「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・乱心伝 4
神様たちの話、第256話。
イワしたるッ!
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4.
強い揺れと爆発音が城中に伝わり、すぐに騒ぎになる。
「今の何? 地震?」
「いや、なんかドカーンって」
「爆発か!? どこだ!?」
その騒ぎをほのかに耳にしつつも、エリザは魔杖をなお、エマに構えたままでいた。
「コレも防ぎよるか」
「ガチって、本気でガチってコト? そりゃまあ、一瞬びっくりしたけどもね。でもコレっぽっちじゃねぇ。腕が鈍ってんじゃないね?」
攻撃魔術が直撃したはずのエマは――机こそ粉微塵に吹き飛んだものの――平然と椅子に座ったままでいた。
それでも、ようやくエマは立ち上がり、懐から短い魔杖を取り出した。
「ま、マジだってんなら、私もマジで……」「フン」
が、取り出したその瞬間、エリザはエマへ向かって駆け出し、彼女の顔を魔杖で思い切り、横殴りに引っぱたいた。
「うごぁ!?」
「相手の技に同じ技で対抗っちゅうのんは、その技に自信あるヤツのやるコトやな」
姿勢を崩し、中腰になったエマを、エリザはさらに打ち据える。
「ぐふっ!?」
「しかも余裕綽々気取っとるヤツほど、ダラダラダラダラのんきにおしゃべりしよる。どこかの誰かさんみたいになぁ?」
「て……っめ……」
起き上がりかけたエマの頭を、エリザはもう一度、ごちんと音を立てて殴りつけた。
「はう……っ」
ぐるんとエマの目がひっくり返り、そのままどさりと倒れて気絶する。動かなくなったことを確認し、エリザは彼女の腰からハンカチを抜き取り、耳から垂れていた血を拭き取った。
「ほんで技に自信あるヤツほど、その技でイワせられると思とるねんな。せやから真正面から殴り掛かられて、なんもでけへんっちゅうワケや。ボケが」
と――吹き飛んだ扉の向こうから、ハンが血相を変えて飛び込んで来た。
「え、エリザさん!? これは一体!?」
「オハナシしとったんや。あとな、ハンくん」
エリザはハンカチをエマの頭に投げ捨て、ハンに向き直る。
「上長への反抗と素行不良、および軍規攪乱(ぐんきこうらん)っちゅうコトで、コイツ懲罰房送りな」
「は……!? いきなり何を言うんですか!?」
「おかしないやろ? 隊長のアンタに酒ブチかましよった上、副隊長のアタシにもアレやコレや減らず口叩いてけなしよった。話聞く限りやと、クーちゃんも泣かしよったみたいやしな。アタシら3人、上長やろ? 全員にツバ吐いといて、ソレが反抗やないワケ無いやろ。しかもコイツは隊でも一応の地位を与えられとる。ソレがコレやで? 放っといたら城ん中の空気がめちゃめちゃになるんは目に見えとる。軍規攪乱っちゅう名目は十分通るやろ。ソレで、ええな?」
「い、いや、しかし」
「しかしもかかしもあるかいな。早よ連れて行き」
「……分かりました」
その後、正式にエマの処罰が決定され、彼女には無期限の拘束が課されるとともに、彼女の持つ権限は停止され、ハンに移管された。
「どう言うコトか説明してもらわなあきませんな」
エリザ、ハン、クーの3人はゼロ、そしてゲートに連絡を取り、エマの素行不良を報告した。
《どう言う……って、こっちが聞きたいくらいだ。一体何故、彼女がそんなことをしたのか。正直に言って、私もさっぱり分からないよ》
困り果てたゼロの声に、ゲートも続く。
《俺も同意見だ。こっちにいる時は――まあ、そりゃオテロの件とかあったけどさ――そんなメチャクチャなことするような人間じゃなかった。それは確かだ。俺が保証する。だからこそ、信じてそっちに送ったんだ》
《ともかく、何か行き違いがあったか、それとも私たちも把握できていない要素があったか、……問題点は分からないが、こちらで把握していた分には、問題の無い人間だったはずなんだ》
「さいでっか」
明らかに納得していない顔をしつつ、エリザがこう返す。
「ま、直近の問題としてはですな、シモン班の欠員埋めるために入ってきたエマちゃんがこうなりましたから、また空きが出たワケですわ。こっちで選ばせてもろてええですな?」
《あ、いや、それは》
言い淀むゼロに、エリザは押し込んで行く。
「ソレともまたそっちから送ります? 今度はどんな人材です? ソレは今度こそ納得行く優秀で完全無欠な人材っちゅうワケですやんな? ほんで、その移送はすぐでけるんですか? エマちゃんのおかげで、去年からずーっと班編成に穴空いたままになるんですけども、また向こう2ヶ月、3ヶ月、ハンくん片手落ちの状態で待っとれっちゅうコトですか? この間もよお手が回らんかったのに、まだ待たせとく感じです?」
《……分かった。そっちで決めていい。これ以上穴を空けたままは、確かに、うん、まずいよね》
諦めに満ちた声色で、ゼロが答える。それを聞いて、エリザはハンとクーにニヤッと笑いかけつつ、平然とした声で応じた。
「どーも。ほな、そうさせてもらいますわ」
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4.
