黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第5部

    琥珀暁・乱心伝 2

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    神様たちの話、第254話。
    正論でボコ殴り。

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    2.
     しんと静まり返り、冷え切った卓の様子に構わず、エマは話を続ける。
    「ソレからさ、ソコのお二人さん」
     声をかけられ、ビートとマリアは慌てて顔を上げる。
    「はっ、はい?」
    「なんでしょ……」
    「なんでしょ、じゃないね。君ら、なんでココにいるね?」
    「え?」
    「なんでって、ご飯一緒に食べようって尉官、や、シモン尉官が」
     答えかけたマリアを、エマがギリッとにらむ。
    「私が聞いてんのはそうじゃないね。君らが常からこのハンニバル・シモン尉官殿と行動してるのは何のためだって聞いてんの、私ゃ」
    「や、それは、職務上の必要からで」
    「はー? 職務上の必要ねぇ?」
     バン、と卓を叩き、エマは声を荒げてマリアに詰問する。
    「その職務って何さ? こうしてコイツの愚痴聞き流すコト? 隊のカネで上手いメシ食べてレポートするコト? 違うだろ? コイツの行動に不足や不備が無いよう、補佐・補足するコトじゃないの?」
    「そ、そう、です」
    「じゃあ今君らがやってんのは何だよ? コイツが店のド真ん中でべちゃくちゃべちゃくちゃクソみたいな愚痴垂れ流してんのを見ようともしないで、『コレ美味しいねー』『もっかい食べよっかー』ってきゃあきゃあ楽しくおしゃべりして、まったく御大層な御身分でございますねっつってんだよ、私。そんなコトも分かんないかね? で、ココにいる意味聞いたら『ご飯食べに誘われましたー』って、君はアホか? ご飯食べんのが君の仕事じゃ無いだろ?」
    「す、……すみません、ソーン尉官。軽率でした」
     マリアも顔を青くし、深々と頭を下げる。
    「あとさー、ソコのお姫様」
     エマの口撃が、続いてクーにも向けられる。
    「ひゃいっ!?」
    「今、コイツに酒呑まして潰そうとしたね?」
    「そ、そんなことは」
    「したね?」
    「……は、はい」
    「ソレが君のやり方? コイツのアホみたいな愚痴を真面目に聞かない、ほっとく、果ては無理矢理酔い潰させて結論うやむやにしてまた明日、ってか? コイツらがアホなら君はろくでなしだね」
    「ろ、ろくっ!?」
     真っ向から罵倒され、クーの顔に一瞬、朱が差す。だがエマは怯むどころか、その様子を「はっ」と鼻で笑った。
    「なに? ろくでなしって自覚無いね? だとしたら君はろくでなしの上に愚か者だね。仮にもコイツは隊長で、君はお姫様だよね? だったら両方とも、ソレらしくカッコつけろってんだね。コイツが公の場で隊長らしからぬ下品なコト言い出したら、きっちり諌めるのが良識と地位のある人間のやるコトじゃないね? ソレをお酒無理矢理呑ませて潰すって、見下げ果てた品性の無さだね。お姫様が聞いて呆れるってもんだね。しかもソレをごまかす? 自分のやったコトに責任持てないってんじゃ、愚か者って言われても仕方無いって思わないね? ね? どうなのよ、お姫様?」
    「そ、れは……」
     きつい言葉を立て続けにぶつけられ、クーの目に涙が浮かぶ。それを見て、エマは更に声を荒げた。
    「なに? 親でも死んだの? なーんでこの程度で泣き出すね? ソレともカワイイ女の子だから、泣いたらごまかせるって? 困ったら解決せず片っ端からごまかすのが、君のやり方? おーおー、狡い女だねぇ。重ね重ねろくでなしでやんの」
     追い打ちを掛けられ、いよいよクーは泣き出してしまった。
    「ひぐっ……ひぐぅ……」
    「まったくさ、君ら何しにココに来てんのかって話だね。ちっとは自分のやってるコト、ちゃんと省みたらどうだね。ねえ、尉官殿?」
     エマは傍らに置いていた酒瓶を手に立ち上がり、ハンの頭にバシャバシャと酒を浴びせた。
    「ぐっ……」
    「ぐうの音もマトモに出せないね? 他人にケチつける前に、自分をちゃんと躾けろっての。
     じゃ、今日はこの辺で。じゃーね」
     言うだけ言って、エマは金を卓に置き、そのまま店を出て行った。
    「……あ、と」
    「い、……尉官?」
     髪からポタポタと酒を垂らしたまま、呆然とした顔で固まっているハンに、ビートとマリアが声をかける。
    「ひっく、ひっく、……ハン?」
     クーもグスグスと鼻を鳴らしつつ、心配そうに声をかけたところで、ハンが真っ青な顔をしたまま、すっと立ち上がった。
    「俺も、今日はこれで帰る。……悪いな。金は俺が払っておく。……おやすみ」
    「あっ、……はい」
    「お、おやすみなさい」
     残された3人は顔を見合わせたが、誰一人、何も言えないでいる。
     やがて、卓にこぼれた酒が乾き始めたところで、ビートが下を向き、ぽつりとつぶやいた。
    「……ひどいとは、思いますけど、でも、……何も言い返せませんでした」
    「うん……」
    「……わたくし、ぐす、帰り、ます」
     クーが泣きじゃくったまま、席を立つ。残った2人も、無言でその場を後にした。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    説教臭いことを言ってしまうようですが――「正論」と言う話法は、
    間違った理論を元に動く人間を諭すために使われるものであって、
    決して、相手に有無を言わせず完膚無きまでにブチのめし、
    我を押し通すために使うべきものではありません。

    正論は、文字通り、正しい論理です。正しいだけに、反論ができない。
    でも、正論で相手をボコボコにすると言う行為は、
    相手に馬乗りになり、抵抗できなくした上で、
    一方的に殴りつけていることと、何が違うのか。
    そんな暴力的行為に圧迫感や威圧感、強制力を感じはしても、
    「正義」を感じる人は、決していないでしょう。

    今日の話でエマを正義と思う人間が、決していないように。




    ああ、またひどい文章を書いてしまった。
    できるならこんなブラック企業のクソ上司みたいな説教じゃなく、
    女子高生がタピオカミルクティ片手にダラダラおしゃべりするような
    かるーい話が書きたい……。
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