「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・占験録 3
晴奈の話、第254話。
小鈴先生の魔術講義。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「たーッ!」
先に仕掛けたのはシリン。飛び込むと同時に、回し蹴りを放ってきた。当たる直前に晴奈が飛び上がってかわしたが、その瞬間晴奈の額にどっと汗が吹き出た。
(何だ、今のは!?)
蹴りが空気を裂き、ブンと言う風切り音が鳴ったのだ。
(あんなものをまともに食らったら骨1本、2本折れるくらいでは足りぬだろうな)
「りゃーッ!」
右回し蹴りがかわされたシリンは、軸にしていた左脚を挙げる。回し蹴りでついた遠心力がそのまま左脚に乗り、加速する。
(おっと……!)
左脚のかかとが晴奈に迫ってくる。晴奈は後ろに下がりつつ、刀の鍔元でそれを受けた。
「……ッ!」
しかし蹴りの衝撃を和らぎきれず、そのまま勢い良く蹴り飛ばされる。
晴奈の体はリングの端まで吹っ飛んでいくが、空中でクルクルと2回転して勢いを殺し、何とか縁ギリギリのところで着地した。
「……流石やん」
シリンはゆっくりと体勢を立て直し、ニヤリと笑う。
「伊達に死線は潜っておらぬ」
晴奈も刀を構え直し、じりじりと間合いを詰めていく。シリンも両手を顔のところまで挙げ、多少前かがみ気味の姿勢をとる。それはまるで、本物の虎のような構えだった。
「準備運動はこんなもんやな。こっからちょっと本気、出していくからな」
「……望むところだ」
晴奈とシリンはにらみつつ、円を描くようににじり寄って間合いを詰めていく。そしてまた、激しくぶつかり合う。
試合時間は既に、2分を過ぎていた。
「……」
フォルナは固唾を呑んで、リング上の二人を見つめていた。
「どちらが勝つのでしょう?」
「そりゃ、強い方よ」
「そうですけれども……」
不満げなフォルナに、小鈴はそっと耳打ちする。
「こんな熱狂的ファンが詰め掛けてる中で『どっちが強い』ってうっかり言っちゃったら、アンタ吊るし上げ食らうわよ」
「あ……、そうですわね」
「ま、それにさ。夕べも言ったじゃん、あの占いは……」
昨夜、赤虎亭にて。
「んじゃまず、魔術の基礎だけども。六属性、言ってみ」
「火、氷、水、雷、土、風の六種ですわ」
小鈴はフォルナの答えにうなずき、六角形の図を描く。
「うんうん。火は氷の『低温』を打ち消し、氷は水の『液化』を打ち消す」
図の頂点にそれぞれ「火」「氷」「水」「雷」「土」「風」と書き込み、頂点と頂点の間に引いた線の一端に矢印を描く。
「水は雷の『電気』を打ち消し、雷は土の『磁気』を打ち消し……」
「そして土は風の『流動』を打ち消し、風は火の『発火』を打ち消す。魔術の相性ですわね」
「そ、そ。んで、性質の似通った火と雷(エネルギー)、氷と土(結晶化)、んで水と風(流体)、これらは相似性を持つ、つまり同質のものと見るコトができる。ココは知ってるわよね?」
「ええ。基本中の基本ですから」
「んで、火、水、土。さっきの相性がココにも関わってくる。火は土の結晶化を、土は水の流体化を、水は火のエネルギーをそれぞれ打ち消す効果がある。
アンタの占いの結果、晴奈には火、水、土がそれぞれ最高値で出揃っちゃったワケだけども」
「ええ。これは間違いなく、凶兆ですわ」
小鈴はうんうんとうなずきながらも反論する。
「確かにね。三すくみで打ち消しあって、結果が残らない。このままじゃ確かに悪い兆しだわ。
でも、シリンに出た結果は何だった?」
「火の7、8、9ですわ」
それを聞いた小鈴は、ニヤニヤと笑いながら表を書く。
「じゃ、こうなるワケだ。
晴奈 : 火9 水9 土9
シリン : 火9 火8 火7
コレ見て、気付かない?」
「え?」
小鈴に言われて、フォルナはその表をじっと見つめる。
「……あっ」
「気付いた?」
「ええ。火の9同士は対立し合って、互いに消滅。残る火と水は、水が優勢。火と土は、火が優勢ですが、数字の上では土の方が大きい」
「そ。結果、こうなるワケよ。
晴奈 : 火0 水1 土2
シリン : 火0 火0 火0
冷静さと柔軟さを示す水、堅実さと包容力を示す土が残る。晴奈が勝ち、ってコト」
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「たーッ!」
先に仕掛けたのはシリン。飛び込むと同時に、回し蹴りを放ってきた。当たる直前に晴奈が飛び上がってかわしたが、その瞬間晴奈の額にどっと汗が吹き出た。
(何だ、今のは!?)
