「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・狐略伝 8
神様たちの話、第252話。
西山間部戦、前半戦終了。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
8.
エリザが仕掛けた作戦は、以下の通りだった。
まずミェーチ軍団と豪族らを共闘させることで、彼女は500を超える軍勢を、西山間部に確保することができた。これと並行し、標的国の農村部に対して人心掌握策を施し、村民と民兵を帝国から離反させるとともに、都市部へ侵入しても怪しまれない伏兵を育成したのである。
これと同様の作戦を、エリザはハカラ王国だけではなく、レイス王国、そしてオルトラ王国にも仕掛けており、いずれも成功を収めていた。これにより、帝国は西山間部における支配圏の半分を、その状況も把握していない内に失うこととなったのである。
「まだ帝国に動きは無いそうだ。どうやら気付いておらんようである」
「ありがとさんです」
ミェーチからの報告を受け、エリザはにこりと微笑む。
「でも時間の問題ですやろな。将軍さんも拘束したままですし」
「然り。半月や一月程度なら多少ばかり長居したとも取られるだろうが、それ以上経てば流石に怪しまれるだろう。どれだけ遅くともその頃には、帝国も状況を察するであろうな」
「ほな、ちょと急いで次の仕掛けせなあきませんな」
エリザの言葉に、ミェーチは目を丸くする。
「次?」
「このまま制圧した国に陣取るだけやったら、帝国さんがまっすぐ攻めてきはるやないですか。
3ヶ国の制圧と抱き込みはでけましたし、おかげで兵隊さんも900人増えましたけども、ソレでもミェーチ軍団と豪族連合の500と合わせて、1400ですやろ? 対する帝国さんの、西山間部勢力の総数は……」
「スオミ王国とイスタス王国の300ずつ、ソレから西山間部方面軍の1000で、合計1600っスね」
シェロの回答に、エリザはうんうんとうなずく。
「そう、数の上ではほぼ互角と言えば互角ですわ。でも正面衝突となったら、どんだけ犠牲が出ますやろな?」
「相当数に上るだろう。こちらも、向こうも」
「ただ、向こうは東山間部の帝国本国軍がすぐ後ろにいてはりますやろ? ソレまで引っ張って来られたら、状況は最悪になりますで」
「仮にお互い半減したとして、こっちは700、西山間部勢力は800。で、帝国本国軍が3000って話っスから……」
「……えーと」
指折り数え、ミェーチが渋い顔をする。
「700対2000くらい、……であるか?」
「3800っス。なんで減るんスか」
「失敬。と言うことは3倍、いや、4倍であるか」
「ほぼ5倍っス」
「おぅふ」
ほおを真っ赤にしつつも、ミェーチは真面目な顔で話を続ける。
「なるほど。正面決戦となれば、こちらが圧倒的に不利であるな。だが遠征隊の600、いや、増員したから1000? くらいであったか、それを参加させれば……」
「あきませんな」
ミェーチの意見を、エリザはぴしゃりとはねつける。
「遠征隊は山の下です。ココまで来さすには峠道登らなあきません。一方で帝国本国軍は湖をぐるっと回った向こう岸。どっちの行軍が早いですやろな?」
「むむむ、確かに。しかし魔術とやらでどうにか……」
「ソコまで万能やありまへん。なんでもでけるんやったら、ハナから東山間部、帝国首都で決戦してますわ」
「……さもありなん」
「ちゅうワケで、西山間部勢力をこのまま北上させるワケには行きません。と言って、スオミ王国とイスタス王国にも同じ手を使うワケにも行きませんわ。そら3ヶ国で封鎖線敷いて人の行き来を止めてましたから、アタシらが何してたとかは知られてないでしょうけども」
「あれだけ仰々しく封鎖していたのだ。それ自体がうわさに上っているだろう」
「となると、警戒するヤツも出てくるでしょうね。『農村部で変なコトしてるヤツがいるぞ』だとか、『街の周りに豪族みたいなのがウロウロしてるぞ』だとか」
