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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 13 ~ フォックス・ハンティング ~ 6

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    ウエスタン小説、第6話。
    悪党共のいさかい。

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    6.
    「失敗しただと?」
     ハーデンビル郊外での作戦失敗を聞くなり、ウィリスは額に青筋を浮かべ、テーブルを乱暴に払い除けて激昂した。
    「ふざけてんのか!?」
    「待てって、おい、なあ、ウィリス」
     対面のDJがなだめようとするが、ウィリスはそのDJの襟元をつかんでギリギリと締め上げる。
    「やっ、やめっ、おっ、おいっ」
    「失敗しましたで済むと思ってんのか、あぁ!?」
    「げほ、っ、ぐ、ぐっ」
     DJの手下たちが慌ててウィリスを抑え、ようやくDJが解放される。
    「げほっ、げほっ、……はーっ、はーっ、……ったくよお、冷静になれって、ウィリスよぉ」
    「落ち着いてられるかってんだよ! しくじってヘラヘラしてんじゃねえぞ、コラ!」
    「あのな」
     手下たちを振りほどこうと暴れるウィリスにたまりかねたらしく、DJはコルトを抜いてウィリスの額に銃口を押し付ける。
    「いい加減にしやがれよ、狂犬。黙らねえとこのままズドンと行くぞ」
    「……っ」
     DJとウィリスはしばらくにらみ合っていたが、ようやくウィリスが暴れるのをやめ、大人しくなる。
    「放してやれ」
    「はい」
     手下がウィリスから手を放し、壁際まで吹っ飛んだテーブルを元の位置に戻したところで、DJが椅子に座り、ウィリスにも座るよう促す。
    「失敗はした。それは確かだ。だがそんなことは、何てこたあねえんだよ。部屋ん中めちゃめちゃにするほどのことじゃねえ」
    「何だと? てめえ、何を呑気に……」
     怒鳴りかけたウィリスに、DJは「呑気なのはてめえだよ」と切り返した。
    「前から思ってたが、てめえ何様のつもりなんだよ? こっち来て以降、酒呑んで暴れ回るわ、俺の手下に手ぇ上げるわ、まるで自分がここのボスみてえなツラしやがってよ。分かってねえみてえだからはっきりさせとくが、ボスはこの俺だ。てめえはまだ俺の客、『おともだち』に過ぎねえんだぜ? これ以上ここで好き勝手するってんなら、ここのボスたる俺もしかるべき措置を講じなきゃならん。分かるか?」
    「……」
     憮然とした表情を浮かべるウィリスをにらみつつ、DJは手下に命じて地図を持って来させる。
    「話を元に戻すが、現時点でジェフ・パディントンを仕留め損なったところで、俺たちには何の問題も無い。そもそも襲撃失敗の電話連絡があったのはついさっきだ。現場から電話のある町に歩いて戻って来たことを考えりゃ昨日起こった話だが、だからってパディントンがもう俺たちのそばにいるなんてことは、物理的にありえねえ。確かに現場とこことは500マイル程度しか離れてないが、線路は直接つながっちゃいねえんだ。機関車奪ったところで、ここまで直進できるわけじゃねえ。お前さんのその賢いおつむなら、それくらい理解できんだろ?」
    「……ああ」
    「だから――繰り返すけども――焦るほどのことじゃねえんだよ。少なくとも俺の首を絞めるようなことじゃねえ。
     ことじゃねえってのに、お前さんは俺の首をぎゅーっと締めてくれたってわけだ」
    「何が言いたい?」
     依然としてにらみつけるウィリスに、DJも斜に構えたままにらみ返す。
    「お前さんにゃちょっと、立場を分かってもらわなきゃならねえなと思ってよ」
     そこでDJは手下に手招きし、耳打ちする。
    「何だよ?」
     その様子をいぶかしむウィリスに構わず、DJは「頼んだぜ」と手下に告げ、部屋から出させる。
    「何するつもりかって聞いてんだよ」
     再三尋ねたウィリスに、DJはようやく答えた。
    「言ったろ? 分かってもらおうかって話だ」
    「ああん?」
    「お前さんは狂犬だ。誰彼構わず噛み付いてくる、手の付けられねえ駄犬だよ。だもんでこっちも『手を付けられなく』してやろうかってな」
     間も無く、手下が斧を持って戻って来る。
    「……っ」
     それを目にした途端、ウィリスの顔色がさっと変わる。
    「パディントンのせいで右腕無くしたっつってたな?」
    「て、てめえ、何を」
    「じゃあ左腕は俺のせいで無くなるってわけだ」
     DJは斧を受け取り、立ち上がる。と同時に、手下たちがウィリスの体をがっちりと抑え込む。
    「お、おい」
    「これはしつけだよ、ワンちゃん」
     DJは斧を両手で持ち、ウィリスにそろり、そろりと歩み寄る。
    「や、やめろ」
    「……」
     DJは答えず、斧を振り上げ――。
    「やめろーッ!」
     どかっ、と振り下ろした。
    「……っ、……う、うう」
     だが、斧はウィリスの左腕ではなく、彼が座っていた椅子の背もたれに突き刺さっていた。
    「ビビったか? ゾッとしたか? そりゃあそうだよな、両腕無くなっちまったら、一人でメシも食えねえし、銃も撃てねえもんなぁ」
     DJは戦慄しているウィリスににやあっと笑顔を近付け、こう続けた。
    「一回は脅しだけで勘弁してやる。だがもう一度、さっきみてえに俺の首を締めようってんなら、今度はマジにその腕落とすぞ」
    「ぐっ……」
    「話はこれで終わりだ。じゃあな」
     DJはウィリスに背を向け、部屋から出て行った。
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