蹴りが空気を裂き、ブンと言う風切り音が鳴ったのだ。
(あんなものをまともに食らったら骨1本、2本折れるくらいでは足りぬだろうな)
「りゃーッ!」
右回し蹴りがかわされたシリンは、軸にしていた左脚を挙げる。回し蹴りでついた遠心力がそのまま左脚に乗り、加速する。
(おっと……!)
左脚のかかとが晴奈に迫ってくる。晴奈は後ろに下がりつつ、刀の鍔元でそれを受けた。
「……ッ!」
しかし蹴りの衝撃を和らぎきれず、そのまま勢い良く蹴り飛ばされる。
晴奈の体はリングの端まで吹っ飛んでいくが、空中でクルクルと2回転して勢いを殺し、何とか縁ギリギリのところで着地した。
「……流石やん」
シリンはゆっくりと体勢を立て直し、ニヤリと笑う。
「伊達に死線は潜っておらぬ」
晴奈も刀を構え直し、じりじりと間合いを詰めていく。シリンも両手を顔のところまで挙げ、多少前かがみ気味の姿勢をとる。それはまるで、本物の虎のような構えだった。
「準備運動はこんなもんやな。こっからちょっと本気、出していくからな」
「……望むところだ」
晴奈とシリンはにらみつつ、円を描くようににじり寄って間合いを詰めていく。そしてまた、激しくぶつかり合う。
試合時間は既に、2分を過ぎていた。
「……」
フォルナは固唾を呑んで、リング上の二人を見つめていた。
「どちらが勝つのでしょう?」
「そりゃ、強い方よ」
「そうですけれども……」
不満げなフォルナに、小鈴はそっと耳打ちする。
「こんな熱狂的ファンが詰め掛けてる中で『どっちが強い』ってうっかり言っちゃったら、アンタ吊るし上げ食らうわよ」
「あ……、そうですわね」
「ま、それにさ。夕べも言ったじゃん、あの占いは……」
昨夜、赤虎亭にて。
「んじゃまず、魔術の基礎だけども。六属性、言ってみ」
「火、氷、水、雷、土、風の六種ですわ」
小鈴はフォルナの答えにうなずき、六角形の図を描く。
「うんうん。火は氷の『低温』を打ち消し、氷は水の『液化』を打ち消す」
図の頂点にそれぞれ「火」「氷」「水」「雷」「土」「風」と書き込み、頂点と頂点の間に引いた線の一端に矢印を描く。
「水は雷の『電気』を打ち消し、雷は土の『磁気』を打ち消し……」
「そして土は風の『流動』を打ち消し、風は火の『発火』を打ち消す。魔術の相性ですわね」
「そ、そ。んで、性質の似通った火と雷(エネルギー)、氷と土(結晶化)、んで水と風(流体)、これらは相似性を持つ、つまり同質のものと見るコトができる。ココは知ってるわよね?」
「ええ。基本中の基本ですから」
「んで、火、水、土。さっきの相性がココにも関わってくる。火は土の結晶化を、土は水の流体化を、水は火のエネルギーをそれぞれ打ち消す効果がある。
アンタの占いの結果、晴奈には火、水、土がそれぞれ最高値で出揃っちゃったワケだけども」
「ええ。これは間違いなく、凶兆ですわ」
小鈴はうんうんとうなずきながらも反論する。
「確かにね。三すくみで打ち消しあって、結果が残らない。このままじゃ確かに悪い兆しだわ。
でも、シリンに出た結果は何だった?」
「火の7、8、9ですわ」
それを聞いた小鈴は、ニヤニヤと笑いながら表を書く。
「じゃ、こうなるワケだ。
晴奈 : 火9 水9 土9
シリン : 火9 火8 火7
コレ見て、気付かない?」
「え?」
小鈴に言われて、フォルナはその表をじっと見つめる。
「……あっ」
「気付いた?」
「ええ。火の9同士は対立し合って、互いに消滅。残る火と水は、水が優勢。火と土は、火が優勢ですが、数字の上では土の方が大きい」
「そ。結果、こうなるワケよ。
晴奈 : 火0 水1 土2
シリン : 火0 火0 火0
冷静さと柔軟さを示す水、堅実さと包容力を示す土が残る。晴奈が勝ち、ってコト」
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この話を彼女に読んでもらったところ、
「魔術の相関図とかあった方がいいよ」
とアドバイスをもらいました。
確かにこの文章だけじゃ分からないことが多いので、
近いうち補足説明を入れる予定です。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2016.06.16 修正
この話を彼女に読んでもらったところ、
「魔術の相関図とかあった方がいいよ」
とアドバイスをもらいました。
確かにこの文章だけじゃ分からないことが多いので、
近いうち補足説明を入れる予定です。
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2016.06.16 修正



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