「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・決意伝 1
神様たちの話、第301話。
遠い反応。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
皇帝の、突然の単騎での襲撃と言う異様な事態を受け、ハンとエリザはゼロに緊急連絡を行った。
《とても信じられない。率直に言わせてもらうなら、君たち二人の正気を疑っているところだ》
「でしょうな。実際に見たアタシら自身、ありえへんコトやと思いますからな。でも事実は事実です。目撃者も多数あるコトですし、そして実際、西山間部において被害が出とります」
《それもこれも、すべて君からの伝達に過ぎない。……しかし君からの報告以上に、信憑性のある情報など無い。仮に君から『異世界から現れた巨人が突如、北の大陸を引きちぎり始めた』などと突拍子も無い報告を受けたとしても、現時点で私は、それを信じることしかできない。だから君たちが報告したことは、私は原則的かつ全面的に、ただ事実として受け止める。
それを踏まえて、私の回答を聞いて欲しい》
「なんです?」
尋ねたエリザに、ゼロは呆れ切った様子の声色で答えた。
《静観を続けてくれ。こちらからの進軍は決して行ってはならない》
「……言うと思いましたわ。ほな、皇帝はアタシらにも、ゼロさん本人にとっても、コレっぽっちも脅威や無いと?」
《そうは言っていない。確かに君たちの言葉を信じるのであれば、皇帝はいついかなる場所へも出撃することができ、誰が相手であろうと暗殺することができると言うことになる。君たちの身が危ういことは確かだし、もしかしたら私が直接狙われる危険もある。その点は認めよう。
だが遠征隊を山間部へ向かわせることは、事態の不可逆的な悪化を意味することにもなる。聡明な君であれば、その懸念に当然思い当たっているはずだ》
「確かに遠征隊が帝国を攻めに行くぞとなれば、コレは最終も最終、ゼロさんが望まない形での結末を迎えるコトになるでしょうな。アタシらが全滅するにせよ、実力行使で帝国首都を陥落させるにせよ。でもですな、このままじーっとしとったら全滅は必至です。現状、皇帝の襲撃を防ぐ手立ては何一つありませんからな。となれば攻撃は最大の防御、即ち討たれる前に皇帝を討つしか……」
《理屈は分かる。だが、我々はあくまで友好関係を結ぶべく来訪したのであって、侵略のためでは無い。その前提を覆すような行為は、私には認められない》
「……ええ加減にして下さいよ、ゼロさん」
エリザの声に、怒りの色がにじむ。
「ほんならなんですか、アタシらはただただココでボーッとして、皇帝に殺されるんを待っとけっちゅうんですか?」
《そうは言っていない。勿論、襲撃してきた場合には自衛を前提として応戦することは認める。君たちならそれは可能だろう? あくまでこちらからの攻撃は行わないように、と言いたいんだ。分かったね?》
「あのですな、もっぺん同じコト言わなあきませんか? いつ皇帝が襲って来るか分からんっちゅうのんに……」《それじゃ。以上。またね。じゃあ》「あっ、ちょ、待っ、……ああ!?」
無理矢理ゼロに通信を切られ、エリザは口をあんぐりと開ける。
「あのおっさん、アタマおかしいんか!?」
「ふ、不敬ですよ、エリザさん」
「不敬も滑稽もあるかいなッ! ちーともこっちが危ないっちゅうのんが伝わってへんな、もおっ! 本気でアタシやハンくんが殺されでもせえへん限り、ホンマに何もせえへんつもりか」
「しないつもりでしょう。むしろそれを望んでいるかも知れません」
ハンの言葉に、エリザは目を剥く。
「アタシに死んでほしいっちゅうコトか。せやろな、あのおっさんの思惑やと」
「はなはだ遺憾ですが、恐らくは。……いや、そこまでは思わないまでも、やはり我々の報告は嘘と思われているんでしょう。陛下は我々が帝国を攻撃したがっていると思い込んでいるようですからね」
「『帝国が手ぇ出してきよったからこっちもお返しや』、を口実に開戦するつもりやと思われとる、……っちゅうコトか。まあ、せやろなぁ。アタシも――仮にゲートやアンタから――こうして口頭で同じ話聞かされたら、疑うやろからな。はっきり証拠を出すか、もっと切羽詰まった状況にならへん限りは、ゼロさんは動こうとせえへんやろな」
「……困りましたね」
ハンもエリザも揃って黙り込み、同時にため息を付いた。
