「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・狐謀伝 1
神様たちの話、第260話。
帝国の円卓。
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1.
「諸君に集まってもらったのは、他でも無い」
短耳の男が立ち上がり、円卓に着いた一同を見回した。
「単刀直入に言おう。西山間部に異変が起こっている」
「……だから?」
顔をこわばらせて話を切り出した男に対し、卓の半分は興味無さげな目を向ける。
「どうせ豪族がどうのこうのと言う話であろう?」
「いつも通り、ハカラ王国かレイス王国か、その辺りに任せておけば良かろう」
「そうではない」
男は大きく首を横に振り、話を続けた。
「発端は、トブライネン下将軍が叱咤のためハカラ王国を訪ねたことだ。ここを発ったのが3ヶ月前だが、諸君らはここ最近、彼の姿を見ているか?」
「うん? ……ふむ、そう言えば見かけておらんな」
「3ヶ月とは、随分長居したものだ」
「だがいくらなんでも長すぎる。彼奴の部下も困っておるだろう」
「そう。まさにそれだ」
男は、今度は縦に首を振る。
「まったく音沙汰が無く、そもそも長期逗留の連絡も無し。彼らも3ヶ月の間、放って置かれたままだ。故に困り果て、わしに相談してきたのだ。そこでわしは西山間部へ使いを送ったのだが、彼らは道中のオルトラ王国手前で兵士に止められ、やむなく引き返してきたと言う」
「止められた?」
「馬鹿な。奴らに何の権限があると言うのだ?」
「だが、単なる使い3名に対し武装した兵士1個小隊が構えてきたとなれば、引き返さざるを得まい。使いの話によれば、わしの令状を見せても応じず、質問しても答えずで、果てには問答を厭い、槍や斧を向けてきたと言う」
「ふーむ……? それは確かに妙だ」
「属国の芋将軍程度のケチな手形ならいざ知らず、帝国軍の上将軍閣下直々の令状を意に介さんとは」
「不敬も甚だしい!」
呆れ、憤る者がいる一方で、首を傾げる者もいる。
「しかし、それほど厳重に警戒していると言うのも妙だ」
「うむ。何かしらの事情があると見て間違い無かろう」
「然り。今更反旗を翻したと言うのも、話が唐突すぎるからな」
「いや、その線も考えられなくは無かろう」
と、一人が手を挙げる。
「昨今、沿岸部に南の海からの異邦人が現れたと言う話は皆、聞いておるだろう。そして、その海外人どもによって、沿岸方面軍が壊滅させられたとも」
「うむ、聞いておる」
「……ん? まさか」
「可能性はあるだろう。賊軍どもに感化され、自分たちも異を唱えてみようとしておるのやも知れんぞ」
「あるいは既に賊軍の手先が忍び込み、懐柔しておるのやもな」
「流石にそれは無かろう。海外人が山間部へ入ったとなれば、誰かしらそのうわさを耳にして然るべきだ」
「いや、わしは聞いておるぞ。何でも『狐の耳と尻尾を持った妖艶な美女が、町や村を渡って商売している』とか」
「うむ。吾輩も聞き及んでおる。中々の美貌を誇るとか。一度目にしてみたいもの、……いや、失敬」
「ふーむ……」
円卓に並ぶ将軍たちは各々の判断を探り合うように顔を見合わせ、どう対応すべきか検討する。
「で、現状どうするか、と言う話であるが」
「決まっている。叛意があるにせよ、扇動されたにせよ、鎮圧せねば我らの沽券に関わる。陛下も決して、看過しはしないだろう」
「陛下……か」
「であるな」
自分たちの主に言及された途端、全員の表情がこわばった。
「では、どのように?」
「西山間部方面軍に指令を送り、基地内の200と周辺国100ずつ、……いや、オルトラ王国が封鎖線を引いていると言うのであれば、オルトラ以北は当てにできんだろう。以南のイスタス王国とスオミ王国は大丈夫だろうと思うが」
「となると、100ずつ引っ張って200、合計400人か」
「まあ、それでもオルトラ王国単体で兵隊は300人、それを考えれば400なら十分な数だろう」
「いや、2ヶ国からの派遣は100から150にした方が良かろう。それならば500、倍近い数になる」
「では、そのように」
こうして帝国軍本営の決定により、オルトラ王国へ向けて兵士500名が派遣されることとなった。
