「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・錯綜録 7
晴奈の話、第244話。
大イベントの始まり。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
事件から、一ヵ月後。
チェイサー商会に、晴奈たちが集められた。仲良くなったシリンとフェリオ、まだギブスを着けたままのエランも一緒に詰めている。
ピースとボーダが机の前に立ち、ソファに座る晴奈たちに厳かな声で発表した。
「さて、皆。世界に誇るゴールドコーストの大イベント、あのエリザリーグが今期も開催される。
519年・上半期エリザリーグ! 今回は非常に、大荒れとなることが予想される。何しろ前回のエリザリーグで『キング』を一蹴したウィアードをはじめとして、シュンジ・ナラサキ、シリン・ミーシャなど、名うての豪傑、女傑が揃っている。
この4人は既に、次のエリザリーグに進出することがほぼ内定している。残る一人は一体誰になるのか? これもまた、大注目の賭けになっていた。
そして大方の予想通り、本命中の本命が先程選出され、正式に出場選手5名が決まった」
「まず、『キング』ピサロ・クラウン。
続いてロウ・ウィアード、シリン・ミーシャ、シュンジ・ナラサキ。……そして、セイナ・コウ。
おめでとう、セイナ! 出場決まったわよ!」
ピースたちの発表が終わり、晴奈とシリンは盛大な拍手を受けた。
「やったじゃん、晴奈!」
「連続出場か、頑張れよシリン!」
「二人とも頑張ってくださいませ」
「コウ先生、応援してるっス!」
「シリンさんも応援してますよ!」
周りの声援を受け、晴奈とシリンは顔を赤くしながらそれに応えた。
「うん、ウチ頑張るわ。今度こそ優勝せなな!」
「ここまで来てしまったら、やりきるしかあるまい。『女神』の弟子の力を見せてやる!」
二人はいつになく、嬉しそうにしていた。
ロウのところにも、この報せは届いた。
「そっか、ナラサキさんとセイナが加わったか……。前よりもっと、苦戦するかも知れねーな」
「大丈夫よ、お父さんなら」
ロウの横に集まり案内状を見ていた子供たちが、ロウを応援する。
「うんうん、サンセツコンも手に入れたし」
「ぜーったい、優勝だよ!」
子供たちの声援に、ロウの顔がほころぶ。
「はは……、そうだな。絶対優勝して、孤児院建てなくちゃ」
「頑張ってくださいね、あなた」
後ろからシルビアが、ぎゅっとロウの肩を抱いてきた。
「うん……。そだな、頑張るわ」
楢崎も滞在している宿で、案内状を手にしていた。
「そうか……。とうとうエリザリーグまで来てしまったか。うーん」
元々息子を誘拐した組織を探すついでに参加したものだったので、楢崎は少し複雑な気分だった。
「……まあ、しかし。これまで僕が戦ってきた人たちも皆、ここに来たかったろう。その人たちの意志を無下にしちゃいけないしな。精一杯、頑張ろう」
楢崎もまた、エリザリーグに向けて闘志を燃やし始めた。
心中穏やかでないのは、クラウンである。
「くそっ……! よりによってこの組み合わせかよ!」
「落ち着いてください、ボス」
「落ち着けだぁ? ふざけんな!」
なだめようとした黒服が、鳩尾に鉄拳を食らう。
「ぐふ……」
「落ち着いていられるかってんだ! もう俺は限界来てるんだぞ! だのに、この4人を相手にしなきゃいけねえんだぞ!?」
(あーあー、また駄々っ子だよ、クラウンの奴)
一構成員として遠巻きに見ているバートは、クラウンの暴れっぷりを見て呆れていた。
(でも、まだ静観しなきゃな。いくら証拠を見つけても、あのキングのことだ。無理矢理拘束しようとしたら、何をしでかすか分かったもんじゃない。
それよりもエリザリーグで疲労しきった頃を狙って囲んだ方が、被害が少なくて済む。それにエリザリーグの出場選手だし、今捕まえると九尾闘技場からクレーム付くからなぁ。
ま、でももし『あの組織』に売ろうとしても、売買成立前に俺たちが邪魔すりゃ、仕切り直さざるを得ない。その点で言えば、誘拐された人たちはまだ、安全だ。一応、大丈夫って言えば大丈夫、とは言える。
でもな、ジュリア。こっちもそろそろ限界だぞ。一向に誘拐された人たちが閉じ込められてる場所は見つからないし、取引失敗の度にキングの怒りは膨れ上がる一方だ。次爆発したら、何をしでかすか……!)
