「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・狐略伝 6
神様たちの話、第250話。
奇妙な結婚式。
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6.
民兵を召集するため、ハカラ王国の正規兵らは農村の一つを訪ねていた。ところが――。
「ん? 祭り……か?」
村の広場から音楽と人の声が聞こえてきたため、彼らはそちらへ向かう。
「よーし、もっかい乾杯だー!」
「おー!」
広場ではめかし込んだ男女を囲むように、村の者たちが騒いでいる。
「結婚式の最中、と言ったところか?」
「みたいだな」
「参ったなぁ。声、掛け辛いぜ」
「ああ……」
間の悪いところに出くわしたと、兵士たちは互いに顔を見合わせ、苦笑する。ところが――。
「……待て。あの新郎、なんかおかしくないか?」
「えっ?」
言われて確認してみると、新郎には熊の耳が付いており、明らかに村の者ではない。
「と言うことは沿岸部民か、……まさか、豪族?」
「ま、まさか! そんなわけあるかよ!?」
「王国の者と豪族が結婚なんて、あるわけ無いだろ?」
「だ、……だよなぁ?」
どう動けばいいか分からず、兵士たちはもう一度、互いに顔を見合わせる。と――。
「あら、どないしはりました?」
彼らの背後から、声をかけてくる者がいる。振り返るとそこには、やはり王国の者では無い、いや、この邦の者ですら無さそうな、狐の耳と尻尾を持った女性が立っていた。
「な、……ん?」
「お前は……?」
「今日の結婚式を企画しましてん。いやね、新郎さんも新婦さんもオクテっちゅうか、なーかなか一緒になろうとしはらへんって周りがやいやい言うてたらしいんですわ。で、新郎さんからどないしたらええやろって相談されましてな、『せやったらちゃっちゃと結婚しはりよし』っちゅうて、アタシが色々手ぇ回したったんですわ」
「い、いや、そんなことは、聞いていない」
「お前は、誰だと、聞いてるんだ」
そう尋ねられ、相手はようやく答える。
「エリザ・ゴールドマンと申します。ちょと南の方で商売さしてもろてます。ところで皆さん、ハカラ王国の兵隊さんやとお見受けしますけども」
「あ、ああ。急用で、民兵を召集しようと」
「あらー、そら大変ですなぁ」
エリザはあっけらかんと返し、ニコニコと笑みを浮かべる。
「でもそんなに焦らんでええでしょ? 皆さんも、良ければ式に参加したって下さい。お客さんは多い方が楽しいですからな」
思いもよらない提案を受け、兵士たちは面食らう。
「は……? な、何を言うんだ?」
「王国の一大事なのだぞ!」
「こんなところでゆっくりしている暇など……!」
「あら、さいでっか。ソレ、王国が占拠されたとか、そう言うお話です?」
エリザの言葉に、兵士たちの顔が一様にこわばる。
「なに……!?」
「貴様、何故それを!?」
「ソレもアタシが企画してますねん。あ、ソコら辺も聞きたかったら、詳しくお話さしてもらいますけども」
「ふ、……ふざけるなッ!」
兵士たちは剣を抜き、エリザに向ける。
「貴様が襲撃を計画しただと!?」
「あんまりそう言う物騒なもん、アタシに向けんといて欲しいんですけどな」
「答えろ!」
「ええ加減にせえへんと、痛い目遭うてもらいますよ?」
そう返し、肩をすくめるエリザに、兵士の一人が襲い掛かる。
「貴様あッ!」
「あーもう」
が、次の瞬間、兵士はばん、と何かが破裂するような音と共に、その場から弾き飛ばされた。
「うあっ……!?」
「せやから痛い目見るて言うてますのに」
何が起こったのか分からない間に、一瞬で倒された仲間を目にし、兵士たちの顔から血の気が引く。
「で、皆さんどないしはります? まだアタシにちょっかいかけはります? ソレともご飯一緒に食べます?」
「……う、うう」
兵士たちは完全に戦意を喪失し、剣を収める。それを受けて、エリザは彼らに手招きした。
「とりあえず、そんなゴツい格好で参加されたら場違いですわ。礼服持って来てますから、そっちに着替えて下さい」
「わ、わか、った」
彼らは反論一つできず、エリザの言うことに従った。
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民兵を召集するため、ハカラ王国の正規兵らは農村の一つを訪ねていた。ところが――。
「ん? 祭り……か?」
村の広場から音楽と人の声が聞こえてきたため、彼らはそちらへ向かう。
「よーし、もっかい乾杯だー!」
「おー!」
広場ではめかし込んだ男女を囲むように、村の者たちが騒いでいる。
「結婚式の最中、と言ったところか?」
「みたいだな」
「参ったなぁ。声、掛け辛いぜ」
