「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・狐略伝 3
神様たちの話、第247話。
西山間部方面作戦。
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3.
すっかり怯んだ王たちを前に、エリザはいつも通りにニコニコと笑みを浮かべながら、話を切り出した。
「ほな早速、西山間部の侵攻作戦のお話しましょか」
「あ、女史」
と、一人がおずおずと手を挙げる。
「なんでしょ?」
「その話をする前にだな、その、さもしいと思われるかも知れんが……」
「ああ」
言わんとすることを察し、エリザはうなずいて返す。
「皆さんに提示しとった条件がホンマかどうかっちゅうコトですな。ソレは保証します。計画完遂までご飯は支給しますし、おカネも相応にお支払いします。魔術についても、計画には必須ですからな。十分な指導を約束します」
「うむ、大変ありがたい」
「他に聞いときたいコトはあります? とりあえず今んトコ無い感じでしたら、アタシからのお話を進めさせてもらいますけども」
一瞥し、誰も手を挙げないことを確認して、エリザは再度、計画の説明を始めた。
「本作戦の主眼ですけども、コレは一般に『西山間部』と言われる5ヶ国、つまりハカラ王国、レイス王国、オルトラ王国、スオミ王国、イスタス王国の各支配地域をアタシらが奪うコトにあります。
で、コレは特に留意していただきたいコトなんですけども、あくまでその5ヶ国の支配権をアタシらが奪い、代わりに統治するコトが重要であって、その国の人らを蹂躙しよう、虐殺しようなんちゅうコトはする必要はありまへんし、されても困ります」
「うん……?」
エリザの本意が今ひとつ汲み取れていないらしく、どの王たちもけげんな表情を浮かべている。それを受け、エリザはこう続けた。
「そもそもアタシら、つまり南から来た遠征隊の目的は、この邦の人らと円満かつ有効的な関係を築くコトにあります。である以上、帝国さんみたく力ずくで支配するっちゅうようなコトは考えてませんし、するつもりもありまへん。協力いただく皆さんに対しても、同様に行動していただきたいと考えとります。
ソレが嫌や、帝国と同じように他人を踏みつけて君臨したいっちゅう人がいるのであれば、協力はいりません。この場で退出していただいて結構です。ただし」
そこでエリザは笑うのをやめ、薄くにらみつけた。
「そんな人らはアタシらにとっては結局、帝国さんと同じ輩と見なしますし、同じように攻撃対象と見なすだけです。そして遠征隊の実力と実績を、いえ、アタシのコトを十分にご理解いただけとったら、ソレがどんな結末を迎えるコトになるか。ソレをよーく考えた上で、行動・発言するコトをおすすめしますで」
「う、うむ、委細承知しておる」
「安心召されよ、そのような肚は、全く無い」
「然り。心配無用である」
居並ぶ王たちが顔をこわばらせつつもうなずいたところで、エリザは元通りに笑みを浮かべる。
「であれば、問題ありまへんな。本作戦においても、必要以上の敵対はしないようにお願いします」
「と言うと?」
「相手が投降するのであれば、そのまま拿捕する方向で。敵や言うてすぐ殴る、すぐ殺すっちゅうのんは、極力無しです。もっとも、相手が徹底抗戦するっちゅう態度取ってきたら、とことんかましたってええですけどな」
「今一つ合点が行かぬ。女史は我々に結局、何をどうしろと?」
「具体策はおいおい話していきます。とにかく念頭に入れてほしいのんは、『自分たちは極悪非道の帝国なんかとちゃうぞ』と、相手に思わせるコトです。ワルモノは帝国、自分らはその反対に位置しとるんやでと、敵にも、敵の下におる人らにも、そう思わせるんです。
ソレこそが今回の作戦において、最大限の効果を発揮します。でなければ今までの戦いと何も変わりまへんし、結果も一緒です」
「うむむむむ……?」
エリザの抽象的な言葉に、王たちは一様に神妙な顔を並べるばかりだった。
