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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・遠望伝 5

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    神様たちの話、第287話。
    梟雄と暴君。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
     ほんの2、3秒前まで階下にいたはずのジーンが目の前に降り立ち、シェロは狼狽する。
    「うわ……!?」
     慌てて剣を構え、ジーンと対峙するが、シェロはこの時、己の末路を直感していた。
    (……やべえな。こんなのとマジにやり合ったら、どんなに考えても俺が死ぬ予感しか無えよ)
    「わざわざ海の向こうより訪れ、賤民共に味方する狂人がおると耳にしていたが、実際会ってみれば何のことは無し、年端も行かぬ小童ではないか。まあ、道理の分からぬ痴れ者と言う点では、同じことだが」
     ジーンは剣を下ろしたまま、一歩、また一歩と距離を詰めてくる。
    「しかし余の世界にいらぬ波風を立ててくれた者共の一人であることだ。生半可な処罰では、余の心は到底満足できぬ。となればどうするか? ふーむ、首を落とす程度ではつまらぬな。八つ裂きでもちと物足りぬ。焼いた石で挟むのはそこそこと言ったところであるが、今の気分では無い。腹を裂いて放っておくのは中々の愉悦であったが、流石に見飽きたし。はて、今回はどのように処したものか」
    「……っ」
     自分をなぶり殺しにする言葉を平然と連ねられ、シェロの背筋に冷たいものが走る。
    (冗談じゃねえ……! 何を楽しそうにッ!)
     シェロはジーンから視線を外さないようにしつつ、周囲の気配を探って打開策を考える。
    (簡単には逃げられない。中庭からココまでジャンプしてきやがった奴だぞ? 俺が背中見せて逃げようもんなら、2秒とかからず追いついて、そのまんま一刀両断だろうな。
     勿論、正面切って一対一で戦うのも無理だ。コイツの強さは、間違い無くアイツ以上だ。となりゃ絶対負ける。義父(おやじ)と一緒なら何とかなるかも知れねえけど、さっき手当てしてもらってたみたいだし、ソレが足とかひざとかだったら、こっちに駆け付けるには時間がかかるだろう。来てくれるまでコイツが呑気に待っててくれるってのか? 絶対無えよ)
     シェロは周囲の弓兵たちをチラ、と見て、策を組み立てる。
    (さっきと違って、ココには矢をさえぎれるようなモノは無い。コイツが廊下に入ってきた時、弓兵はビビって後退してくれたおかげで、俺以外の誰を盾にしようにも、流石に遠すぎる。さっきみたいに他人を盾にしようなんてクソみたいなコトはやらせねえ。……なら、コレだ!)
     思い付くと同時に、シェロは周囲に命令した。
    「弓兵、全員掃射! コイツを討てッ!」
     命じられるがまま、弓兵は矢を放つ。
    「ふん」
     飛んで来た矢を避けつつ、ジーンはシェロとの距離を詰める。
    (やっぱり来たな。今、完全に防御しようと思ったら、俺を盾にするしか無えもんな)
     矢の雨の中、ジーンは後一歩でシェロの体をつかめると言うところまで肉薄してきた。
    (今だッ!)
     シェロはわざと剣を遅めに、そしてジーンの顔を狙って振る。
    「なんだ? それで攻撃しているつもりか?」
     ジーンはその剣の切っ先を右の親指と人差し指でつまみ、事も無げに止めた。
    「それとも余に怯え……」「らああッ!」
     ジーンが何か言いかけたその瞬間、シェロは剣から手を離し、がら空きになっていたジーンの右胸に、目一杯拳を突き込んだ。
    「うっ、ぬ……ぅ」
     ぱき、と乾いた音を立てると共に、これまで薄ら笑いを浮かべていたジーンの顔に、初めて苦しげな色が差した。
    「き、さ……まっ」
     ジーンはつかんでいた剣を落とし、折れたであろうあばらに手をかざす。
    (ケッ、攻めるのは大好きでも攻められんのは苦手か? このクソ野郎ッ)
     大きな隙を見せたジーンの顔に、シェロはもう一度拳を叩き込んだ。
    「ぐぬっ!?」
     シェロより頭半分ほど低いジーンの体が、一瞬浮き上がる。
    (ものすげえジャンプだとか滅多切りだとかでちょっとビビってたけど、……なんだよ? 肉弾戦に持ち込んだらイケるのか?)
     ジーンは鼻から血を垂らし、ひざを着く。
    「……ぐ……くく……」
    「オラ、俺をブッ殺すんじゃねえのか!? んなトコでうずくまってないで、かかって来いよ!」
     優勢と見て、シェロは猛った声を上げる。
    「来ねえってんならッ……!」
     シェロは床に落ちていた剣を拾い、そのままジーンに斬りかかろうとした。

     だが、完全にジーンの頭に振り下ろしたはずの剣は、依然、床の上に落ちたままだった。
    「……え」
     とっさにもう一度つかもうとして――そこでようやく、シェロは自分の右腕が、剣の隣に転がっていることに気付いた。
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