「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・占験録 2
晴奈の話、第253話。
猫侍と虎格闘家。
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2.
大会4日目(5月24日)。
2日続いた雨があがり、カラッと晴れた青空が広がっていた。
「皆様お待たせいたしました! ただいまよりエリザリーグ第2戦、ミーシャ対コウを開始いたします!」
心なしか、アナウンスもさわやかそうに弾んでいる。
「東口からはシリン・ミーシャ! 前回のエリザリーグにも出場した豪腕の女傑です! 女性としては異例の身長179センチ、その体躯から繰り出される技はどれも強烈! キョーレツの一言に尽きます!
反面、流石に虎獣人だと称すべき俊敏さも兼ね備えております! 前回の優勝者、ウィアードでさえも、その身のこなしには舌を巻いたほど!
軽快なフットワークと抜群の破壊力を併せ持った『大』女傑! 今大会、注目の選手です!」
大歓声に応えるように、シリンはニコニコと笑いながらリングに上がる。
「みんなー、めっちゃ応援してなー! ウチ、ちょー頑張るから!」
両手を振って、観客の声援に応える。それを受けて、より観客の歓声が大きくなった。
「シリンちゃーん、サイコー!」
「ガンバレ、ガンバレー!」
「ファイトー!」
声援のほとんどが男性のものである。中には巨大な応援旗や垂れ幕、太鼓や楽器まで用意して応援する者もいる。
「すっごいわねー……。あの子、その気になったら新興宗教かなんか作れんじゃない?」
シリンの応援を観客席で見ていた小鈴は、熱狂的に声援を送る男たちに半ば呆れていた。
「確かに……。何だか目が据わってますわね、皆さん」
フォルナも若干引き気味に、沸き立つ観客を眺めている。
「でも、晴奈もファンの多さじゃ負けてないわよ。ホラ、アイツ」
小鈴は最前列に座っている、黒服の猫獣人を指差す。
「あ、フェリオさん」
「またサボってんのね」
フェリオもシリン側の応援団と同じように、垂れ幕を抱えている。
シリンの応援がひとしきり盛り上がったところで、司会が晴奈の紹介に移った。
「西口からはセイナ・コウ! 今大会、初出場の選手です!
昔からエリザリーグをご愛顧いただいている皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか、あの『瞬殺の女神』伝説を! かつて『キング』を気合だけで撃破した、あのユキノ・ヒイラギ選手! 彼女の愛弟子こそ、このコウ選手なのです!
コウ選手は見事、その伝説を復活させました! ニコルリーグまでの戦績、なんと全勝! 勝率100%! しかも一試合に30秒以上かけたことは、これまで一度もありません!
まさに、ま・さ・に! 『瞬殺の女神』、再臨であります!」
大仰な宣伝に、晴奈は若干照れつつ入場した。
(まったく……。どこで調べたのだ、師匠のことなど)
「コウ先生! 頑張ってー!」
「先生、応援してまーす!」
「今日もかっこいいっスよ、コウ先生!」
晴奈の応援は、老若男女が入り混じっている。16年前に出場した雪乃からのファンもいれば、純粋に晴奈自身の戦い方、容姿に惚れ込んだ者も多い。こちらの応援も、シリン側に負けないくらいの規模になっている。
両者がリングに上がったことで、観客席は怒号に近い大声援が鳴り響いた。
(ははは……。正直、少しうるさいな)
晴奈は困った様子でシリンに目配せしようとした。
が、途中でそれはやめておいた。シリンの目が、これまで見てきたものとはまったく違う。非常に殺気立った、獲物を狙う目をしていたからである。
(真剣な目だ。……不甲斐無い、浮ついているのは私の方か)
晴奈も気を引き締め、シリンをしっかりと見据えた。
司会者がもう一度アナウンスして、会場の熱気をさらに盛り上げていく。
「さあ、エリザリーグ史上稀に見る、女性同士の対決が始まります!
二つの華がどう絡み、戦い、散っていくのか!? 私自身も大注目・大興奮してしまう、見所ある一戦です!
