DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 13 ~ フォックス・ハンティング ~ 7
ウエスタン小説、第7話。
投票。
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7.
DJとウィリスがいさかいを起こしたその日の晩、DJは町のサルーンに繰り出し、酒と女に興じていた。
「……だもんでよ、俺はそん時、奴に言ってやったのよ、『てめえはもう用済みだ』ってな」
「きゃあ、こわぁい」
高い酒と厚化粧をした女たちに囲まれ、DJは上機嫌で昔の武勇伝を披露している。
「それからどうなったのぉ?」
「それから? それからはお定まりの通りさ。破れかぶれで襲い掛かってきた奴を、俺がこのコルトでズドン、って具合さ」
「きゃあ、かっこいーぃ」
「ふふふ、ふへへへへへ……」
酒が相当回っているらしく、DJはだらしない顔でヘラヘラと笑っている。
「コルトって言や、昔、俺が……」
と――また別の武勇伝を話し始めたDJが、急に黙り込んだ。
「どしたのぉ?」
「……どう言うつもりだ?」
女たちに答えず、DJは正面に現れた片腕の男――ウィリスをにらみつけた。
「お前さんは何かと目立つから、あんまり出て来んなって言っておいただろ?」
「ヘッ、『言っておいた』か」
ウィリスはギラギラと殺意に満ちた目を、DJに向ける。
「どうやらてめえは俺のことをマジに飼い犬だと思ってるみたいだが、俺は犬じゃねえ。ましてや、てめえに飼われた覚えもねえんだよ」
「何だよ? 昼間のことがそんなに気に食わねえのか?」
話の種に使っていたコルトを握りしめ、DJが立ち上がる。
「きゃあっ!」
修羅場になるのを察したらしく、女たちは慌てて店の奥へと逃げ込む。他の客も血相を変え、テーブルを盾にして隠れ始めた。
「お、お客さん、勘弁して下さいよ」
マスターが恐る恐ると言った口ぶりでなだめようとするが、ウィリスは彼に目もくれず、依然としてDJをにらんでいる。
「ああ、まったく気に食わねえな。ぶっちゃけ、てめえの器量は俺以下だ。俺以下の野郎にガタガタ言われて、俺が笑って済ましてやると思ったか?」
「器量だあ?」
DJは目を吊り上がらせ、コルトの銃口をウィリスに向ける。
「てめえの方こそ器量の小せえ犬っころじゃねえか! ちょっと俺にビビらされたくらいで、こんなクソ目立つことしやがって! 俺はてめえが一人で大軍勢を組織したあの『スカーレット・ウルフ』だ、ウチにとって使える人材になりそうだってんだから助けてやったんだぜ? それが何だ、俺の言うことは聞かねえわ、自分勝手に暴れ回るわ、とんだ疫病神じゃねえかッ!
もういい、てめえはもう用済みだ! この場でブッ殺して……」
DJの怒声を、ウィリスが握っていた拳銃の発砲音がさえぎる。
「……っく、こん畜生ッ」
が、相手が撃つより一瞬早く反応し、DJはどうにかテーブルの陰に潜んで銃弾をかわす。
「食らえッ!」
ウィリスが2発目を撃つのに手間取っている間に、DJはテーブルから右手だけを出して応戦する。が、その一瞬で相手もどこかに隠れ、DJの弾はサルーンの壁に穴を開けるだけに留まる。
「どうした!? 撃ってこいや! それとも左手一本じゃ、ろくに撃鉄も起こせねえか!?」
DJはテーブルから姿を現し、サルーンを一瞥する。
「なんだ、てめえ!? 逃げたのか!? あんだけ威勢のいいことベラベラ立て並べておいて、俺が反撃したらあっさり尻尾巻いて逃げ出すってのかッ! ふざけてんじゃねえぞ!」
DJはサルーンを飛び出し、往来に出る。と、ここでようやくウィリスの姿を見付け、DJは拳銃を向けた。
「どうした、ウィリス!? ここで決闘しようってのかよ、ああん!?」
「そんなつもりはねえよ」
ウィリスも拳銃を向け、自然、対峙する形になる。
「てめえにはきっちり分からせとこうと思ってな」
「ああん? 何をだよ?」
「器量ってヤツをだよ」
と、両者の背後からぞろぞろと、DJの手下が現れる。
「俺とお前と、どっちがボスにふさわしいガラかってことを、こいつらに聞いてみようじゃねえか? え、ダリウス?」
「バカかてめえ。んなもん……」
パン、と銃声が夜の町にこだまする。次の瞬間、DJの右胸に赤黒い穴が空いた。
「……が、は?」
「まずは俺に1票」
ウィリスがにやりと笑い、左手を挙げる。続けてパン、パンと銃声が轟き、DJの体に次々と穴が空いていく。
「げ、ぼ……」
「どんどん投票してくれや。こいつに分からせてやれ」
パン、パンと絶え間無く銃声が続き、DJはついに倒れる。それでも銃声は止まること無く、DJを襲い続けた。
「はっ……は……っ……な……んで……」
息も絶え絶えにつぶやくDJに、ウィリスは勝ち誇った声で返した。
「言っただろ? 器量だよ、ダリウス。これで俺がここの、新しいボスだ。満場一致で可決ってヤツだ。
いや、あと1票残ってるな」
ウィリスは倒れたDJに近寄り、自分のコルトでDJの頭を撃ち抜いた。
「これで投票終了だな」
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7.