「ああ……」
間の悪いところに出くわしたと、兵士たちは互いに顔を見合わせ、苦笑する。ところが――。
「……待て。あの新郎、なんかおかしくないか?」
「えっ?」
言われて確認してみると、新郎には熊の耳が付いており、明らかに村の者ではない。
「と言うことは沿岸部民か、……まさか、豪族?」
「ま、まさか! そんなわけあるかよ!?」
「王国の者と豪族が結婚なんて、あるわけ無いだろ?」
「だ、……だよなぁ?」
どう動けばいいか分からず、兵士たちはもう一度、互いに顔を見合わせる。と――。
「あら、どないしはりました?」
彼らの背後から、声をかけてくる者がいる。振り返るとそこには、やはり王国の者では無い、いや、この邦の者ですら無さそうな、狐の耳と尻尾を持った女性が立っていた。
「な、……ん?」
「お前は……?」
「今日の結婚式を企画しましてん。いやね、新郎さんも新婦さんもオクテっちゅうか、なーかなか一緒になろうとしはらへんって周りがやいやい言うてたらしいんですわ。で、新郎さんからどないしたらええやろって相談されましてな、『せやったらちゃっちゃと結婚しはりよし』っちゅうて、アタシが色々手ぇ回したったんですわ」
「い、いや、そんなことは、聞いていない」
「お前は、誰だと、聞いてるんだ」
そう尋ねられ、相手はようやく答える。
「エリザ・ゴールドマンと申します。ちょと南の方で商売さしてもろてます。ところで皆さん、ハカラ王国の兵隊さんやとお見受けしますけども」
「あ、ああ。急用で、民兵を召集しようと」
「あらー、そら大変ですなぁ」
エリザはあっけらかんと返し、ニコニコと笑みを浮かべる。
「でもそんなに焦らんでええでしょ? 皆さんも、良ければ式に参加したって下さい。お客さんは多い方が楽しいですからな」
思いもよらない提案を受け、兵士たちは面食らう。
「は……? な、何を言うんだ?」
「王国の一大事なのだぞ!」
「こんなところでゆっくりしている暇など……!」
「あら、さいでっか。ソレ、王国が占拠されたとか、そう言うお話です?」
エリザの言葉に、兵士たちの顔が一様にこわばる。
「なに……!?」
「貴様、何故それを!?」
「ソレもアタシが企画してますねん。あ、ソコら辺も聞きたかったら、詳しくお話さしてもらいますけども」
「ふ、……ふざけるなッ!」
兵士たちは剣を抜き、エリザに向ける。
「貴様が襲撃を計画しただと!?」
「あんまりそう言う物騒なもん、アタシに向けんといて欲しいんですけどな」
「答えろ!」
「ええ加減にせえへんと、痛い目遭うてもらいますよ?」
そう返し、肩をすくめるエリザに、兵士の一人が襲い掛かる。
「貴様あッ!」
「あーもう」
が、次の瞬間、兵士はばん、と何かが破裂するような音と共に、その場から弾き飛ばされた。
「うあっ……!?」
「せやから痛い目見るて言うてますのに」
何が起こったのか分からない間に、一瞬で倒された仲間を目にし、兵士たちの顔から血の気が引く。
「で、皆さんどないしはります? まだアタシにちょっかいかけはります? ソレともご飯一緒に食べます?」
「……う、うう」
兵士たちは完全に戦意を喪失し、剣を収める。それを受けて、エリザは彼らに手招きした。
「とりあえず、そんなゴツい格好で参加されたら場違いですわ。礼服持って来てますから、そっちに着替えて下さい」
「わ、わか、った」
彼らは反論一つできず、エリザの言うことに従った。
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250話到達。「琥珀暁」も大分長いこと続けてます。
次回作の構想も温まりつつありますし、
他にもやりたいことがあれこれありますので、
来年辺りで完結させたいと思っています。
とは言え、着地点がまだちゃんと定まってない状態なので、
まとまるまでにまだ時間を要しますが。
10月6日はブログの開設記念日です。
今年は過ぎ去る前に記念日のことを思い出しました。
何かしなきゃなーとは思っています。
今のところ思い付くのはイラストかなぁ。
250話到達。「琥珀暁」も大分長いこと続けてます。
次回作の構想も温まりつつありますし、
他にもやりたいことがあれこれありますので、
来年辺りで完結させたいと思っています。
とは言え、着地点がまだちゃんと定まってない状態なので、
まとまるまでにまだ時間を要しますが。
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今年は過ぎ去る前に記念日のことを思い出しました。
何かしなきゃなーとは思っています。
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