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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・湖戦伝 5

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    神様たちの話、第315話。
    帝国軍、最後の一手。

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    5.
     既に日をまたぎ、あと3、4時間もすればようやく東の稜線から光が漏れてくるかと言う頃になって、拠点西側に人影が現れた。
    (現れました!)
     物陰に潜み、周囲の警戒に務めていた斥候らが、「頭巾」で報告する。彼らにとっては運のいいことに、その相手は気付いていないらしく――あるいは気付いていても、攻撃する余裕を失っているのか――その影はまっすぐ、拠点へと駆けていく。
    (まっすぐ拠点へ向かっています! まもなく罠のあるポイントに……)
     報告が終わらない内に、炸裂音が響き渡る。
    「ぐっ……!」
     相手から苦しそうなうなり声が漏れるが、影は止まることなく、罠の中を突き進んでいった。
    「……小癪な……」
     二度、三度と爆発が起こったところで、影は短く叫び、空高く跳躍した。
    (あっ……も、目標、突破しました! 罠のポイントを抜けました! ジャンプして! 向かってます! 警戒! 警戒されたし!)

     報告を受け、マリアをはじめとする遠征隊内の精鋭たちが、拠点の西側に陣取る。
    「皇帝がこっちに来ているそうです! 全員、臨戦用意!」
     伝令役のビートの号令に従い、マリアは槍を構えた。
    「いつでも来なさいよ、皇帝……!」
     他の者も各々武器を構え、敵の襲来に備える。まもなく西から影が現れ、空高く飛び上って、皆の前に着地した。
    「かかれーッ!」
     号令をかけつつ、マリア自身も槍を振り上げ、その影に振り下ろした。ところが――。
    「うっ……!?」
     頭に振り下ろした槍が、ばきんと音を立てて砕け散る。
    「……あいつじゃない!」
     マリアはとっさに後ろへ飛び退き、その影から距離を取ろうとする。
    「逃さんぞ」
     だが、影は瞬時にマリアへ肉薄し、そのまま弾き飛ばす。
    「あうっ……!」
     地面を転がり、そのままマリアは動かなくなった。
    「マリアさん!」
     ビートが顔を青ざめさせる一方、他の者が影へ攻撃を仕掛けた。
    「うおらあッ!」
    「食らいやがれえッ!」
    「んなろおおッ!」
     だが、戦鎚や矢を胴に受け、頭に剣を叩き付けられても、影の勢いは衰えない。それどころか、仕掛けた者たちを順々に、甲冑を付けた腕で殴り飛ばして行った。
    「うごぉっ!?」
    「がは……っ!?」
    「ば、バカなっ」
     屈強な男たちが、まるで小石を投げるかのように弾かれ、あっと言うまに半数以下になってしまった。
    「そ、そんな……!」
     残りの者たちが呆然とする中、影のまとっていたフードがぼろりと落ち、中の姿があらわになった。
    「う……!?」
    「な、なんだあの甲冑は!?」
    「こいつ、……が、皇帝?」
     と、その全身甲冑姿の者が、無機質な声で応じる。
    「お前ら如き有象無象の相手をするほど、皇帝は暇ではない。この皇帝第一の側近、アル・ノゾンが相手をしてやろう」
     がしゃん、がしゃんと足音を立てながら、アルと名乗ったその男は拠点に近付いて来る。
    「お、囮か!?」
    「じゃあ皇帝は……!?」
    「ハーベイ! 隊長に報告……」
     慌てふためき、皆の隊列が乱れた瞬間、アルはがきん、と金属音を鳴らして、その中に飛び込んで来た。
    「死ぬが良い」
    「うわああっ……!」
     残った者たちは果敢に立ち向かうも、アルに全く攻撃が通らず、一人、また一人と返り討ちにされてしまう。
    「あ……あわわ……」
     精鋭だったはずの者たちが次々と、行動不能になっていく。ただ一人、ビートだけは無傷のままだったものの、無防備な状態で取り残されていた。
    「く……くそっ」
     それでもどうにか口を動かし、魔術を放つが、それもアルには全く効かず、一歩、また一歩と迫って来る。
    「く……来るな、来るなーっ!」
     ビートはついに腰を抜かし、その場にへたり込んだ。
    「た……助けて……助けて、マリアさん……!」

     ばっ、とビートの前にもう一つ、影が現れる。
    「あ……う……」
     恐怖で前後不覚になりながらも、ビートは心のどこかで、その影がマリアではないかと期待を抱いた。だが――影は明らかにマリアのものとは違う、少年のように高い声で答えてきた。
    「情けないねぇ、君。もうちょっとカッコいいトコ見せろってね。ま、どーでもいいけどね」
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