「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・湖戦伝 6
神様たちの話、第316話。
千年級の会話;"ROCKKEY"。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
「あ……え……だ、誰?」
しどろもどろながらも尋ねたビートに、その影はフンと、鼻を鳴らして答える。
「君の想い人じゃないってコトは確かだね。ま、でも逆にソレでいいんじゃないね? そんなみっともない姿、見せたくないだろ?」
「……あっ、……は、はい」
立ち上がろうとしたが、完全に腰が抜けてしまったらしく、立つことができない。それを見抜いたらしく、影はまた嘲笑った。
「ソコでじっとしてな。もう安全だしね」
そう言われて、ビートはつい先程までアルが迫って来ていた方向に目をやる。
「え?」
そこでようやくビートは、そのアルが前方はるか遠くに転がっていることに気付いた。
「な……何を? 何をしたんですか?」
「そりゃもう、チョイチョイってなもんだね」
その言葉遣いに既視感を覚え、ビートは思わずこう尋ねていた。
「せ、先生? ……いや、……やっぱり違う」
「先生じゃなくても、その先生かも知れないねぇ」
そんな風に返しつつ、影はふたたび迫って来たアルに向けて魔杖を構える。
「ヘッ、バカの一つ覚えだねぇ。『ウロボロスポール』」
直後、またもアルは彼方に弾き飛ばされ、今度こそ動かなくなった。
「いくらクソデカ装甲で高出力でも、その高出力を自分自身にぶつけられちゃ、たまったもんじゃないらしいね」
影は魔杖を構えたまま、アルの側に近付く。
「よお、お兄ちゃん。お元気かい?」
「ナ……何者ダ……キサ……マ」
壊れた管楽器のような声を上げたアルに、影はこう返す。
「お前が誰かってコトは、私ゃよおく知ってるね」
「答エロ……何者ダ!」
「へっへへ……」
アルを見下し、嘲笑いながら、影は魔杖を相手の胸に突き付けた。
「緑綺(ロッキー)の息子だろ、君?」
「……ロッキー……?」
「おや? 生みの親の名前を知らないって? んなワケ無いね。あの自信過剰の自意識過剰が君みたいな秀作・傑作に自分の名前を刻み込んどかないなんて謙虚な真似、するワケないだろ? よく思い出しな。お前のメモリのどこか片隅に、こっそり埋め込まれてるはずさね」
「……該当……《C.C.2774 ROCKKEY》……何故オ前ガ……コノ私自身デサエモ……今ノ今マデ認識シテイナカッタ……コンナ20バイトニモ満タヌ……チッポケナ情報ヲ……?」
「さあね。ソコまでは教えてやるもんか。ともかく」
魔杖が光り輝き、真っ赤な熱線がアルの腹から胸に向かって放たれる。
「お前の野望はココでおしまいだね」
「ウゴオォ……ッ!」
瞬間――閃光と共に、アルと、その影は消え去った。
すっかり静まり返ったところで、ビートはようやく立ち上がり、慌ててマリアのところへ駆け寄った。
「ま……マリアさん! 大丈夫ですか!?」
「う……ん……」
どうやら右肩が外れているらしく、不自然な垂れ下がり方をしていたが、それ以外にマリアには目立った外傷も無く、出血も見られなかった。
(どうにか受け身を取りはしたけど、脱臼の痛みで気絶したって感じだ。……じゃなくて)
ビートはマリアの肩を入れてやり、ぽんぽんとほおを叩いて声を掛けた。
「マリアさん! 起きて! マリアさん!」
「……う……う? ……あっ!?」
目を覚ますなり、マリアは跳ねるようにその場から飛び起き、警戒態勢を執る。
「あいつはッ!?」
「た……倒しました」
「倒した!? ……誰が?」
「えっと……」
そう問われてビートはアルがいた方に目をやるが、やはりアルも、あの影もおらず、答えに窮する。
(『良く分からないけどいきなり誰かが現れて助けてくれました』、……なんて言ってもワケ分からないよなぁ)
「……まさか、あんたが?」
と、続けてマリアに問われ、ビートは曖昧に答える。
「え? あっ、いや、えーと、そのー……」
「マジで? マジであんたがあいつ、やっつけたの? マジで殺せたの?」
「いや、殺したって言うか、爆発して……」
「自爆した……? そ、そう」
ようやくマリアは警戒を解き、ビートを抱きしめた。
「やるじゃん、あんた! 見直したよ」
「あ、あへっ、や、ま、マリアさん、ちょ」
「……あ! そうだ、皇帝!」
ビートがどさくさに紛れて抱き返そうとした瞬間、マリアはビートから離れ、その場から駆け出した。
「今のが皇帝じゃないとしたら、きっと東側に来てる! 行こう、ビート!」
「あ……そ、そうですね! 急がないと!」
ビートも足元に落ちていた魔杖を拾い、慌ててマリアの後を追った。
