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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・決意伝 2

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    神様たちの話、第302話。
    一転。

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    2.
    「ともかく、このまんま二人で苦い顔しとってもラチ明かへん。明日また連絡するとして、説得の材料を整えなな」
    「ふむ。……でも、どうするんです? 経緯をすべて伝えてあの返事ですよ」
    「せやな。となると、……ちょと体裁悪いけども、泣き落としかなー」
     エリザは胸元から煙管を取り出し、火を点ける。
    「さっき叱り飛ばしたばっかりやけど、クーちゃんにも説得に回ってもらおか。アタシからはアカンかっても、娘からやったら多少は聞く耳持つかも分からんし」
    「しかしクーは先程の襲撃を知らないはずです。恐らく部屋で泣き崩れていたでしょうから」
    「ソコから説明せなアカンなぁ。しゃあないけど」
     二人は連れ立って、クーの部屋へと向かった。
    「クーちゃーん、ゴメンけどちょとええかなー?」
     エリザが猫なで声を出しつつトントンとドアを叩――こうとして、「あら?」と声を上げた。
    「開いとるわ。おらんのかな」
    「え?」
     ハンもドアに目をやり、首をかしげる。
    「妙ですね。流石にあれだけ平静を崩していれば、閉じこもっているものと……」
    「アタシもそう思ててんけど」
     エリザはドアを開け、中の様子を確かめる。
    「クーちゃん、ゴメンやで。……おらんな?」
    「……エリザさん」
     ハンも部屋の中を一瞥し、神妙な顔になった。
    「嫌な予感がします」
    「奇遇やな」
     エリザも真剣な目を向け、深くうなずいた。
    「アタシもや」

     城内はおろか、街中へも人をやって調べさせたものの、クーの姿はどこにも見当たらなかった。
    「これは……まさか」
    「その、まさかやろな」
     エリザはハンに背を向け、うなずいた。
    「皇帝さんがさらったんや。ドコにもおらんとなれば、ソレしか無いやろ」
    「な……」
     ハンは顔を真っ青にしつつも、どうにか言葉を絞り出す。
    「どうして、そんなことに?」
    「正攻法、つまりアタシやハンくんを暗殺するのんが難しそうやと見て、策を打ってよったんや。じきに連絡が来るやろな。『お姫様の命が惜しかったらこっちの言うコトを聞け』と」
    「そんな……!」
     すっかり蒼白になった顔を両手で覆い、ハンはへたり込んでしまった。
    「一体、どうすれば?」
    「しゃんとしいや、情けない」
     エリザはハンの手を引いて、無理矢理に立たせる。
    「やるコトはいっこしか無いやろ。向こうがまたアタシらを訪ねて来る前に、全力・総力を以て帝国を攻撃するしか無い。向こうに交渉の余地なんか出させてみいや、どう転んでもアタシらの負けやで」
    「えっ?」
    「交渉っちゅうのんは結局、勢力なり実力なりがトントンの相手同士でやるもんや。逆に言うたら、武力やなく交渉で物事の解決に臨むとなれば、巷は『ゼロさんトコの軍勢は帝国に敵わへんと見て日和りよった』と思うやろな。その瞬間、帝国が元来進めとった恐怖による支配は復活する。もう誰もアタシらを頼りにせえへんやろな」
    「そんな極端な話に……」
     反論しかけたハンをさえぎる形で、エリザは持論を続けた。
    「そもそも今回の遠征自体、ゼロさんからして相手をナメとったから始めたコトやろ?」
    「なんですって?」
    「本気で相手が手強いと思っとったら、ノコノコ相手の陣地に乗り込むか? 交渉するにしても、手前にあった島に居とけっちゅうとは思わへんか? でもゼロさんは島があったコトを報告しても、そのままグリーンプールまで進め言うてたやろ」
    「それは、確かに」
    「『自分たちには魔術っちゅう超兵器があるから最悪、力づくでどうとでもなる』っちゅう考えがうっすらアタマん中にあったからこそ、呑気に敵陣地の中に乗り込ませたんや。実際、グリーンプールに乗り込んでややこしいコトになったけども、結局アタシらが強引かまして実効支配になったやないの」
    「あれはエリザさんが、……いや、……そうですね、確かに陛下の指示内容にも驕(おご)った節があったところは否めません。エリザさんの言う通り、本当に侮っていないと言うなら、決して上陸はさせなかったでしょう」
    「で、話を戻すとや」
     エリザは煙管をくわえ、ふう、と紫煙を吐く。
    「今まではゼロさんが優勢や、絶対負けへんとなっとったから、こっちは『仲良くしてやってもええで』と言えたワケや。でもその優勢が消えてしもたら? 同じコト言うたかて、向こうは鼻で笑うわ。そんなふざけたコトがヌケヌケと言えるんは、圧倒的に有利な側からだけやからな。トントンの立場になったらもう、そんな相手をナメきった戦略は破綻するんや。
     いや、実際今んトコ、もうソレは破綻寸前や。今までアタシらはその優位を使て、色んな計画やら人心掌握やらを進めてきたんや。それが破綻したとなれば、元のように『仲良うしてや』言うて動いても、どないもならへんやろな。全部おしまいやで」
    「……つまり結局、最速での攻めが最善、と」
    「そう言うこっちゃ。仮に、真面目に交渉するにしたかて、ソレでクーちゃんが無事に戻って来る保証なんかドコにもあらへんのやからな。反面、向こうが交渉を持ちかけてくる前に全軍挙げて攻めれば、こっちがまだ優位のまま仕掛けられるし、今すぐ動いて速攻で倒せば、クーちゃんが無事で帰ってくる可能性は高い。
     となればもういっぺん、ゼロさんとお話せなな」
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