@au_ringさんをフォロー
遠い反応。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
皇帝の、突然の単騎での襲撃と言う異様な事態を受け、ハンとエリザはゼロに緊急連絡を行った。
《とても信じられない。率直に言わせてもらうなら、君たち二人の正気を疑っているところだ》
「でしょうな。実際に見たアタシら自身、ありえへんコトやと思いますからな。でも事実は事実です。目撃者も多数あるコトですし、そして実際、西山間部において被害が出とります」
《それもこれも、すべて君からの伝達に過ぎない。……しかし君からの報告以上に、信憑性のある情報など無い。仮に君から『異世界から現れた巨人が突如、北の大陸を引きちぎり始めた』などと突拍子も無い報告を受けたとしても、現時点で私は、それを信じることしかできない。だから君たちが報告したことは、私は原則的かつ全面的に、ただ事実として受け止める。
それを踏まえて、私の回答を聞いて欲しい》
「なんです?」
尋ねたエリザに、ゼロは呆れ切った様子の声色で答えた。
《静観を続けてくれ。こちらからの進軍は決して行ってはならない》
「……言うと思いましたわ。ほな、皇帝はアタシらにも、ゼロさん本人にとっても、コレっぽっちも脅威や無いと?」
《そうは言っていない。確かに君たちの言葉を信じるのであれば、皇帝はいついかなる場所へも出撃することができ、誰が相手であろうと暗殺することができると言うことになる。君たちの身が危ういことは確かだし、もしかしたら私が直接狙われる危険もある。その点は認めよう。
だが遠征隊を山間部へ向かわせることは、事態の不可逆的な悪化を意味することにもなる。聡明な君であれば、その懸念に当然思い当たっているはずだ》
「確かに遠征隊が帝国を攻めに行くぞとなれば、コレは最終も最終、ゼロさんが望まない形での結末を迎えるコトになるでしょうな。アタシらが全滅するにせよ、実力行使で帝国首都を陥落させるにせよ。でもですな、このままじーっとしとったら全滅は必至です。現状、皇帝の襲撃を防ぐ手立ては何一つありませんからな。となれば攻撃は最大の防御、即ち討たれる前に皇帝を討つしか……」
《理屈は分かる。だが、我々はあくまで友好関係を結ぶべく来訪したのであって、侵略のためでは無い。その前提を覆すような行為は、私には認められない》
「……ええ加減にして下さいよ、ゼロさん」
エリザの声に、怒りの色がにじむ。
「ほんならなんですか、アタシらはただただココでボーッとして、皇帝に殺されるんを待っとけっちゅうんですか?」
《そうは言っていない。勿論、襲撃してきた場合には自衛を前提として応戦することは認める。君たちならそれは可能だろう? あくまでこちらからの攻撃は行わないように、と言いたいんだ。分かったね?》
「あのですな、もっぺん同じコト言わなあきませんか? いつ皇帝が襲って来るか分からんっちゅうのんに……」《それじゃ。以上。またね。じゃあ》「あっ、ちょ、待っ、……ああ!?」
無理矢理ゼロに通信を切られ、エリザは口をあんぐりと開ける。
「あのおっさん、アタマおかしいんか!?」
「ふ、不敬ですよ、エリザさん」
「不敬も滑稽もあるかいなッ! ちーともこっちが危ないっちゅうのんが伝わってへんな、もおっ! 本気でアタシやハンくんが殺されでもせえへん限り、ホンマに何もせえへんつもりか」
「しないつもりでしょう。むしろそれを望んでいるかも知れません」
ハンの言葉に、エリザは目を剥く。
「アタシに死んでほしいっちゅうコトか。せやろな、あのおっさんの思惑やと」
「はなはだ遺憾ですが、恐らくは。……いや、そこまでは思わないまでも、やはり我々の報告は嘘と思われているんでしょう。陛下は我々が帝国を攻撃したがっていると思い込んでいるようですからね」
「『帝国が手ぇ出してきよったからこっちもお返しや』、を口実に開戦するつもりやと思われとる、……っちゅうコトか。まあ、せやろなぁ。アタシも――仮にゲートやアンタから――こうして口頭で同じ話聞かされたら、疑うやろからな。はっきり証拠を出すか、もっと切羽詰まった状況にならへん限りは、ゼロさんは動こうとせえへんやろな」
「……困りましたね」
ハンもエリザも揃って黙り込み、同時にため息を付いた。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~