@au_ringさんをフォロー
千年級の会話;"ROCKKEY"。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
「あ……え……だ、誰?」
しどろもどろながらも尋ねたビートに、その影はフンと、鼻を鳴らして答える。
「君の想い人じゃないってコトは確かだね。ま、でも逆にソレでいいんじゃないね? そんなみっともない姿、見せたくないだろ?」
「……あっ、……は、はい」
立ち上がろうとしたが、完全に腰が抜けてしまったらしく、立つことができない。それを見抜いたらしく、影はまた嘲笑った。
「ソコでじっとしてな。もう安全だしね」
そう言われて、ビートはつい先程までアルが迫って来ていた方向に目をやる。
「え?」
そこでようやくビートは、そのアルが前方はるか遠くに転がっていることに気付いた。
「な……何を? 何をしたんですか?」
「そりゃもう、チョイチョイってなもんだね」
その言葉遣いに既視感を覚え、ビートは思わずこう尋ねていた。
「せ、先生? ……いや、……やっぱり違う」
「先生じゃなくても、その先生かも知れないねぇ」
そんな風に返しつつ、影はふたたび迫って来たアルに向けて魔杖を構える。
「ヘッ、バカの一つ覚えだねぇ。『ウロボロスポール』」
直後、またもアルは彼方に弾き飛ばされ、今度こそ動かなくなった。
「いくらクソデカ装甲で高出力でも、その高出力を自分自身にぶつけられちゃ、たまったもんじゃないらしいね」
影は魔杖を構えたまま、アルの側に近付く。
「よお、お兄ちゃん。お元気かい?」
「ナ……何者ダ……キサ……マ」
壊れた管楽器のような声を上げたアルに、影はこう返す。
「お前が誰かってコトは、私ゃよおく知ってるね」
「答エロ……何者ダ!」
「へっへへ……」
アルを見下し、嘲笑いながら、影は魔杖を相手の胸に突き付けた。
「緑綺(ロッキー)の息子だろ、君?」
「……ロッキー……?」
「おや? 生みの親の名前を知らないって? んなワケ無いね。あの自信過剰の自意識過剰が君みたいな秀作・傑作に自分の名前を刻み込んどかないなんて謙虚な真似、するワケないだろ? よく思い出しな。お前のメモリのどこか片隅に、こっそり埋め込まれてるはずさね」
「……該当……《C.C.2774 ROCKKEY》……何故オ前ガ……コノ私自身デサエモ……今ノ今マデ認識シテイナカッタ……コンナ20バイトニモ満タヌ……チッポケナ情報ヲ……?」
「さあね。ソコまでは教えてやるもんか。ともかく」
魔杖が光り輝き、真っ赤な熱線がアルの腹から胸に向かって放たれる。
「お前の野望はココでおしまいだね」
「ウゴオォ……ッ!」
瞬間――閃光と共に、アルと、その影は消え去った。
すっかり静まり返ったところで、ビートはようやく立ち上がり、慌ててマリアのところへ駆け寄った。
「ま……マリアさん! 大丈夫ですか!?」
「う……ん……」
どうやら右肩が外れているらしく、不自然な垂れ下がり方をしていたが、それ以外にマリアには目立った外傷も無く、出血も見られなかった。
(どうにか受け身を取りはしたけど、脱臼の痛みで気絶したって感じだ。……じゃなくて)
ビートはマリアの肩を入れてやり、ぽんぽんとほおを叩いて声を掛けた。
「マリアさん! 起きて! マリアさん!」
「……う……う? ……あっ!?」
目を覚ますなり、マリアは跳ねるようにその場から飛び起き、警戒態勢を執る。
「あいつはッ!?」
「た……倒しました」
「倒した!? ……誰が?」
「えっと……」
そう問われてビートはアルがいた方に目をやるが、やはりアルも、あの影もおらず、答えに窮する。
(『良く分からないけどいきなり誰かが現れて助けてくれました』、……なんて言ってもワケ分からないよなぁ)
「……まさか、あんたが?」
と、続けてマリアに問われ、ビートは曖昧に答える。
「え? あっ、いや、えーと、そのー……」
「マジで? マジであんたがあいつ、やっつけたの? マジで殺せたの?」
「いや、殺したって言うか、爆発して……」
「自爆した……? そ、そう」
ようやくマリアは警戒を解き、ビートを抱きしめた。
「やるじゃん、あんた! 見直したよ」
「あ、あへっ、や、ま、マリアさん、ちょ」
「……あ! そうだ、皇帝!」
ビートがどさくさに紛れて抱き返そうとした瞬間、マリアはビートから離れ、その場から駆け出した。
「今のが皇帝じゃないとしたら、きっと東側に来てる! 行こう、ビート!」
「あ……そ、そうですね! 急がないと!」
ビートも足元に落ちていた魔杖を拾い、慌ててマリアの後を追った。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~