制限かけとるらしいわ」
「反乱が起こった場合、鎮圧を容易にするためでしょうね。1000対300なら、十分可能でしょうし」
「まあ、そう言うこっちゃ。沿岸部ん時は帝国本土から遠くてヒトがよお送れへんっちゅうのんもあったし、『賤民がなんぼ来たかて相手になるか』的なコト考えとったみたいで、ソコら辺の規制は緩かったけどな。
一方で帝国本土に近い西山間部は、がっちり規制かけてはるらしいんやけど、その規制が今回、仇になっとるな」
「確かに。対外勢力をまったく考慮していない構成ですからね」
ハンの言葉に、エマがニヤッと笑う。
「おかげで私らは随分楽できるってワケさ。でもエリザ、帝国のヤツらってまさかまだ、私らに対して対策してない感じなの?」
「やってはいはるらしいけどな。でも今までの方針からぐるっと転換しとるようなもんやから、足並みは全然揃てへんみたいやで」
「『帝国は覇権国家であり、敵国や敵勢力など一切存在しない』との考えでしたね、確か」
「ソレを慌てて、『敵国が攻めてきた』とか言い出してるんだろ? 無様もいいトコだね」
「ま、そんなこんなで、未だに沿岸部へ攻め入る算段すら付いてへんっちゅう話や。相手がまごついとるんやったら、アタシらにとっては好都合や。
さっきも言うた通り、帝国軍以外の西山間部5ヶ国の各兵力は300ずつや。コレを各個撃破する形で進めようと思とるんやけども……」
「けども?」
尋ねたエマに、エリザは肩をすくめて返す。
「まともにぶつかり合うたら、犠牲は出るわな。そんなん嫌やろ?」
「理想論だね」
「理想は大事やで。ソレに、人心掌握っちゅう観点からも重要やしな。『人殺しが征服に来よった』なんて思われたら、統治もクソも無いやろ?」
「そりゃま、そうだね」
「そもそも遠征隊は『友好的な関係を築く』っちゅう目的やし、ゼロさんも口ではそう言うてはるんやろ? せやからココは、ちょっとひねって攻めるつもりや。そのために色々準備しとったんやからな」
エマにそう返し、エリザはいつものように、ニヤッと笑って見せた。
琥珀暁・新尉伝 終
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双月暦24年度北方計画。
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第2中隊が到着してから一週間後、改めてハンとエリザ、クー、そしてエマの4人で、今後の計画について話し合われた。
「まず、私の本来の仕事の話だけど」
そう切り出し、エマが話を始める。
「当初、資材の確保ができ次第、まずは沿岸部の主要な街道に――つっても1本だけどさ――煉瓦敷いて整備してこうかって話してたんだけどさ、現状の生産能力だと、その道完成させるのだけでも1年かかるんだよね。だからその計画進めるには、まずは煉瓦の生産設備が増設・増強されなきゃ話にならないねって言ってたんだけど……」
「現状で既にいっぱいいっぱいやねんな。工房も人手も原料も燃料も、なんもかんも足らんし。アンタの言う通り進めようとしたら、30倍くらいに規模拡大せなアカンねんけど、そんなん現実的に無理やん? せやからとりあえずは砂と砂利引くくらいでええんちゃうかって提案してん」
「で、その案で行くコトにしたね。ぶっちゃけ、現状でソコまでしっかりした道作ったってあんまり意味無いからね。その上を通るのなんてせいぜい荷車くらいだし、煉瓦道みたいな頑丈な作りにする必要無いだろって話だね。煉瓦と比べたら砂利も砂もあっちこっちで採れるし、ソレで道路工事進める。煉瓦は街の中だけに敷くに留めるコトにするね。ソレだけなら現状の設備でまかなえるし。
で、次は戦争の話だけど」
エマの言葉に、ハンは表情を曇らせる。
「まあ、考えなきゃいけないよな」
「陛下の本意だしね。でもコレも今、計画進めてるトコだろ?」
「せやね」
エリザが応じ、そのまま説明に入る。
「西山間部における反帝国勢力――ミェーチ軍団と豪族さんらやね――の総勢は500くらいや。一方で帝国西山間部方面軍の兵力は1000、西山間部5ヶ国の各兵力は300ずつになっとるらしいわ」
「いずれも300名なのですか?」
尋ねたクーに、エリザはうなずいて返す。
「せや。ちゅうのも、帝国さんからのお達しのせいらしいな。『300人以上兵隊増やすな』て、制限かけとるらしいわ」
「反乱が起こった場合、鎮圧を容易にするためでしょうね。1000対300なら、十分可能でしょうし」
「まあ、そう言うこっちゃ。沿岸部ん時は帝国本土から遠くてヒトがよお送れへんっちゅうのんもあったし、『賤民がなんぼ来たかて相手になるか』的なコト考えとったみたいで、ソコら辺の規制は緩かったけどな。
一方で帝国本土に近い西山間部は、がっちり規制かけてはるらしいんやけど、その規制が今回、仇になっとるな」
「確かに。対外勢力をまったく考慮していない構成ですからね」
ハンの言葉に、エマがニヤッと笑う。
「おかげで私らは随分楽できるってワケさ。でもエリザ、帝国のヤツらってまさかまだ、私らに対して対策してない感じなの?」
「やってはいはるらしいけどな。でも今までの方針からぐるっと転換しとるようなもんやから、足並みは全然揃てへんみたいやで」
「『帝国は覇権国家であり、敵国や敵勢力など一切存在しない』との考えでしたね、確か」
「ソレを慌てて、『敵国が攻めてきた』とか言い出してるんだろ? 無様もいいトコだね」
「ま、そんなこんなで、未だに沿岸部へ攻め入る算段すら付いてへんっちゅう話や。相手がまごついとるんやったら、アタシらにとっては好都合や。
さっきも言うた通り、帝国軍以外の西山間部5ヶ国の各兵力は300ずつや。コレを各個撃破する形で進めようと思とるんやけども……」
「けども?」
尋ねたエマに、エリザは肩をすくめて返す。
「まともにぶつかり合うたら、犠牲は出るわな。そんなん嫌やろ?」
「理想論だね」
「理想は大事やで。ソレに、人心掌握っちゅう観点からも重要やしな。『人殺しが征服に来よった』なんて思われたら、統治もクソも無いやろ?」
「そりゃま、そうだね」
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