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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・内乱伝 1

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    神様たちの話、第294話。
    騒ぐ遠征隊。

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    1.
     大急ぎで沿岸部、グリーンプールに戻って来たエリザたち一行を、兵士たちが出迎えた。
    「お、ご苦労さん」
     会釈しつつ、エリザは彼らの表情を見定める。
    (ビートくんの話聞いてからもう1週間ちょい経っとるし、トップの仲違いは下にももう伝わっとる頃や。となると下の人間が出る行動は3つ。混乱をきたして解決策――ま、アタシやな――が現れるまでまごついて困った顔しとるか、自分たちだけでも平静を繕おうとして疲れ切った顔しとるか、さもなくば……)
     と、兵士たちは意を決したような表情をエリザに向け、彼女が予測していた3つ目の行動に出た。
    「先生! 先生はどちらに付くのですか!?」
    「なんて?」
    「ご存知では無いかも知れませんが、今現在、遠征隊はシモン隊長派とタイムズ殿下派に分かれて対立しております! 直接の戦闘こそ起きてはおりませんが、それもまもなくのことではないかと……」「あー、と」
     エリザはにこっと笑みを返し、やんわりとさえぎった。
    「疲れとるんよ。ゴメンけど通してくれるか?」
    「す、すみません! ですが今、城の方へ向かうとなると、ご自分の立場をはっきりさせねばかえって危険ではないかと……」「なあ」
     なお話を続けようとする兵士に、今度はやや強めの語調で諭す。
    「アタシ疲れとる言うたやんな? そんな大事なコトをぼんやりしたアタマで聞いて、ハキハキっと答えられると思うか? よしんば答えたとして、ソレがちゃんとした理屈の上で出て来た、マトモな答えやと思うか? 今聞いてもろくなコトにならんで」
    「お、仰ることは理解できますが、しかし……」「ほんでな、アンタ」
     それでもまだ話を続けようとしたので、エリザはばっさりと言い切った。
    「その話、アタシの身が危険やなんや言うとったけど、アタシの心配して切り出したんや無いやろ? アタシがどっちに付くかで自分もそっち付こかと思てるんやろ? アタシが乗っかった側が安全やろと、そらみんな思うやろしな」
    「あ、う……」
     どうやら図星だったらしく、兵士はようやく口をつぐんだ。
    「ほな行くわ。変な気は起こさんようにな。後で恥かくで」
    「……りょ、了解です」
     敬礼し、それ以上しゃべらなくなった兵士に背を向け、エリザはそのまま丁稚を伴って城へと向かった。

     エリザが戻って来たことはすぐに兵士たちの間に伝わり、彼らは城の周りに集まって来ていた。
    「先生!」
    「お帰りなさい!」
    「お待ちしておりました!」
    「あー、はいはいはいはい、ただいま」
     居並ぶ兵士たちにぺらぺらと手を振りつつ、エリザは釘を差した。
    「アンタらもどっち派とか言うとるクチか? 言うとくけどな、そんなもんアタシが真面目に考えると思とるんか?」
    「えっ? ……い、いや、しかし」
    「その辺のしょうもない話は今、この場で忘れよし。アタシが何とかしたるさかいな。分かったか?」
    「しょ、承知しました」
    「分かったら持ち場に戻り。街の人が心配しよるで」
    「はっ、はい!」
     敬礼し、応じたものの、兵士たちの大半がまだ、その場から動こうとしない。
    (……あーっ、しょうもな!)
     白けた思いを懐きつつ、エリザは城の中に入り、中庭まで進んだ。
    「あー……、コホン」
     中庭の中央で立ち止まり、エリザは奥へ呼びかけた。
    「ハンくーん、クーちゃーん、ちょっとこっち来てんかー」
     日中の、騒然としているはずの城の中に、エリザの声がこだまする。しかし返事が無く、エリザはもう一度呼びかけた。
    「早よ来てやー。アタシがどんな回答するか、アンタら気ぃ揉んどるはずやろー? 聞こえてへんはずも無いよなー? アタシが帰って来たっちゅう話はもう伝わっとるはずやしなー? 近いトコで様子見とるはずやんなー?」
     と、ようやく中庭に、ハンとクー、そしてクーの後ろにマリアが付く形で現れた。
    「ただいまー」
     やって来た3人にエリザはぺら、と手を振るが、3人とも硬い表情を崩さず、応じない。そのまま対峙していたが、やがてハンが口を開いた。
    「エリザさん。既に聞き及んでいるでしょうが、現在この城、いえ、遠征隊は俺とそっちの2人とで対立した状況にあります。これは明らかな軍規違反、反逆行為です。俺に付くのが道理と言うものでしょう」
    「わたくしはそうは存じませんわね」
     クーが口を挟む。
    「あなたが統率能力を喪失していることは明白ですもの。この状況を看過すれば遠征隊の崩壊は目に見えております。であれば実力行使を伴ってでも、正しい状況に戻す努力をいたすべきであると、わたくしは存じます」
    「いい加減にしろ。俺が無能だと言うのか? 君こそ子供じみた勝手なわがままで、全軍を振り回す攪乱者だ」
    「その言葉、そっくりあなたにお返しいたします。あなたこそ勝手な理屈で皆に多大な迷惑をかける恥知らずですわ」
    「なんだと……!?」
     途端に喧嘩し始めた二人に、エリザがやんわりと、しかし強い語調で割って入った。
    「アンタら、ソコまでにしとき。相手とやいやい言うためにココに集まって来たワケやないわな? アタシから答えを聞きたいんやろ? 違うか?」
    「……ええ。はっきりとお願いします」
    「どうぞ、エリザさん」
     両者が静まったところで、エリザはハンの前に歩み出て、手を差し出した。
    「……!」
     クーが信じられない、と言いたげな顔をしたが、エリザは構うことなく――その手をハンの右ほおに叩き付けた。
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