「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・内乱伝 2
神様たちの話、第295話。
おかんの両成敗。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
ばっちん、と乾いた音が中庭にこだまする。
「う……っ」
一瞬前まで得意げだったハンの表情が、愕然としたものに変わる。
「な、何故です?」
ほおを押さえ、尋ねるハンに構わず、エリザはくるんと踵を返してクーの方へと歩く。
「ありがとうございま……」
頭を下げかけたクーの横をすり抜け、エリザは彼女の背後にいたマリアのすぐ前に立つ。
「え?」
きょとんとするマリアにも、エリザは平手を見舞った。
「ひゃっ……!?」
「え? えっ?」
頭を下げかけた姿勢のまま硬直したクーに向き直り、エリザは彼女のあごを右手でつかんだ。
「アンタもや」
「え、ちょ、あっ」
目を白黒させるクーのひたいに、エリザはデコピンを放った。
「きゃ……っ」
3人揃って自分の顔を押さえたところで、エリザは大声で怒鳴りつけた。
「アンタらこんなしょうもないコトで皆に迷惑かけんなや! 大概にせえや、大概に!」
「う……」
「アタシがどっちに付く、どっちの味方するとか、そんなアタマ悪いコトやってくれるて、アンタら本気で思うとったんか!? はーっ、しょうもな! そんな子供のケンカに真面目に付き合うと思うんか!? 『お母ちゃーん、あの子がいじめよんねん、うぇーん』て泣き付いたら、アタシがアタマ撫でて味方してくれるとでも思てたんか! アンタらええトシこいた大人やろが! しかも隊長や、お姫様やとお偉い肩書き持った人間やろ!? ソレがなんや、向こうが悪いー、こっちは絶対間違ってませーんて、アタマの悪いケンカしくさりよって! しかもソレを軍規攪乱やの統率の乱れやの、もっともらしいコト抜かして正当化しようと、皆巻き込んでこんな大騒ぎしよって!
ええか、はっきり言うたる! アンタらのやっとるコトはただのケンカや! そんなもんにアタシが真面目な顔してどっちの側に付く、どっちの側を支持するて言うてくれると、本気で思とったんか!? アホちゃうかッ!」
「……」
揃ってうつむき、黙り込んだ3人に背を向け、エリザは丁稚たちに命じた。
「ロウくん、机と椅子持って来て。アタシとこの3人の分な。イワンくん、お茶とお菓子持って来て。あと……」
エリザは辺りを見回しつつ、声をかけた。
「ビートくーん、おるかー? ちょとこっち来てー」
「……はい」
どこからかビートが現れ、エリザの側に来る。
「大変やったね。ありがとさん」
「いえ、先生のためであれば」
「ど……どう言うことだ? ビート、お前は一体どこで、何を……?」
うつろな目をして尋ねたハンに、エリザが代わりに答えた。
「今回のケンカで自分の側を正当化しようと思たら、アタシを味方に付けるか、さもなくばゼロさんを味方に付けるかしか無いわな。となればどっちかに『魔術頭巾』で連絡取ろうとするやろな、っちゅうコトくらいは想像できる。
ただ、下手に話通してゼロさんの怒りを買ったら元も子も無い。普段の冷静なアンタらやったらソレくらいは考えるやろけど、にらみ合って何日も経ったら、理屈より感情が前に出てまうやろうからな。いっぺん、連絡取ろうとしたやろ?」
「な、何故それを、……いや、そう、ですね。エリザさんなら、思い当たってしかるべき話でしょうね」
素直にうなずいたハンに、マリアも続く。
「あたしたちもです。てっきり、尉官側の工作と思ってたんですが……」
「はっきり分かったやろ?」
そう尋ねたエリザの意図が読めないらしく、ハンも、クーたちもきょとんとする。それを受けて、エリザはこう続けた。
「アンタらがどんだけしょうもないコトでアタマ一杯になっとったかが、や。アタシの工作やと、コレっぽっちも思うてへんかったコトがええ証拠や」
「……どうやら、そうですね」
辛うじてハンがそう答え、うなだれたところで、丁稚たちが席の準備を終えた。