強い揺れと爆発音が城中に伝わり、すぐに騒ぎになる。
「今の何? 地震?」
「いや、なんかドカーンって」
「爆発か!? どこだ!?」
その騒ぎをほのかに耳にしつつも、エリザは魔杖をなお、エマに構えたままでいた。
「コレも防ぎよるか」
「ガチって、本気でガチってコト? そりゃまあ、一瞬びっくりしたけどもね。でもコレっぽっちじゃねぇ。腕が鈍ってんじゃないね?」
攻撃魔術が直撃したはずのエマは――机こそ粉微塵に吹き飛んだものの――平然と椅子に座ったままでいた。
それでも、ようやくエマは立ち上がり、懐から短い魔杖を取り出した。
「ま、マジだってんなら、私もマジで……」「フン」
が、取り出したその瞬間、エリザはエマへ向かって駆け出し、彼女の顔を魔杖で思い切り、横殴りに引っぱたいた。
「うごぁ!?」
「相手の技に同じ技で対抗っちゅうのんは、その技に自信あるヤツのやるコトやな」
姿勢を崩し、中腰になったエマを、エリザはさらに打ち据える。
「ぐふっ!?」
「しかも余裕綽々気取っとるヤツほど、ダラダラダラダラのんきにおしゃべりしよる。どこかの誰かさんみたいになぁ?」
「て……っめ……」
起き上がりかけたエマの頭を、エリザはもう一度、ごちんと音を立てて殴りつけた。
「はう……っ」
ぐるんとエマの目がひっくり返り、そのままどさりと倒れて気絶する。動かなくなったことを確認し、エリザは彼女の腰からハンカチを抜き取り、耳から垂れていた血を拭き取った。
「ほんで技に自信あるヤツほど、その技でイワせられると思とるねんな。せやから真正面から殴り掛かられて、なんもでけへんっちゅうワケや。ボケが」
と――吹き飛んだ扉の向こうから、ハンが血相を変えて飛び込んで来た。
「え、エリザさん!? これは一体!?」
「オハナシしとったんや。あとな、ハンくん」
エリザはハンカチをエマの頭に投げ捨て、ハンに向き直る。
「上長への反抗と素行不良、および軍規攪乱(ぐんきこうらん)っちゅうコトで、コイツ懲罰房送りな」
「は……!? いきなり何を言うんですか!?」
「おかしないやろ? 隊長のアンタに酒ブチかましよった上、副隊長のアタシにもアレやコレや減らず口叩いてけなしよった。話聞く限りやと、クーちゃんも泣かしよったみたいやしな。アタシら3人、上長やろ? 全員にツバ吐いといて、ソレが反抗やないワケ無いやろ。しかもコイツは隊でも一応の地位を与えられとる。ソレがコレやで? 放っといたら城ん中の空気がめちゃめちゃになるんは目に見えとる。軍規攪乱っちゅう名目は十分通るやろ。ソレで、ええな?」
「い、いや、しかし」
「しかしもかかしもあるかいな。早よ連れて行き」
「……分かりました」
その後、正式にエマの処罰が決定され、彼女には無期限の拘束が課されるとともに、彼女の持つ権限は停止され、ハンに移管された。
「どう言うコトか説明してもらわなあきませんな」
エリザ、ハン、クーの3人はゼロ、そしてゲートに連絡を取り、エマの素行不良を報告した。
《どう言う……って、こっちが聞きたいくらいだ。一体何故、彼女がそんなことをしたのか。正直に言って、私もさっぱり分からないよ》
困り果てたゼロの声に、ゲートも続く。
《俺も同意見だ。こっちにいる時は――まあ、そりゃオテロの件とかあったけどさ――そんなメチャクチャなことするような人間じゃなかった。それは確かだ。俺が保証する。だからこそ、信じてそっちに送ったんだ》
《ともかく、何か行き違いがあったか、それとも私たちも把握できていない要素があったか、……問題点は分からないが、こちらで把握していた分には、問題の無い人間だったはずなんだ》
「さいでっか」
明らかに納得していない顔をしつつ、エリザがこう返す。
「ま、直近の問題としてはですな、シモン班の欠員埋めるために入ってきたエマちゃんがこうなりましたから、また空きが出たワケですわ。こっちで選ばせてもろてええですな?」
《あ、いや、それは》
言い淀むゼロに、エリザは押し込んで行く。
「ソレともまたそっちから送ります? 今度はどんな人材です? ソレは今度こそ納得行く優秀で完全無欠な人材っちゅうワケですやんな? ほんで、その移送はすぐでけるんですか? エマちゃんのおかげで、去年からずーっと班編成に穴空いたままになるんですけども、また向こう2ヶ月、3ヶ月、ハンくん片手落ちの状態で待っとれっちゅうコトですか? この間もよお手が回らんかったのに、まだ待たせとく感じです?」
《……分かった。そっちで決めていい。これ以上穴を空けたままは、確かに、うん、まずいよね》
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