「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第5部
琥珀暁・平西伝 3
神様たちの話、第269話。
通信デート。
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3.
ゼロへの報告を終えたその日の晩、エリザのところにゲートからの連絡が入った。
「どないしたん? アタシの声聞きたなったん?」
《はは……、それもあるっちゃある。あ、いや、真面目な話があるんだ》
「なんや? 今日の報告のコトか?」
そう尋ねたところで、ゲートの声が返って来る。
《そうだ。その、ゼロの奴が》「お偉いさんらに公聴させてたんやろ?」《んっ、……なんで分かった?》
面食らった様子のゲートの声に、エリザはクスクス笑う。
「そら、報告始めていきなり『被害状況言うて』なんておかしいやん? そんなんわざわざ念押しせんでも、順を追って話すっちゅうねん。ソレ聞かせたいヤツが周りに仰山おったとしか思われへんやん、そんなん」
《君がいつも通り察しのいい子で、マジに助かるよ》
そんな風に言われ、エリザは思わず吹き出した。
「ぷっ、ふふふ……」
《どうした?》
「いや、うふ、ふふ……、アタシのコトを『子』なんて言うん、アンタだけやもん。や、ゴメンゴメン、話戻すけども。
わざわざそんなコトしよるっちゅうコトは、アタシ叩きの材料にしようと思てはったんやろな。1人でも1クラムでも犠牲やら出費やらあったら、ソレをダシにアタシのコト、ボロカスにけなすつもりしてはったんやろ」
《だろうな。ところが犠牲も出費も無しと来たもんだ。あいつも困っただろうな。実際、その後の会議じゃほとんど黙りっぱなしだったし、どう見ても不貞腐れてる感じだった》
「なんやソレ。もっと大人かな思てたけど、案外やね」
《そう言ってやるな。あいつにも色々あるんだ。っと、俺からはそれくらいだな。そっちは変わりないか? ハンはいつも通りか?》
「いつも通りやね。こないだも『測量したい』言うて出張申請してきよったわ」
《そりゃ確かにいつも通りだな。……で、クーとはどうなんだ?》
「あー、……うーん」
言い淀んだエリザに、ゲートがけげんな声を返す。
《なんだ? そっちもいつも通り、って感じじゃないのか?》
「そうなんよ」
《何かあったのか?》
「ありそうっちゅうか、起こりそうっちゅうか」
そう答えつつ、エリザは机の上に置きっぱなしだった書類に目をやる。
「さっき、出張申請してきたって言うたやん? その相手がな」
《またクーが押しかけてきたのか?》
「や、ソレがな、全然別の娘やねん。ほら、エマちゃんの班に1人おったやん? その子をハンくんの班に入れたったんやけども」
《誰だったっけ……。すまん、覚えてないな》
「メリベルっちゅう子や。アタシらはメリーちゃんって呼んどるけど」
《んー……、あー、うん、いたかもな。……いや、すまん。正直言うと、ソーンのこと自体、他からの推薦で選んだ程度だからな。彼女の班員までは把握できてない。えーと、で、そのメリーって子が、ハンと一緒に?》
「せやねん。元々エマちゃんトコで補佐と資材管理しとったから、アタマはええねんな。ほんで、測量のコトも結構興味津々やったみたいでな、勉強を兼ねて付いてきたい言うて」
《なるほど。……あれ、じゃあクーは一緒じゃないのか?》
今度はゲートがけげんな声を出す。
「ソレがな、こないだ――言うてももう3、4ヶ月くらい前やけど――ハンがクーちゃん連れて測量行ったら、吹雪がひどすぎてどないもならんかったらしいんよ。で、結局雪ん中でじーっとさせられた挙げ句にしゃあないから帰ろかってなって、ソレでクーちゃんがキレてもうてな」
《あいつのことだから、吹雪いても頑固に目的地まで行こうとしたんだろうな。そりゃキレもするわな》
「ソレ以来、ハンくんも測量誘わへんくなったし、クーちゃんもハンくんから何となしに距離置いてもうたし、ってなっててんな。せやから今回も、クーちゃんにはお声が掛からずや」
