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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 13 ~ フォックス・ハンティング ~ 11

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    ウエスタン小説、第11話。
    炸裂する奇策。

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    11.
    「うっ……!?」
     突然の揺れに驚き、ウィリスはがくんと体勢を崩す。
    「な、なんだ、今のは?」
     頭の中に充満していた怒りを放り出し、ウィリスは冷静さを取り戻す。
    (組織がダリウス殺しに勘付いて、強襲して来たか? いや、ダリウスが死んで以降、接触はしてないはずだ。気付いてるはずが無え。仮に来たとしても、現時点で海路からやって来るルートはまだ構築できてねえし、陸路で来るにしても、線路は爆破してるから列車は来られねえ。馬で大勢来たってんなら、ここからだって様子は分かる。そこら辺の気配がまったく無いってことは、組織の襲撃じゃねえ。と言って町の奴らが決起したなんてのも、もっとあり得ねえ。散々ビビらした上、武器弾薬の類は全部奪ったんだ。保安官だってブッ殺したからな。
     なら――答えは一つしか無えッ!)
     ウィリスは部屋を飛び出し、大声で叫ぶ。
    「パディントンだ! パディントンが来やがったぞ! 全力で探し出せ! 見付け次第、ブッ殺せッ!」
     が、続く爆発音にその怒声はかき消され、ウィリス自身も衝撃で倒れ込む。
    「ぐっ……!」
     2度目の爆発で、アジトは大きく傾く。斜めになった廊下をウィリスの体がずるずると滑り、そのまま壁に叩き付けられた。
    「うぐっ、……ぐっ、ぐぐ、く、……クソがあッ!」
     どうにか立ち上がり、ウィリスはもう一度怒鳴った。
    「パディントンを探せえッ! 探すんだああああッ!」

     武器庫を爆破した後、ジェフは騒然となるアジト内を、慌てた顔で右往左往している者たちに混じって歩き回っていた。
    (うむ、狙い通りだ。
     これだけの緊急事態となれば、誰も彼もが消火活動と『ジェフ・パディントン』と言う50がらみの男の捜索で頭が一杯になる。そう、誰もここにいる20そこそこの小汚い青年こそが、そのパディントンであるなどと言う発想の飛躍はできなくなる)
     当のウィリス本人でさえ何度か自分のすぐ横を通り抜けて行くが、こちらに注意を向けている様子は一度も無い。
    (滑稽なものだ。お前ほどの賢しい者なら、すぐ横を向けば仇敵がそこにいることに気付くだろうに。……さて、お前が慌てふためいている間に、私は探偵としての仕事を全うさせてもらうとしよう)
     ジェフは人探しをしている振りをしつつアジト内部を周り、組織につながる情報を集めた。
    (JJ・シャタリーヌの現在の住処、即ち組織の本拠地――兵站と輸送を担当していたヴェルヌなら、知っていたはずだ。そして奴の最終計画についても、ヴェルヌであれば相当重要な役割を担っていただろう。
     そのヴェルヌのアジトであれば、それらすべての情報が、間違い無くここにあるはずだ)
     と、情報収集の最中にもう一度、ウィリスとすれ違う。
    「おい!」
     ウィリスが血走った目で、ジェフをにらみつけてくる。
    「はっ、はい!」
     ジェフは戸惑った風を装い、ウィリスに応じた。
    「てめえさっきから何をウロウロしてやがる?」
    「ぱ、パディントンを、探して……」
    「だったらもっと人の顔見やがれ! 部屋ん中入ったり出たり、真面目に探す気あんのかてめえはよお!?」
    「す、すみません!」
     がばっと頭を下げ、顔を挙げた時には、既にウィリスは自分に背を向け、走り去っている。爆笑しそうになるのをこらえつつ、ジェフはその後姿を見送った。
    (やれやれ。人の顔をろくに見ていないのは一体、どちらだか)
     ウィリスが廊下を曲がり、姿が見えなくなったところで、ジェフは彼が来た方角を向いた。
    (あの様子なら、自室に戻って来ることもそうそうあるまい。その自室――数日前までヴェルヌのものだったであろう部屋ならば、重要な情報も山積しているはずだ)
     ジェフはするりとその部屋に忍び込み、手早く棚やデスクを確認して回る。
    (思った通りだ。確かにヴェルヌは、重要な情報を握っていた。
     ……が、これは本当に本気で考えているのか、正直言って、理解に苦しむ内容だな。パナマに巨大な人工海峡を建設し、C州で建造した巨大戦艦をメキシコ湾に持って来ようと言うのか? 奇想天外もはなはだしいな。とは言えC州とDCは合衆国の西端と東端だ。C州で巨大戦艦を建造していたとしても、合衆国政府が気付けん可能性は高い。なるほど、戦略的な意味では正解と言えるかも知れんな。
     そして必然的に、彼奴らの本拠地も明らかになった。なるほど、DCから見ればここは合衆国の果ての、さらに果ての町だ。廃坑を作り変えた地下帝国などよりはよほど気付かれるまい)
     情報収集を終え、ジェフは悠然と部屋を後にしようとした。ところが――。
    「おい」
     部屋を出たところで、ウィリスと彼の手下数名と、ばったり出くわしてしまった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    大西洋と太平洋をつなぐ巨大水路、パナマ運河が開通したのは1914年。両洋をつなぐことにより国家規模で、あるいは全世界規模で多方面における効果が見込めることから、構想自体は16世紀頃からあったようです。
    しかしカリブ海からパナマ湾までは80km以上の距離があり、到底人力で造成できるものではありません。この計画がようやく現実化し始めるのは、産業革命以後の19世紀に入ってからでした。
    ところがそれらも政治的・経済的理由から何度も頓挫・挫折。アメリカ主導で工事が進められる前にはフランスがスエズ運河の開発者を招いて着工したようですが、結局はこれも風土病の蔓延と、開発資金を巡ってフランス政界で汚職が深刻化したことなどにより、1889年に開発中止となりました。

    いずれにせよ、19世紀当時においては実現する見込みのまったく立たない無謀で荒唐無稽な野望に過ぎず、作中ではジェフほどの有識者でさえ鼻で笑ってこきおろすような扱いでした。
    現代で例えるなら、「21世紀中に宇宙旅行の商業化を実現する」くらいの与太話です。
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