DJとウィリスがいさかいを起こしたその日の晩、DJは町のサルーンに繰り出し、酒と女に興じていた。
「……だもんでよ、俺はそん時、奴に言ってやったのよ、『てめえはもう用済みだ』ってな」
「きゃあ、こわぁい」
高い酒と厚化粧をした女たちに囲まれ、DJは上機嫌で昔の武勇伝を披露している。
「それからどうなったのぉ?」
「それから? それからはお定まりの通りさ。破れかぶれで襲い掛かってきた奴を、俺がこのコルトでズドン、って具合さ」
「きゃあ、かっこいーぃ」
「ふふふ、ふへへへへへ……」
酒が相当回っているらしく、DJはだらしない顔でヘラヘラと笑っている。
「コルトって言や、昔、俺が……」
と――また別の武勇伝を話し始めたDJが、急に黙り込んだ。
「どしたのぉ?」
「……どう言うつもりだ?」
女たちに答えず、DJは正面に現れた片腕の男――ウィリスをにらみつけた。
「お前さんは何かと目立つから、あんまり出て来んなって言っておいただろ?」
「ヘッ、『言っておいた』か」
ウィリスはギラギラと殺意に満ちた目を、DJに向ける。
「どうやらてめえは俺のことをマジに飼い犬だと思ってるみたいだが、俺は犬じゃねえ。ましてや、てめえに飼われた覚えもねえんだよ」
「何だよ? 昼間のことがそんなに気に食わねえのか?」
話の種に使っていたコルトを握りしめ、DJが立ち上がる。
「きゃあっ!」
修羅場になるのを察したらしく、女たちは慌てて店の奥へと逃げ込む。他の客も血相を変え、テーブルを盾にして隠れ始めた。
「お、お客さん、勘弁して下さいよ」
マスターが恐る恐ると言った口ぶりでなだめようとするが、ウィリスは彼に目もくれず、依然としてDJをにらんでいる。
「ああ、まったく気に食わねえな。ぶっちゃけ、てめえの器量は俺以下だ。俺以下の野郎にガタガタ言われて、俺が笑って済ましてやると思ったか?」
「器量だあ?」
DJは目を吊り上がらせ、コルトの銃口をウィリスに向ける。
「てめえの方こそ器量の小せえ犬っころじゃねえか! ちょっと俺にビビらされたくらいで、こんなクソ目立つことしやがって! 俺はてめえが一人で大軍勢を組織したあの『スカーレット・ウルフ』だ、ウチにとって使える人材になりそうだってんだから助けてやったんだぜ? それが何だ、俺の言うことは聞かねえわ、自分勝手に暴れ回るわ、とんだ疫病神じゃねえかッ!
もういい、てめえはもう用済みだ! この場でブッ殺して……」
DJの怒声を、ウィリスが握っていた拳銃の発砲音がさえぎる。
「……っく、こん畜生ッ」
が、相手が撃つより一瞬早く反応し、DJはどうにかテーブルの陰に潜んで銃弾をかわす。
「食らえッ!」
ウィリスが2発目を撃つのに手間取っている間に、DJはテーブルから右手だけを出して応戦する。が、その一瞬で相手もどこかに隠れ、DJの弾はサルーンの壁に穴を開けるだけに留まる。
「どうした!? 撃ってこいや! それとも左手一本じゃ、ろくに撃鉄も起こせねえか!?」
DJはテーブルから姿を現し、サルーンを一瞥する。
「なんだ、てめえ!? 逃げたのか!? あんだけ威勢のいいことベラベラ立て並べておいて、俺が反撃したらあっさり尻尾巻いて逃げ出すってのかッ! ふざけてんじゃねえぞ!」
DJはサルーンを飛び出し、往来に出る。と、ここでようやくウィリスの姿を見付け、DJは拳銃を向けた。
「どうした、ウィリス!? ここで決闘しようってのかよ、ああん!?」
「そんなつもりはねえよ」
ウィリスも拳銃を向け、自然、対峙する形になる。
「てめえにはきっちり分からせとこうと思ってな」
「ああん? 何をだよ?」
「器量ってヤツをだよ」
と、両者の背後からぞろぞろと、DJの手下が現れる。
「俺とお前と、どっちがボスにふさわしいガラかってことを、こいつらに聞いてみようじゃねえか? え、ダリウス?」
「バカかてめえ。んなもん……」
パン、と銃声が夜の町にこだまする。次の瞬間、DJの右胸に赤黒い穴が空いた。
「……が、は?」
「まずは俺に1票」
ウィリスがにやりと笑い、左手を挙げる。続けてパン、パンと銃声が轟き、DJの体に次々と穴が空いていく。
「げ、ぼ……」
「どんどん投票してくれや。こいつに分からせてやれ」
パン、パンと絶え間無く銃声が続き、DJはついに倒れる。それでも銃声は止まること無く、DJを襲い続けた。
「はっ……は……っ……な……んで……」
息も絶え絶えにつぶやくDJに、ウィリスは勝ち誇った声で返した。
「言っただろ? 器量だよ、ダリウス。これで俺がここの、新しいボスだ。満場一致で可決ってヤツだ。
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