《色々事情が変わってきてんだな。じゃあもう、ハンとクーが付き合うみたいな話は無くなった感じなのか?》
「かも知れへんな。案外今頃、メリーちゃんと楽しくやっとるんちゃうか?」
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ゼロへの報告を終えたその日の晩、エリザのところにゲートからの連絡が入った。
「どないしたん? アタシの声聞きたなったん?」
《はは……、それもあるっちゃある。あ、いや、真面目な話があるんだ》
「なんや? 今日の報告のコトか?」
そう尋ねたところで、ゲートの声が返って来る。
《そうだ。その、ゼロの奴が》「お偉いさんらに公聴させてたんやろ?」《んっ、……なんで分かった?》
面食らった様子のゲートの声に、エリザはクスクス笑う。
「そら、報告始めていきなり『被害状況言うて』なんておかしいやん? そんなんわざわざ念押しせんでも、順を追って話すっちゅうねん。ソレ聞かせたいヤツが周りに仰山おったとしか思われへんやん、そんなん」
《君がいつも通り察しのいい子で、マジに助かるよ》
そんな風に言われ、エリザは思わず吹き出した。
「ぷっ、ふふふ……」
《どうした?》
「いや、うふ、ふふ……、アタシのコトを『子』なんて言うん、アンタだけやもん。や、ゴメンゴメン、話戻すけども。
わざわざそんなコトしよるっちゅうコトは、アタシ叩きの材料にしようと思てはったんやろな。1人でも1クラムでも犠牲やら出費やらあったら、ソレをダシにアタシのコト、ボロカスにけなすつもりしてはったんやろ」
《だろうな。ところが犠牲も出費も無しと来たもんだ。あいつも困っただろうな。実際、その後の会議じゃほとんど黙りっぱなしだったし、どう見ても不貞腐れてる感じだった》
「なんやソレ。もっと大人かな思てたけど、案外やね」
《そう言ってやるな。あいつにも色々あるんだ。っと、俺からはそれくらいだな。そっちは変わりないか? ハンはいつも通りか?》
「いつも通りやね。こないだも『測量したい』言うて出張申請してきよったわ」
《そりゃ確かにいつも通りだな。……で、クーとはどうなんだ?》
「あー、……うーん」
言い淀んだエリザに、ゲートがけげんな声を返す。
《なんだ? そっちもいつも通り、って感じじゃないのか?》
「そうなんよ」
《何かあったのか?》
「ありそうっちゅうか、起こりそうっちゅうか」
そう答えつつ、エリザは机の上に置きっぱなしだった書類に目をやる。
「さっき、出張申請してきたって言うたやん? その相手がな」
《またクーが押しかけてきたのか?》
「や、ソレがな、全然別の娘やねん。ほら、エマちゃんの班に1人おったやん? その子をハンくんの班に入れたったんやけども」
《誰だったっけ……。すまん、覚えてないな》
「メリベルっちゅう子や。アタシらはメリーちゃんって呼んどるけど」
《んー……、あー、うん、いたかもな。……いや、すまん。正直言うと、ソーンのこと自体、他からの推薦で選んだ程度だからな。彼女の班員までは把握できてない。えーと、で、そのメリーって子が、ハンと一緒に?》
「せやねん。元々エマちゃんトコで補佐と資材管理しとったから、アタマはええねんな。ほんで、測量のコトも結構興味津々やったみたいでな、勉強を兼ねて付いてきたい言うて」
《なるほど。……あれ、じゃあクーは一緒じゃないのか?》
今度はゲートがけげんな声を出す。
「ソレがな、こないだ――言うてももう3、4ヶ月くらい前やけど――ハンがクーちゃん連れて測量行ったら、吹雪がひどすぎてどないもならんかったらしいんよ。で、結局雪ん中でじーっとさせられた挙げ句にしゃあないから帰ろかってなって、ソレでクーちゃんがキレてもうてな」
《あいつのことだから、吹雪いても頑固に目的地まで行こうとしたんだろうな。そりゃキレもするわな》
「ソレ以来、ハンくんも測量誘わへんくなったし、クーちゃんもハンくんから何となしに距離置いてもうたし、ってなっててんな。せやから今回も、クーちゃんにはお声が掛からずや」
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