それでは、試合開始ッ!」
開始の合図と共に、晴奈とシリン、二人は互いに飛びかかった。
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大会4日目(5月24日)。
2日続いた雨があがり、カラッと晴れた青空が広がっていた。
「皆様お待たせいたしました! ただいまよりエリザリーグ第2戦、ミーシャ対コウを開始いたします!」
心なしか、アナウンスもさわやかそうに弾んでいる。
「東口からはシリン・ミーシャ! 前回のエリザリーグにも出場した豪腕の女傑です! 女性としては異例の身長179センチ、その体躯から繰り出される技はどれも強烈! キョーレツの一言に尽きます!
反面、流石に虎獣人だと称すべき俊敏さも兼ね備えております! 前回の優勝者、ウィアードでさえも、その身のこなしには舌を巻いたほど!
軽快なフットワークと抜群の破壊力を併せ持った『大』女傑! 今大会、注目の選手です!」
大歓声に応えるように、シリンはニコニコと笑いながらリングに上がる。
「みんなー、めっちゃ応援してなー! ウチ、ちょー頑張るから!」
両手を振って、観客の声援に応える。それを受けて、より観客の歓声が大きくなった。
「シリンちゃーん、サイコー!」
「ガンバレ、ガンバレー!」
「ファイトー!」
声援のほとんどが男性のものである。中には巨大な応援旗や垂れ幕、太鼓や楽器まで用意して応援する者もいる。
「すっごいわねー……。あの子、その気になったら新興宗教かなんか作れんじゃない?」
シリンの応援を観客席で見ていた小鈴は、熱狂的に声援を送る男たちに半ば呆れていた。
「確かに……。何だか目が据わってますわね、皆さん」
フォルナも若干引き気味に、沸き立つ観客を眺めている。
「でも、晴奈もファンの多さじゃ負けてないわよ。ホラ、アイツ」
小鈴は最前列に座っている、黒服の猫獣人を指差す。
「あ、フェリオさん」
「またサボってんのね」
フェリオもシリン側の応援団と同じように、垂れ幕を抱えている。
シリンの応援がひとしきり盛り上がったところで、司会が晴奈の紹介に移った。
「西口からはセイナ・コウ! 今大会、初出場の選手です!
昔からエリザリーグをご愛顧いただいている皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか、あの『瞬殺の女神』伝説を! かつて『キング』を気合だけで撃破した、あのユキノ・ヒイラギ選手! 彼女の愛弟子こそ、このコウ選手なのです!
コウ選手は見事、その伝説を復活させました! ニコルリーグまでの戦績、なんと全勝! 勝率100%! しかも一試合に30秒以上かけたことは、これまで一度もありません!
まさに、ま・さ・に! 『瞬殺の女神』、再臨であります!」
大仰な宣伝に、晴奈は若干照れつつ入場した。
(まったく……。どこで調べたのだ、師匠のことなど)
「コウ先生! 頑張ってー!」
「先生、応援してまーす!」
「今日もかっこいいっスよ、コウ先生!」
晴奈の応援は、老若男女が入り混じっている。16年前に出場した雪乃からのファンもいれば、純粋に晴奈自身の戦い方、容姿に惚れ込んだ者も多い。こちらの応援も、シリン側に負けないくらいの規模になっている。
両者がリングに上がったことで、観客席は怒号に近い大声援が鳴り響いた。
(ははは……。正直、少しうるさいな)
晴奈は困った様子でシリンに目配せしようとした。
が、途中でそれはやめておいた。シリンの目が、これまで見てきたものとはまったく違う。非常に殺気立った、獲物を狙う目をしていたからである。
(真剣な目だ。……不甲斐無い、浮ついているのは私の方か)
晴奈も気を引き締め、シリンをしっかりと見据えた。
司会者がもう一度アナウンスして、会場の熱気をさらに盛り上げていく。
「さあ、エリザリーグ史上稀に見る、女性同士の対決が始まります!
二つの華がどう絡み、戦い、散っていくのか!? 私自身も大注目・大興奮してしまう、見所ある一戦です!
それでは、試合開始ッ!」
開始の合図と共に、晴奈とシリン、二人は互いに飛びかかった。



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