「そう言うコトですわ。ココからは別の手で、攻めてかなあきません」
琥珀暁・狐略伝 終
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エリザが仕掛けた作戦は、以下の通りだった。
まずミェーチ軍団と豪族らを共闘させることで、彼女は500を超える軍勢を、西山間部に確保することができた。これと並行し、標的国の農村部に対して人心掌握策を施し、村民と民兵を帝国から離反させるとともに、都市部へ侵入しても怪しまれない伏兵を育成したのである。
これと同様の作戦を、エリザはハカラ王国だけではなく、レイス王国、そしてオルトラ王国にも仕掛けており、いずれも成功を収めていた。これにより、帝国は西山間部における支配圏の半分を、その状況も把握していない内に失うこととなったのである。
「まだ帝国に動きは無いそうだ。どうやら気付いておらんようである」
「ありがとさんです」
ミェーチからの報告を受け、エリザはにこりと微笑む。
「でも時間の問題ですやろな。将軍さんも拘束したままですし」
「然り。半月や一月程度なら多少ばかり長居したとも取られるだろうが、それ以上経てば流石に怪しまれるだろう。どれだけ遅くともその頃には、帝国も状況を察するであろうな」
「ほな、ちょと急いで次の仕掛けせなあきませんな」
エリザの言葉に、ミェーチは目を丸くする。
「次?」
「このまま制圧した国に陣取るだけやったら、帝国さんがまっすぐ攻めてきはるやないですか。
3ヶ国の制圧と抱き込みはでけましたし、おかげで兵隊さんも900人増えましたけども、ソレでもミェーチ軍団と豪族連合の500と合わせて、1400ですやろ? 対する帝国さんの、西山間部勢力の総数は……」
「スオミ王国とイスタス王国の300ずつ、ソレから西山間部方面軍の1000で、合計1600っスね」
シェロの回答に、エリザはうんうんとうなずく。
「そう、数の上ではほぼ互角と言えば互角ですわ。でも正面衝突となったら、どんだけ犠牲が出ますやろな?」
「相当数に上るだろう。こちらも、向こうも」
「ただ、向こうは東山間部の帝国本国軍がすぐ後ろにいてはりますやろ? ソレまで引っ張って来られたら、状況は最悪になりますで」
「仮にお互い半減したとして、こっちは700、西山間部勢力は800。で、帝国本国軍が3000って話っスから……」
「……えーと」
指折り数え、ミェーチが渋い顔をする。
「700対2000くらい、……であるか?」
「3800っス。なんで減るんスか」
「失敬。と言うことは3倍、いや、4倍であるか」
「ほぼ5倍っス」
「おぅふ」
ほおを真っ赤にしつつも、ミェーチは真面目な顔で話を続ける。
「なるほど。正面決戦となれば、こちらが圧倒的に不利であるな。だが遠征隊の600、いや、増員したから1000? くらいであったか、それを参加させれば……」
「あきませんな」
ミェーチの意見を、エリザはぴしゃりとはねつける。
「遠征隊は山の下です。ココまで来さすには峠道登らなあきません。一方で帝国本国軍は湖をぐるっと回った向こう岸。どっちの行軍が早いですやろな?」
「むむむ、確かに。しかし魔術とやらでどうにか……」
「ソコまで万能やありまへん。なんでもでけるんやったら、ハナから東山間部、帝国首都で決戦してますわ」
「……さもありなん」
「ちゅうワケで、西山間部勢力をこのまま北上させるワケには行きません。と言って、スオミ王国とイスタス王国にも同じ手を使うワケにも行きませんわ。そら3ヶ国で封鎖線敷いて人の行き来を止めてましたから、アタシらが何してたとかは知られてないでしょうけども」
「あれだけ仰々しく封鎖していたのだ。それ自体がうわさに上っているだろう」
「となると、警戒するヤツも出てくるでしょうね。『農村部で変なコトしてるヤツがいるぞ』だとか、『街の周りに豪族みたいなのがウロウロしてるぞ』だとか」
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