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帝国の円卓。
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「諸君に集まってもらったのは、他でも無い」
短耳の男が立ち上がり、円卓に着いた一同を見回した。
「単刀直入に言おう。西山間部に異変が起こっている」
「……だから?」
顔をこわばらせて話を切り出した男に対し、卓の半分は興味無さげな目を向ける。
「どうせ豪族がどうのこうのと言う話であろう?」
「いつも通り、ハカラ王国かレイス王国か、その辺りに任せておけば良かろう」
「そうではない」
男は大きく首を横に振り、話を続けた。
「発端は、トブライネン下将軍が叱咤のためハカラ王国を訪ねたことだ。ここを発ったのが3ヶ月前だが、諸君らはここ最近、彼の姿を見ているか?」
「うん? ……ふむ、そう言えば見かけておらんな」
「3ヶ月とは、随分長居したものだ」
「だがいくらなんでも長すぎる。彼奴の部下も困っておるだろう」
「そう。まさにそれだ」
男は、今度は縦に首を振る。
「まったく音沙汰が無く、そもそも長期逗留の連絡も無し。彼らも3ヶ月の間、放って置かれたままだ。故に困り果て、わしに相談してきたのだ。そこでわしは西山間部へ使いを送ったのだが、彼らは道中のオルトラ王国手前で兵士に止められ、やむなく引き返してきたと言う」
「止められた?」
「馬鹿な。奴らに何の権限があると言うのだ?」
「だが、単なる使い3名に対し武装した兵士1個小隊が構えてきたとなれば、引き返さざるを得まい。使いの話によれば、わしの令状を見せても応じず、質問しても答えずで、果てには問答を厭い、槍や斧を向けてきたと言う」
「ふーむ……? それは確かに妙だ」
「属国の芋将軍程度のケチな手形ならいざ知らず、帝国軍の上将軍閣下直々の令状を意に介さんとは」
「不敬も甚だしい!」
呆れ、憤る者がいる一方で、首を傾げる者もいる。
「しかし、それほど厳重に警戒していると言うのも妙だ」
「うむ。何かしらの事情があると見て間違い無かろう」
「然り。今更反旗を翻したと言うのも、話が唐突すぎるからな」
「いや、その線も考えられなくは無かろう」
と、一人が手を挙げる。
「昨今、沿岸部に南の海からの異邦人が現れたと言う話は皆、聞いておるだろう。そして、その海外人どもによって、沿岸方面軍が壊滅させられたとも」
「うむ、聞いておる」
「……ん? まさか」
「可能性はあるだろう。賊軍どもに感化され、自分たちも異を唱えてみようとしておるのやも知れんぞ」
「あるいは既に賊軍の手先が忍び込み、懐柔しておるのやもな」
「流石にそれは無かろう。海外人が山間部へ入ったとなれば、誰かしらそのうわさを耳にして然るべきだ」
「いや、わしは聞いておるぞ。何でも『狐の耳と尻尾を持った妖艶な美女が、町や村を渡って商売している』とか」
「うむ。吾輩も聞き及んでおる。中々の美貌を誇るとか。一度目にしてみたいもの、……いや、失敬」
「ふーむ……」
円卓に並ぶ将軍たちは各々の判断を探り合うように顔を見合わせ、どう対応すべきか検討する。
「で、現状どうするか、と言う話であるが」
「決まっている。叛意があるにせよ、扇動されたにせよ、鎮圧せねば我らの沽券に関わる。陛下も決して、看過しはしないだろう」
「陛下……か」
「であるな」
自分たちの主に言及された途端、全員の表情がこわばった。
「では、どのように?」
「西山間部方面軍に指令を送り、基地内の200と周辺国100ずつ、……いや、オルトラ王国が封鎖線を引いていると言うのであれば、オルトラ以北は当てにできんだろう。以南のイスタス王国とスオミ王国は大丈夫だろうと思うが」
「となると、100ずつ引っ張って200、合計400人か」
「まあ、それでもオルトラ王国単体で兵隊は300人、それを考えれば400なら十分な数だろう」
「いや、2ヶ国からの派遣は100から150にした方が良かろう。それならば500、倍近い数になる」
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