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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・遠望伝 2

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    神様たちの話、第284話。
    希望のニュース。

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    2.
     ミェーチからの報告を受けてすぐ、エリザはシェロ夫妻の元を訪ねた。
    「お久しぶりです、先生」
     シェロに深々と頭を下げられ、エリザは吹き出した。
    「ふっふ……、そんな似合わんコトせんでもええやないの。アンタらしくないわ」
    「ど、ども」
     もう一度、今度は軽めに頭を下げられたところで、エリザが切り出す。
    「聞いたで、アンタら子供できたんやってな」
    「あっ、は、はい」
    「今どんくらいなん?」
    「4ヶ月です」
     リディアが答え、エリザはぽんぽんと彼女の頭を撫でる。
    「ほんなら産まれるんは10月くらいか。顔色は良さそうやね。つわりとかは?」
    「少しあります。あまりご飯が食べられなくて」
    「って言っても、今までかご一杯に食べてたパンが半分になったくらいなんスけどね」
     シェロに突っ込まれ、リディアは顔を赤くする。
    「もう、そんなことばらさないで下さいな」
    「悪り、悪り」
    「ふっふふふ……」
     二人のやり取りを見て、エリザがまた笑い出す。
    「仲ええみたいやな。国の状況も悪くないみたいやし、アンタらに関しては全然心配いらへんな」
    「どうもです」
    「コレもチラッと聞いたけどアンタ、ミェーチさんの手伝いしとるって? ……いや、こんな言い方したら失礼やね。アンタは頭のええ子やから、相当の働きをしとるんやろうな。ホンマ、ようやっとるわ」
    「恐縮っス」
     照れた様子を見せたシェロの頭にも、エリザは手を載せる。
    「恐縮なんかせんでええ。アンタはよおやった。その点に関しては、アンタはハンくんを超えたな」
     と、その言葉を聞いた途端、シェロが真顔になる。
    「なんでアイツの名前が……」「アタシが分からんアホと思うとったんか?」
     が、シェロが声を荒げかけたところで、エリザがやんわりと差し込む。
    「アンタがいつもハンくんの影を追っとったコトは、アタシはよお知っとるで」
    「……っ」
     口をつぐんだシェロに、エリザが続ける。
    「剣の腕でも、戦闘指揮でも、アンタはハンくんに遅れを取った、よお追いつけへんと、事あるごとに歯噛みしとったやろ」
    「……はい」
    「そのせいでアホなコトもしでかしたけども、今のアンタは間違い無く、ハンくんを超えとる。実際な、アンタは結婚しとるけど、ハンくんはまだコドモみたいなコトわーわー言うて逃げ回っとるくらいやからな。その一点だけでも、アンタとハンくんのどっちが格上か、誰でも分かるやろ?」
    「……そっスかね」
     うつむきつつも、シェロの耳は真っ赤に染まっている。
    「アタシが保証したる。ハンくんはもう、アンタの足元にも及ばへん。もうあの子の影なんか、追う必要無い。コレからは奥さんと子供の方、ちゃんと向いたげや」
    「……はい。銘肝します」
    「うん、うん。気張いや」

     と――。
    「……ん?」
     耳に付けていたピアスにぴり、と刺激を感じ、エリザはシェロの頭から手を離す。
    「どしたんスか?」
    「連絡や。ちょとゴメンやで」
     エリザはかばんから「魔術頭巾」を取り出し、頭に巻き付けた。
    「『トランスワード:リプライ』、……誰や?」
    《あっ、先生! ビートです》
    「ビートくんか? どないしたん、そんな慌てた声出して?」
    《大変なんです! 尉官がマリアさんと殿下とケンカして……》
    「ただのケンカでアンタがそんな慌てるようなコトにはならんやろ? 何があったん?」
    《それが……》
     ビートから諍(いさか)いの内容を聞き、エリザは「アホか」と声を漏らした。
    「つまりハンくんがクーちゃんからメリーちゃんのコトでやいやい言われてキレよった上、横で聞いてたマリアちゃんが売り言葉に買い言葉で逆ギレしたっちゅうコトやな」
    《そうなります》
    「あんのアホ……。まあ、分かったわ。この後東山間部の行けるトコまで行こかと思とったけど、放っといたら変な飛び火するかも分からんからな。急いで戻るわ」
    《ありがとうございます》
    「後、本国への連絡は絶対させんときや」
    《本国へ? 流石にそれは無いと思いますが……》
    「アタシがおらん間に相談でけるような相手は、ゼロさんかゲートだけやからな。今はアカンと思てても、一人でイライラ抱えて変にこじらせたら、うっかりとんでもない手を打ちかねへんもんや」
    《そうですね……確かに》
    「こんな騒ぎが知れ渡ったら、ゼロさんが大喜びするだけやからな。非難の格好の口実になってまう」
    《分かりました。尉官と殿下から、目を離さないようにします》
    「待ち。力ずくで出張って止めるみたいなコトしたら、アンタにも迷惑かかるやろ。そもそもケンカ別れした二人を同時に監視するんも無茶な話やしな。しばらく『フォースオフ』使て妨害しとくんや。当面、ソレで十分やろ」
    《しかしそれだと、先生との連絡も……》
    「正午から1時間くらいとか、時間限定で魔術を解除しといたら大丈夫やろ。使える時間が分かっとったら連絡取るのんに問題無いしな」
    《了解です。では今から妨害します。次の連絡は明日の正午頃に。先生もお気を付けて》
    「ありがとさん。ほなな」
     通話が終わったところで、横で聞いていたシェロが苦い顔をした。
    「マジで俺よかコドモなのかも知れませんね、アイツ」
    「調子に乗らんの。言うてアンタも、まだ21歳やろ」
    「へへ……、すんません」
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