「くそおあぁー!」
怒り狂い、吠えるクラウンの姿を見て、バートは不安でならなかった。
複雑に意志、計画、事情が絡み合いながら、今期のエリザリーグが始まろうとしていた。
蒼天剣 錯綜録 終
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事件から、一ヵ月後。
チェイサー商会に、晴奈たちが集められた。仲良くなったシリンとフェリオ、まだギブスを着けたままのエランも一緒に詰めている。
ピースとボーダが机の前に立ち、ソファに座る晴奈たちに厳かな声で発表した。
「さて、皆。世界に誇るゴールドコーストの大イベント、あのエリザリーグが今期も開催される。
519年・上半期エリザリーグ! 今回は非常に、大荒れとなることが予想される。何しろ前回のエリザリーグで『キング』を一蹴したウィアードをはじめとして、シュンジ・ナラサキ、シリン・ミーシャなど、名うての豪傑、女傑が揃っている。
この4人は既に、次のエリザリーグに進出することがほぼ内定している。残る一人は一体誰になるのか? これもまた、大注目の賭けになっていた。
そして大方の予想通り、本命中の本命が先程選出され、正式に出場選手5名が決まった」
「まず、『キング』ピサロ・クラウン。
続いてロウ・ウィアード、シリン・ミーシャ、シュンジ・ナラサキ。……そして、セイナ・コウ。
おめでとう、セイナ! 出場決まったわよ!」
ピースたちの発表が終わり、晴奈とシリンは盛大な拍手を受けた。
「やったじゃん、晴奈!」
「連続出場か、頑張れよシリン!」
「二人とも頑張ってくださいませ」
「コウ先生、応援してるっス!」
「シリンさんも応援してますよ!」
周りの声援を受け、晴奈とシリンは顔を赤くしながらそれに応えた。
「うん、ウチ頑張るわ。今度こそ優勝せなな!」
「ここまで来てしまったら、やりきるしかあるまい。『女神』の弟子の力を見せてやる!」
二人はいつになく、嬉しそうにしていた。
ロウのところにも、この報せは届いた。
「そっか、ナラサキさんとセイナが加わったか……。前よりもっと、苦戦するかも知れねーな」
「大丈夫よ、お父さんなら」
ロウの横に集まり案内状を見ていた子供たちが、ロウを応援する。
「うんうん、サンセツコンも手に入れたし」
「ぜーったい、優勝だよ!」
子供たちの声援に、ロウの顔がほころぶ。
「はは……、そうだな。絶対優勝して、孤児院建てなくちゃ」
「頑張ってくださいね、あなた」
後ろからシルビアが、ぎゅっとロウの肩を抱いてきた。
「うん……。そだな、頑張るわ」
楢崎も滞在している宿で、案内状を手にしていた。
「そうか……。とうとうエリザリーグまで来てしまったか。うーん」
元々息子を誘拐した組織を探すついでに参加したものだったので、楢崎は少し複雑な気分だった。
「……まあ、しかし。これまで僕が戦ってきた人たちも皆、ここに来たかったろう。その人たちの意志を無下にしちゃいけないしな。精一杯、頑張ろう」
楢崎もまた、エリザリーグに向けて闘志を燃やし始めた。
心中穏やかでないのは、クラウンである。
「くそっ……! よりによってこの組み合わせかよ!」
「落ち着いてください、ボス」
「落ち着けだぁ? ふざけんな!」
なだめようとした黒服が、鳩尾に鉄拳を食らう。
「ぐふ……」
「落ち着いていられるかってんだ! もう俺は限界来てるんだぞ! だのに、この4人を相手にしなきゃいけねえんだぞ!?」
(あーあー、また駄々っ子だよ、クラウンの奴)
一構成員として遠巻きに見ているバートは、クラウンの暴れっぷりを見て呆れていた。
(でも、まだ静観しなきゃな。いくら証拠を見つけても、あのキングのことだ。無理矢理拘束しようとしたら、何をしでかすか分かったもんじゃない。
それよりもエリザリーグで疲労しきった頃を狙って囲んだ方が、被害が少なくて済む。それにエリザリーグの出場選手だし、今捕まえると九尾闘技場からクレーム付くからなぁ。
ま、でももし『あの組織』に売ろうとしても、売買成立前に俺たちが邪魔すりゃ、仕切り直さざるを得ない。その点で言えば、誘拐された人たちはまだ、安全だ。一応、大丈夫って言えば大丈夫、とは言える。
でもな、ジュリア。こっちもそろそろ限界だぞ。一向に誘拐された人たちが閉じ込められてる場所は見つからないし、取引失敗の度にキングの怒りは膨れ上がる一方だ。次爆発したら、何をしでかすか……!)
「くそおあぁー!」
怒り狂い、吠えるクラウンの姿を見て、バートは不安でならなかった。
複雑に意志、計画、事情が絡み合いながら、今期のエリザリーグが始まろうとしていた。
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今日の旅岡さん

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NoTitle
結構巡る人物像ですね。
それぞれ思惑を持って闘技場には参加するものですけど・・・まあ、大半の理由はお金や名誉になったりしますけどね。
それが闘技場の醍醐味ですね、古来からの娯楽の一つですね。コロシアムから派生してボクシングやフェンシングなど・・・・。
メールのほうは届きましたでしょうか?期間があるのでよろしくお願いします。
それぞれ思惑を持って闘技場には参加するものですけど・・・まあ、大半の理由はお金や名誉になったりしますけどね。
それが闘技場の醍醐味ですね、古来からの娯楽の一つですね。コロシアムから派生してボクシングやフェンシングなど・・・・。
メールのほうは届きましたでしょうか?期間があるのでよろしくお願いします。
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NoTitle
「蒼天剣」中でも非常にファンタジーらしく、また、リアリティのある話になったと思います。
メールとファイル、受け取りました。
かっこいいですね、雪乃。