黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第5部

    琥珀暁・平西伝 1

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    神様たちの話、第267話。
    狐につままれたような。

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    1.
    「ほな早速、報告させてもらいますわ」
     西山間部方面の戦いが終息したため、エリザとハンは、ゼロに連絡を取っていた。
    《ああ、よろしく。まずは被害状況から教えてほしい》
    「ひがいじょーきょー? はて、何のお話です?」
     とぼけた返し方をしたエリザに、ゼロの苦々しげな声が答える。
    《西山間部が攻略されたと言う話だったよね? 軍事支配されている地域を奪ったと言うなら、軍事行動は必然だ。であれば1クラムも支出が無いなんてことは有り得ない。その支出の内訳、即ち遠征隊の人間が何名犠牲になり、どの程度軍事物資を消費、あるいは破損させたかを、報告してほしいと言ってるんだ。ふざけてないでちゃんと答えてほしい》
    「あー、はいはいはい、そう言うコトですか。そう言うコトやったら、ウチの被害は0ですわ」
    《……うん?》
     一転、半分面食らったような、そしてもう半分は困惑したような返事が返って来る。
    《ふざけないでほしいと、今お願いしたばかりなんだけど》
    「ふざけてまへん。至って真面目です。遠征隊の子は誰一人死んでませんし、装備や糧食に関しても消費した分をこちらで補充しとりますから、ゼロさんトコに請求するもんは1人も、1クラムもありまへんわ」
    《では、何も行動しなかったと? でなければ減らないと言うのは論理的におかしいだろう?》
    「そう言うコトですな。行動言うたら、こっちの人らが帝国さん倒すのんにちょこっと『おてつだい』したったくらいですわ。遠征隊が『軍事行動』し、敵を殺害したっちゅうような事実は、1件としてありまへんわ」
    《詭弁じゃないか、それは? 遠征隊として行動しなくとも、現地民に対して君の指図があったことは明らかだ。でなければ長年、帝国の軍事支配から脱却できなかった彼らが突然反旗を翻し、あまつさえ勝ってしまうようなことが起こるはずが無い》
    「アタシの? はて、いつドコで誰がそんなコト言うてましたやろ? 『女将さんが西山間部の人らとコソコソ話し込んでましたで』とか何とか、ドコかから聞かはったんですか?」
    《そうした報告は無い。だけど状況からすれば、明らかだ。君が絡んでいなければ、そんな離れ業が彼らに為せるはずが……》
    「そら見くびりすぎっちゅうもんですわ。現にやったはりますし、アタシが事細かくアレやコレや口添えしたっちゅう事実も、ゼロさんトコにはいっこも報告されてないですやろ? ソレとも報告されました? 『こんなん聞いとるぞ』って、そう言うのんがあるんやったらどうぞ、はっきり言うたって下さい」
    《確かに明確な報告を受けてはいない。だが状況は明らかに、君の関与を……》
    「状況、状況て、そもそもゼロさんはその目で直接現地の様子を見て、そう言う話をされたはるんですか? 今まで言うてはったんはゼロさんが自分の頭ん中で組み立てた話ですやん? 憶測の域を出えへん話ばっかりやないですか」
    《それは……そうだが……確かにそうだけども……》
    「事実は事実、憶測には敵いまへん。憶測を何百、何千並べたとて、事実一つあればそんなもん、全部ワヤですわ。
     その『事実』の列挙、注釈やら脚色やら一切無しの、ただの結果として――遠征隊には被害無し。現地の人らが自分らの努力で西山間部軍を撃破した。アタシらが遠征隊として出動したんは、その戦いで出た捕虜の収容代行でだけですわ。アタシらは剣一本、魔術一言すらも動かしてません。
     ソレが事実。ソレだけが、事実ですわ。まだ何か、問責したいトコあらはりますか?」
    《う……ぐ》
     ゼロの攻勢がやんだところで、エリザの正面に座っていたハンが心配そうな目を向けつつ、筆談で釘を指してくる。
    (しかし実際 軍は動かしたでしょう? それはどうするんです?)
     エリザも筆を取り、ニヤニヤ笑いながらこう返した。
    (こうするんが一番やろ
     アンタもクーちゃんも関わってへんし 後はアタシやってへんて言い張ったら 責めるトコ無くなるやん
     現場の子にもさっき言うた通りにしか説明してへんし 誰も仕掛けに気付かへんで)
     その文を見て、ハンは肩をすくめた。
    (黙認します)
     エリザはこくりとうなずきつつ、報告を再開した。
    「そんなワケで、今回の西山間部の状況に関して、遠征隊は軍事行動を行ってまへん。ええやないですか、ウチらん中に死人一人も出えへんかったんですし。ソレともゼロさん、誰か死んでほしかったんですか?」
    《なっ、……そ、そんなわけが無いだろう!? ……あ、ああ、うん。そうだね、うん。被害が無いと言うその報告は、ともかく信じることとする。
     だけど、無論、遠征隊の帰還後に聞き取り調査を行うなど、裏を取ることはさせてもらうよ。今回のこの報告に万一虚偽があった場合、改めて問責させてもらうからね》
    「はいはいどうぞどうぞ、お好きなよーに」
     悔しそうなゼロの声を聞いて、エリザはまた、ニヤリと笑みを浮かべた。

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    「火紅狐」をお読みになった方がいれば、
    今作のあちこちで「あれ?」と既視感を覚えるところがあるかなと思います。
    「火紅狐」の主人公であるフォコは金火狐一族、即ちエリザの子孫。
    自分たちの一族の開祖が活躍したエピソードが聖書など、神学の教本ともなっていれば、
    第一の学問として修めていることは想像に難くないでしょう。

    で、ここぞと言う時に引用し、フォコくんはドヤ顔するわけです。
    欧米のTVドラマやハリウッド映画でもたまーにいませんか、そーゆーヤツ?
    「事あるごとに聖書の一節を引用してドヤ顔決めるインテリ系」って感じの。
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