@au_ringさんをフォロー
おかんの両成敗。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
ばっちん、と乾いた音が中庭にこだまする。
「う……っ」
一瞬前まで得意げだったハンの表情が、愕然としたものに変わる。
「な、何故です?」
ほおを押さえ、尋ねるハンに構わず、エリザはくるんと踵を返してクーの方へと歩く。
「ありがとうございま……」
頭を下げかけたクーの横をすり抜け、エリザは彼女の背後にいたマリアのすぐ前に立つ。
「え?」
きょとんとするマリアにも、エリザは平手を見舞った。
「ひゃっ……!?」
「え? えっ?」
頭を下げかけた姿勢のまま硬直したクーに向き直り、エリザは彼女のあごを右手でつかんだ。
「アンタもや」
「え、ちょ、あっ」
目を白黒させるクーのひたいに、エリザはデコピンを放った。
「きゃ……っ」
3人揃って自分の顔を押さえたところで、エリザは大声で怒鳴りつけた。
「アンタらこんなしょうもないコトで皆に迷惑かけんなや! 大概にせえや、大概に!」
「う……」
「アタシがどっちに付く、どっちの味方するとか、そんなアタマ悪いコトやってくれるて、アンタら本気で思うとったんか!? はーっ、しょうもな! そんな子供のケンカに真面目に付き合うと思うんか!? 『お母ちゃーん、あの子がいじめよんねん、うぇーん』て泣き付いたら、アタシがアタマ撫でて味方してくれるとでも思てたんか! アンタらええトシこいた大人やろが! しかも隊長や、お姫様やとお偉い肩書き持った人間やろ!? ソレがなんや、向こうが悪いー、こっちは絶対間違ってませーんて、アタマの悪いケンカしくさりよって! しかもソレを軍規攪乱やの統率の乱れやの、もっともらしいコト抜かして正当化しようと、皆巻き込んでこんな大騒ぎしよって!
ええか、はっきり言うたる! アンタらのやっとるコトはただのケンカや! そんなもんにアタシが真面目な顔してどっちの側に付く、どっちの側を支持するて言うてくれると、本気で思とったんか!? アホちゃうかッ!」
「……」
揃ってうつむき、黙り込んだ3人に背を向け、エリザは丁稚たちに命じた。
「ロウくん、机と椅子持って来て。アタシとこの3人の分な。イワンくん、お茶とお菓子持って来て。あと……」
エリザは辺りを見回しつつ、声をかけた。
「ビートくーん、おるかー? ちょとこっち来てー」
「……はい」
どこからかビートが現れ、エリザの側に来る。
「大変やったね。ありがとさん」
「いえ、先生のためであれば」
「ど……どう言うことだ? ビート、お前は一体どこで、何を……?」
うつろな目をして尋ねたハンに、エリザが代わりに答えた。
「今回のケンカで自分の側を正当化しようと思たら、アタシを味方に付けるか、さもなくばゼロさんを味方に付けるかしか無いわな。となればどっちかに『魔術頭巾』で連絡取ろうとするやろな、っちゅうコトくらいは想像できる。
ただ、下手に話通してゼロさんの怒りを買ったら元も子も無い。普段の冷静なアンタらやったらソレくらいは考えるやろけど、にらみ合って何日も経ったら、理屈より感情が前に出てまうやろうからな。いっぺん、連絡取ろうとしたやろ?」
「な、何故それを、……いや、そう、ですね。エリザさんなら、思い当たってしかるべき話でしょうね」
素直にうなずいたハンに、マリアも続く。
「あたしたちもです。てっきり、尉官側の工作と思ってたんですが……」
「はっきり分かったやろ?」
そう尋ねたエリザの意図が読めないらしく、ハンも、クーたちもきょとんとする。それを受けて、エリザはこう続けた。
「アンタらがどんだけしょうもないコトでアタマ一杯になっとったかが、や。アタシの工作やと、コレっぽっちも思うてへんかったコトがええ証拠や」
「……どうやら、そうですね」
辛うじてハンがそう答え、うなだれたところで、丁稚たちが席の準備を終えた。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~