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    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・内乱伝 4

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    神様たちの話、第297話。
    エリザの事情聴取。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
    「ともかくや」
     ハンたち三人を黙らせたところで、エリザは静かに尋ねた。
    「今めっちゃめちゃ大事な用件がいっこあるけども、こっちの問題をどうにかせな、その話するどころやないからな。いっぺん、きっちりハラ割って話しよか。事の発端はそもそも何やねんな?」
    「それは……」
     言い淀むハンに対し、クーははっきりと答える。
    「メリーの件ですわ。この方、メリーをあちこちに連れ回すばかりでなく、自分の伴侶にしようとお考えのようです。本人の了承無く」
    「い、いや、そこまでは」
    「ほな、ドコまでがホンマや?」
     尋ねたエリザに、ハンは困った顔を向ける。それを見て、エリザはようやくにこっと笑みを向けた。
    「いや、別に責め立てるつもりはあらへんよ。長い付き合いやからな、アンタが相手の返事無しに結婚するもんと決め付けるような、アタマおかしいコトするとは思てへん。流石にアンタは、そんなクズとちゃう。ソレは十分分かっとる。その上で、アンタはドコまで考えとったか。ソレを聞きたいねん」
    「そうですね、……その、一部は、彼女の言った通りでしょう」
     言葉を濁しかけたハンを、今度はにらみつける。
    「はっきり言い。まず、あっちこっち連れ回したっちゅうのんは? 任務名目で付き合わせたっちゅうコトか?」
    「それは、ええ、確かに、はい」
    「で、アンタはホンマに結婚したいと思てるん?」
    「それは、……それは、その」
    「はっきり言えへんか? いや、責めてるんやないで。なんちゅうたらええかな、ソレ、自分でも本気でそう思っとったんか、ソレとも周りにやいやい言われてムキになってきとったせいか、判断付かへんっちゅう感じか?」
     そう言われて、ハンははっとしたような顔をした。
    「……確かに、その、後者の指摘に、当てはまると思います。……ええ、強情を張ってしまった点は、少なからずあります」
    「やろなぁ。うまいコト相談もでけへんまま、アタマん中でこじれてしもたんやな。ま、アンタの気持ちはソレでよお分かったわ。で、次はクーちゃんの方やけども」
    「は、はい」
    「メリーちゃんの気持ちをくんでやっとったっちゅうようなコトを言って回っとったみたいやけど、ホンマにか?」
    「ええ、間違いございません。わたくしはメリーのためを思って……」「ほんならや」
     クーの主張をさえぎり、エリザはやんわりとした口調を作って尋ねる。
    「今、メリーちゃんドコにおるんか、当然分かるやんな? アンタの主張が正しいとすれば、放っといたらハンくんに言い寄られて何やかんやされてまうっちゅう可能性も大アリやもんな。ほんなら安全なトコにかくまっとくくらいのコトは、ホンマにあの娘のコトを考えとるんやったら、してるはずやもんなぁ?」
    「あ……、と」
    「で、ドコにおるん? アンタの部屋か? ソレともマリアちゃんトコか?」
    「えっと、その……」
     口ごもるクーに、エリザは依然やんわりと、しかしトゲのある言い方で追求する。
    「まさかなー、知らんっちゅうコトはあらへんよなー? まさかまさか、ハンくんの非難に躍起になるあまり、すっかりメリーちゃんのコトを忘れとったなんてはしたないコト、お姫サマがやるワケ無いもんなー? ほんで、ドコにいはるん?」
    「……そ、その、あの、ですね」
    「あら? ホンマのホンマにアンタ、メリーちゃんのコト放っぽってたんか? まさかなぁ? ま・さ・か・や・ん・なぁ!?」
    「……ご、ごめんなさい」
    「いや、ゴメンなんか聞きたないねん。アタシが聞いとるんは、ドコにおるかっちゅうコトや。どないやねんな?」
     次第に丸みが消えていくエリザの語勢に、クーは泣きそうな顔になる。
    「……わ、……分かり、ません」
    「ホンマにか? アンタ、メリーちゃんのためにこんな大騒ぎしとったんやないのんか? そんな大義名分吐いといて、その中心の人間のコト、今の今までコロっと忘れとったっちゅうんか?」
    「……ご、ごめ」「ゴメンなんか聞きたないねん! 謝って自分勝手に話終わらそうとすな!」
     バン、とエリザはテーブルを叩く。
    「ひっ……」
    「ほんならアンタはメリーちゃんのために、人のためにやったって言いながら、結局自分のワガママ通そうとしとっただけやっちゅうんやな!? ソレでどんだけの人間に迷惑かかっとるか、分からへんのか!?」
    「……うっ、う……」
     ついにクーはうつむき、顔を両手で覆って泣き出してしまった。その縮こまった姿を見て、エリザはため息を付く。
    「はあ……。もうええ、部屋に帰り。アンタから聞くコトはもうあらへんから。反省しいや」
    「……グス……グス……ひっく……」
     エリザに退席の許可を得たが、クーはまだ椅子に固まったままである。見かねて、エリザは傍らのロウを手招きした。
    「ロウくん、クーちゃんを部屋に送ってもろてええか?」
    「うっス」
     ロウに手を引かれるまま、クーはその場から立ち去った。
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