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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・空位伝 6

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    神様たちの話、第281話。
    クーのきづかい。

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    6.
     この数ヶ月――主にハンのせいで――メリーに対して悪い印象を抱いていたクーだったが、彼女と面と向かって話す内、その印象を改めつつあった。
    「ねえ、メリー?」
    「はい、なんでしょうか」
    「あなた、今日は非番? お一人なのかしら」
    「はい、非番です。今日は誰からもお誘いが無かったので」
    「あなたから誰かを誘ったりはなさらないのかしら?」
    「ご迷惑かなと思って」
     メリーの答えに、クーは面食らった。
    「ご迷惑? そんなことで?」
    「相手の都合があるでしょうから」
    「お声をかけるだけなら迷惑でも何でも無いと存じますけれど」
    「でも申し訳無いって思わせたら、なんか、その」
    「あなた……」
     クーは思わず、メリーの手を取っていた。
    「えっ、……あの、で、殿下?」
    「あなたは距離の求め方よりも、人との付き合い方を学ぶべきと存じますわ。今日はもう、お勉強はおしまいになさい。それより今日は、わたくしと一緒にお過ごしなさい」
    「は、はい」

     クーはメリーを連れ、街を散策することにした。
    「そう言えばわたくし、あなたについて何も存じませんわね。歳はおいくつでしたかしら? 19?」
    「いえ、20歳になりました」
    「ああ、マリアと同い年と仰ってましたわね。ご出身は?」
    「イーストフィールドです。12歳の時に軍の学校に入って、17歳で卒配しました」
    「最初はあの、……エマのところに?」
    「え、ええ」
     これを聞いて、クーは肩をすくめた。
    「それはまあ、お気の毒としか申せませんわね。最初に就いたのが別の方のところであれば、あなたももう少し、気楽に人生を過ごせるようになっていたでしょうに」
    「そうですよね。お気を遣わせてしまって……」
     しゅんとした表情を見せるメリーに、クーは「そうではなくて」と返す。
    「わたくしはあの人でなしとは違います。一々顔色をうかがったり、謝ったりなさらなくて結構ですわ」
    「あっ、そ、その、申し訳……」
     なおも謝ろうとしたメリーの口に、クーは人差し指をちょん、と当てる。
    「メリー。わたくしはあなたの上司ではございませんし、歳もあなたより下です。わたくしに対しては、もっと親しい態度で接しなさい。わたくしのことも、『殿下』などと他人行儀なものではなく、……そうですわね、マリアのように『クーちゃん』と」
    「えっ、で、でも」
     戸惑うメリーの手を両手で包むように握り、クーはにっこりと笑みを浮かべて見せた。
    「よろしくね、メリー」
    「は、はい。では、……く、クーちゃん」
    「はい、よくできました。では――そうね、お茶は先程いただきましたから――お買い物はいかがかしら? エリザさんのお店を訪ねたことは?」
    「い、いえ」
    「ではそちらに。可愛いアクセサリがたくさんございますわよ。……一時期、丹念に店内を回ったことがございますから、案内もお任せなさい」
     その後も一日中、すっかり日が暮れるまで、クーはメリーをあちこちに案内した。最初は申し訳無さそうにしていたメリーも、クーが本心から仲良くしたいと思っていることが伝わったらしく、夕食を食べ終える頃には自然な笑顔を見せてくれた。
    「ごちそうさまです、……クーちゃん」
     まだ若干ぎこちないながらも、親しげに自分の名を呼んでくれたメリーに、クーも笑顔を向ける。
    「ええ。ご満足いただけたようで何よりですわ」
    「そんな、ご満足なんて、……あ、いえ、満足してないわけじゃないです。とても嬉しいです。あの、……こんなことを言ったら、クーちゃんは気を悪くしてしまうかも知れませんが」
     遠慮がちにしつつも、メリーは自分の気持ちを素直に打ち明けてくれた。
    「初めてお会いした時、その……、クーちゃんはわたしにあんまり、今日みたいに笑いかけてくれなかったので、嫌われていたんじゃないかって」
    「あー……」
     言われて振り返ってみると、確かに初対面の際、クーはメリーに対してあまりいい印象を持っていなかったのである。
    (ハンがこの娘の方ばかり見ていらっしゃいましたものね)
    「あの、でも、今日色々お話して、すごく優しいんだなって」
    「そう仰っていただければ幸いですわ」
    「……その、……そのですね」
     と、メリーが――やはり、遠慮がちながらも――こう続けた。
    「良ければまた、こうして誘っていただけると嬉しいです、あの、本当に」
    「ええ、勿論」
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