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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・空位伝 3

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    神様たちの話、第278話。
    タテとヨコ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「微妙なトコやなー」
     ハンによって積極策がエリザに打診されたが、彼女は首をかしげてきた。
    「らしくないですね。てっきりエリザさんであれば、『よっしゃ』みたいなことを言って賛成するかと思っていたんですが」
    「や、アタシは構へんねん。そらケリ付けるんやったらちゃっちゃと付けたいからな。でもな、結局は『上』がええでって言うかどうかやん。勝手に動いたらまた揉めるしな」
    「確かに」
    「そらな、エマの件やらお偉方集めての傍聴やらで、立て続けにゼロさんの失策があったし、相当ヘコんどるかも分からんから、ココでアタシらが『やりまっせ』言うて進めようとしても、もしかしたら『ええよもう』言うて、投げやりにされるかも知れへんけども、逆にな、最後の意地っちゅうもんがあるやろしな」
    「最後の?」
     部屋の中をうろうろと歩き回りつつ、エリザは私見を述べる。
    「『帝国本国を攻撃する』っちゅうのんは、遠征隊の活動で言うたら、ホンマに最後の最後の話やん? ゼロさんにしたら、自分のええトコ見せる最後のチャンスやないの。ソコでしくじるのんも嫌やろけども、このままアタシらをほっといて最大最後の成果を勝手に挙げられるっちゅうのんも、そら嫌やろしな」
    「なるほど」
     自然、ハンもエリザの動きを追う形となり、その場でくるくると回り出す。
    「……エリザさん」
    「なんや?」
    「止まってもらえますか?」
    「考え事しとると手持ち無沙汰やねん。こっち見んかったらええやないの」
    「人と話しているのに、相手の顔を見ないのはどうかと」
    「ま、ソレもそやな」
     立ち止まり、エリザは話を続ける。
    「とりあえず、現状でいきなり攻めるやら何やらの話はせえへん方がええやろ。アタシの方の調査もあるから、不在説がホンマの話やと確定してからでも遅くないやろな」
    「確かにそうですね。やはり性急でしょう」
    「とりあえず次の定例報告ん時、ソレとなく打診してみる程度やな。『こんなうわさもあるんやけど』くらいで。ま、どっちにしても次まで間あるから、アタシちょっと西山間部の方行ってくるわ」
    「情報収集ですか?」
    「半分はな。残り半分はアタシの商売やね。ミェーチさんトコまで行く予定やから、1ヶ月くらい留守にするし、後はよろしゅうな」
    「承知しました」
     ハンがうなずき、踵を返しかけたところで――エリザが「あ、ちょっと」と呼び止めた。
    「なんです?」
    「最近どないなん?」
    「何がですか?」
    「プライベートの方や。仲良うしとるんか?」
     要点をぼかした問いに、ハンは自分なりに気を利かせたつもりで答える。
    「クーのことですか? 仲良くしてますよ」
    「59点」
    「ギリギリ落第点ですか。模範解答を教えてもらえるとありがたいですね」
    「アタシが聞きたかったんはメリーちゃんの方やな。そっちはどないやの」
    「ん、……んん」
     答えに詰まり、ハンは思わず目をそらしてしまう。
    「人と話する時は顔見るんやなかったんかいな」
    「揚げ足を取らないで下さい。……ええ、まあ、仲良くしてます、はい」
    「クーちゃんと囃(はや)しとる時より嬉しそうな口ぶりやな。そんな気ぃ合うてんの?」
    「そうですね、はい。クーと違って、どこへ行く時も笑顔で、素直に付いて来てくれますからね。変に嫌味を言われたりもせず」
    「さよか。そらよろしいな」
     エリザの返答に、ハンは引っかかるものを感じる。
    「何か不満が? やはりクーとくっつけたいと?」
    「ちゃうがな」
     エリザはハンに詰め寄り、強い口調で諭してきた。
    「アンタな、メリーちゃんがどんな娘なんか全然分かってへんやろ」
    「どう言う意味です?」
    「アタシは『気ぃ合うてるんか』ちゅうて聞いたけど、アンタの答えは『気が合う』やなくて、『言うコト聞いてくれる』やん。そんなん、アンタ本位の答えやんか。メリーちゃんがどう思てはるかの答え、アンタから出て来おへんのはなんでや?」
    「え……? いや、それは他人の意見ですから」
    「ソコが『分かってへん』言うてんねや。とぼけたコト言いよって、ホンマに」
     エリザはハンの額をぺちっと叩きつつ、こう続けた。
    「あの娘はタテ関係に弱いねん」
    「タテ?」
    「上のもんから何されても、あの娘は受け取ってまうタイプやねん。褒められたら素直に喜ぶし、怒られたら素直に反省する。そう言う娘や。でもな、ソレは逆に言うたら拒む方法を知らんっちゅうコトや。
     ソレを踏まえて、アンタの、いや、『尉官殿』『隊長殿』のしとるコト、してきよるコトに何も言わへんのは、なんでか分かるか? 普通に考えたら、雨ん中雪ん中まで測量行かされたら何かしら文句もあるやろうに、アンタはホンマに何にも思てへんと思とるんか?」
    「不満が無い、……のではなく、不満を口に出せない、と?」
     叩かれた額を押さえるハンに、エリザは「せや」とうなずく。
    「例え冗談のつもりでも、もしアンタが『捨て身で突撃しろ』言うたら、あの娘はホンマに突っ込むタイプやで。下手したら『死ね』言うても自殺しかねへん。アンタから受け取ったもんは――ええもんにしろ悪いもんにしろ――返す方法が分からへんのんや。
     あの娘にとってアンタはヨコの人やなくタテの人、ウエにおる人や。ソコ忘れてあの娘と付き合おうとしたら、絶対にアカン。分かったな?」
    「え、ええ、はい。肝に銘じます」
    「頼むで」
     面食らいつつも、ハンは深くうなずき、その場を後にした。
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