「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・空位伝 4
神様たちの話、第279話。
相性。
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4.
エリザからの忠告を受けてすぐ、ハンはマリアの部屋を訪ねていた。
「珍しいですねー、尉官があたし一人に用があるなんて。いつもなら皆でご飯食べに行くのに」
「ああ。内々で相談したいことがあってな」
「どっちのお話でしょ? クーちゃん? メリー?」
あっさり見透かされ、ハンは二の足を踏んでしまう。
「あ、……あー、と。なんでそうなる?」
「尉官があたしに内々で相談なんて、それ関係しか無いでしょ?」
「……そうなるよな」
「で、どっちなんですか?」
「メリーの方だ」
こう答えた途端、マリアの眼差しに冷えた色が混じる。
「お付き合いしたいと?」
「そう考えてはいる」
「だとしたらあたしは反対です」
きっぱりと否定され、ハンは苦々しげにうなる。
「どうしてもクーとくっつけたいのか?」
「それ以前の問題です」
「と言うと?」
「別に尉官が誰と付き合おうが、それは反対しません。でもメリーと付き合うのはダメです。や、メリーが悪い娘だってことじゃないです。めちゃくちゃいい娘です。だからこそ尉官が付き合うって言うのがダメなんです。尉官じゃ相性が悪すぎるんです」
「よく分からないな。何故俺じゃ駄目なんだ?」
尋ねたハンに、マリアは残念そうな目を向けてくる。
「あのですね、普段から尉官がどう言う風にメリーと接してるか、あたしもビートも間近で見てますけど、はっきり言って『押し付け』なんですよね、尉官の態度って」
「押し付け?」
「こないだの測量の時だって、メリーにああしろこうしろって次々指示してましたけど、あの娘、結構疲れた顔してましたよ。気付いてました?」
「……いや」
「でしょうね。メリーって上の人に自分の意見言うのが苦手な娘ですから、尉官に対しては『疲れた』とか言わないで、ニコニコしてるんですよね。あたしたちにもニコニコ接してましたけど、でも本当に疲れてるんだろうなーってのは、歩き方とか汗のかき方で分かります。そう言うとこ、尉官は本気で気付いてなかったんでしょ」
「あ、ああ」
ハンの返答に、マリアははーっと呆れたようなため息を漏らした。
「言わなきゃ分かんないタイプでしょ、尉官って。で、メリーは言えない性格の娘なんですよ。相性が絶望的に悪いんです。絶対付き合わせちゃダメな組み合わせです。もし尉官がメリーとお付き合いする、結婚するって話になったら彼女、死んじゃいますよ。ほぼ間違い無く尉官のせいで」
「俺のせいだって? まるで俺が彼女を殺すみたいな……」「そう言ってるんです」
ハンの抗弁をぴしゃりとさえぎり、マリアはハンをにらみつけた。
「尉官のメリーに対する接し方って、ぶっちゃけ『お人形遊び』なんですよね。何にも言わないお人形を自分勝手に愛でて、遊んで、弄んでるって感じの。本当にお人形相手にやってるならあたし、別に何も言いませんけど、それを人間相手にやってることが問題なんです。
そんな態度でお付き合いしたいって言ってるんなら、あたしはどんな手段使ってでも反対しますよ。じゃなきゃメリーが可愛そうですもん」
「……」
散々打ちのめされ、ハンは黙り込むしかなかった。
「話はそれだけですか?」
マリアに尋ねられ、ハンは「ああ」と返す。
「本当に?」
「何でだ?」
「もういっこの選択肢は、相談しないんですね」
「クーのことか?」
「相談したいなら勿論付き合いますけど、したくないなら、もう話は終わりですよ」
そのままマリアにじっと見つめられていたが――ハンは無言で、彼女の部屋を後にする。ドアに向かって、マリアは小さく吐き捨てた。
「なにさ、意気地無し。クーちゃんから逃げてるだけじゃん。逃げの方便に使われる方が10倍、かわいそうだよ」
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4.
エリザからの忠告を受けてすぐ、ハンはマリアの部屋を訪ねていた。
「珍しいですねー、尉官があたし一人に用があるなんて。いつもなら皆でご飯食べに行くのに」
「ああ。内々で相談したいことがあってな」
「どっちのお話でしょ? クーちゃん? メリー?」
あっさり見透かされ、ハンは二の足を踏んでしまう。
「あ、……あー、と。なんでそうなる?」
「尉官があたしに内々で相談なんて、それ関係しか無いでしょ?」
「……そうなるよな」
「で、どっちなんですか?」
「メリーの方だ」
こう答えた途端、マリアの眼差しに冷えた色が混じる。
「お付き合いしたいと?」
「そう考えてはいる」
「だとしたらあたしは反対です」
きっぱりと否定され、ハンは苦々しげにうなる。
「どうしてもクーとくっつけたいのか?」
「それ以前の問題です」
「と言うと?」
「別に尉官が誰と付き合おうが、それは反対しません。でもメリーと付き合うのはダメです。や、メリーが悪い娘だってことじゃないです。めちゃくちゃいい娘です。だからこそ尉官が付き合うって言うのがダメなんです。尉官じゃ相性が悪すぎるんです」
「よく分からないな。何故俺じゃ駄目なんだ?」
尋ねたハンに、マリアは残念そうな目を向けてくる。
「あのですね、普段から尉官がどう言う風にメリーと接してるか、あたしもビートも間近で見てますけど、はっきり言って『押し付け』なんですよね、尉官の態度って」
「押し付け?」
「こないだの測量の時だって、メリーにああしろこうしろって次々指示してましたけど、あの娘、結構疲れた顔してましたよ。気付いてました?」
「……いや」
「でしょうね。メリーって上の人に自分の意見言うのが苦手な娘ですから、尉官に対しては『疲れた』とか言わないで、ニコニコしてるんですよね。あたしたちにもニコニコ接してましたけど、でも本当に疲れてるんだろうなーってのは、歩き方とか汗のかき方で分かります。そう言うとこ、尉官は本気で気付いてなかったんでしょ」
「あ、ああ」
ハンの返答に、マリアははーっと呆れたようなため息を漏らした。
「言わなきゃ分かんないタイプでしょ、尉官って。で、メリーは言えない性格の娘なんですよ。相性が絶望的に悪いんです。絶対付き合わせちゃダメな組み合わせです。もし尉官がメリーとお付き合いする、結婚するって話になったら彼女、死んじゃいますよ。ほぼ間違い無く尉官のせいで」
「俺のせいだって? まるで俺が彼女を殺すみたいな……」「そう言ってるんです」
ハンの抗弁をぴしゃりとさえぎり、マリアはハンをにらみつけた。
「尉官のメリーに対する接し方って、ぶっちゃけ『お人形遊び』なんですよね。何にも言わないお人形を自分勝手に愛でて、遊んで、弄んでるって感じの。本当にお人形相手にやってるならあたし、別に何も言いませんけど、それを人間相手にやってることが問題なんです。
そんな態度でお付き合いしたいって言ってるんなら、あたしはどんな手段使ってでも反対しますよ。じゃなきゃメリーが可愛そうですもん」
「……」
散々打ちのめされ、ハンは黙り込むしかなかった。
「話はそれだけですか?」
マリアに尋ねられ、ハンは「ああ」と返す。
「本当に?」
「何でだ?」
「もういっこの選択肢は、相談しないんですね」
「クーのことか?」
「相談したいなら勿論付き合いますけど、したくないなら、もう話は終わりですよ」
そのままマリアにじっと見つめられていたが――ハンは無言で、彼女の部屋を後にする。ドアに向かって、マリアは小さく吐き捨てた。
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