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西山間部方面作戦。
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すっかり怯んだ王たちを前に、エリザはいつも通りにニコニコと笑みを浮かべながら、話を切り出した。
「ほな早速、西山間部の侵攻作戦のお話しましょか」
「あ、女史」
と、一人がおずおずと手を挙げる。
「なんでしょ?」
「その話をする前にだな、その、さもしいと思われるかも知れんが……」
「ああ」
言わんとすることを察し、エリザはうなずいて返す。
「皆さんに提示しとった条件がホンマかどうかっちゅうコトですな。ソレは保証します。計画完遂までご飯は支給しますし、おカネも相応にお支払いします。魔術についても、計画には必須ですからな。十分な指導を約束します」
「うむ、大変ありがたい」
「他に聞いときたいコトはあります? とりあえず今んトコ無い感じでしたら、アタシからのお話を進めさせてもらいますけども」
一瞥し、誰も手を挙げないことを確認して、エリザは再度、計画の説明を始めた。
「本作戦の主眼ですけども、コレは一般に『西山間部』と言われる5ヶ国、つまりハカラ王国、レイス王国、オルトラ王国、スオミ王国、イスタス王国の各支配地域をアタシらが奪うコトにあります。
で、コレは特に留意していただきたいコトなんですけども、あくまでその5ヶ国の支配権をアタシらが奪い、代わりに統治するコトが重要であって、その国の人らを蹂躙しよう、虐殺しようなんちゅうコトはする必要はありまへんし、されても困ります」
「うん……?」
エリザの本意が今ひとつ汲み取れていないらしく、どの王たちもけげんな表情を浮かべている。それを受け、エリザはこう続けた。
「そもそもアタシら、つまり南から来た遠征隊の目的は、この邦の人らと円満かつ有効的な関係を築くコトにあります。である以上、帝国さんみたく力ずくで支配するっちゅうようなコトは考えてませんし、するつもりもありまへん。協力いただく皆さんに対しても、同様に行動していただきたいと考えとります。
ソレが嫌や、帝国と同じように他人を踏みつけて君臨したいっちゅう人がいるのであれば、協力はいりません。この場で退出していただいて結構です。ただし」
そこでエリザは笑うのをやめ、薄くにらみつけた。
「そんな人らはアタシらにとっては結局、帝国さんと同じ輩と見なしますし、同じように攻撃対象と見なすだけです。そして遠征隊の実力と実績を、いえ、アタシのコトを十分にご理解いただけとったら、ソレがどんな結末を迎えるコトになるか。ソレをよーく考えた上で、行動・発言するコトをおすすめしますで」
「う、うむ、委細承知しておる」
「安心召されよ、そのような肚は、全く無い」
「然り。心配無用である」
居並ぶ王たちが顔をこわばらせつつもうなずいたところで、エリザは元通りに笑みを浮かべる。
「であれば、問題ありまへんな。本作戦においても、必要以上の敵対はしないようにお願いします」
「と言うと?」
「相手が投降するのであれば、そのまま拿捕する方向で。敵や言うてすぐ殴る、すぐ殺すっちゅうのんは、極力無しです。もっとも、相手が徹底抗戦するっちゅう態度取ってきたら、とことんかましたってええですけどな」
「今一つ合点が行かぬ。女史は我々に結局、何をどうしろと?」
「具体策はおいおい話していきます。とにかく念頭に入れてほしいのんは、『自分たちは極悪非道の帝国なんかとちゃうぞ』と、相手に思わせるコトです。ワルモノは帝国、自分らはその反対に位置しとるんやでと、敵にも、敵の下におる人らにも、そう思わせるんです。
ソレこそが今回の作戦において、最大限の効果を発揮します。でなければ今までの戦いと何も変わりまへんし、結果も一緒です」
「うむむむむ……?」
エリザの抽象的な言葉に、王たちは一様に神妙な顔を並べるばかりだった。
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