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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第6部

    琥珀暁・追討伝 3

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    神様たちの話、第327話。
    成果と評価。

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    3.
    「ゴラスメルチ? と言うと、かつて豪族居留地があったところですか?」
     地図に視線を落としながら尋ねたハンに、エリザが「ちょっとちゃうな」と答えた。
    「ソレは山の西側の端っこら辺やね。皇帝さんらはどうも東側におるみたいやわ」
    「一応、地理的にはつながっていなくも無いようには思えますが、この東西の間の山が生存不能圏内となっている、と」
    「そう言うこっちゃ。こんなトコを皇帝さんみたいな薄着でウロウロしとったら、間違い無く凍死するな」
    「であれば、東側へ抜けて西山間部が襲撃される、と言うような事態にはまずならないでしょうね。それ以前に、そんなところまで追い込まれたのならば、最早追討する必要性は無いでしょう。とは言え……」
     ハンは地図を机に置き、ハンガーに掛けていた鞘付きのベルトと手袋、軍帽を次々手に取り、装備し始めた。
    「俺がこの手で決着を付けなければ、そしてこの目で最期を見届けなければ、少なくとも俺は納得しません。そして恐らくは、誰もそんな結末で安堵しはしないでしょう。
     マリアと合流し、そのまま一緒に山に向かうと伝えます」
    「アタシも行くで」
    「大丈夫ですか? 山は相当な難所と聞いていますし、そもそもエリザさん、寒がりでしょう?」
    「山道はちっちゃい頃から慣れっこや。ソレにコレで寒いのんも最後っちゅうんやったら、後一回くらいはガマンしたるわ」
    「分かりました。30分後、北門で落ち合いましょう」
    「よっしゃ」

     装備を整えたハンとエリザ、そして彼女の護衛にロウを伴い、3人は馬車を駆って北へ向かった。
    「いよいよ出陣だな、隊長さんよ」
    「そうだな」
     2年半もの間、少なからず交流の場があったものの、ハンとロウは結局、最後まで水と油のままだった。そのため並んで御者台に座ってはいたものの、最初に二言、三言交わしたきりで、それ以上どちらからも、相手に話しかけようとはしなかった。
     そのせいか――。
    「エリザさん、椅子どうっスか? 固くないっスか?」
    「大丈夫やで」
    「エリザさん。思ったより暑くなってきたようですが、コートはどうされますか? 預かれますが……」
    「ん、ひざに掛けとくわ」
    「エリザさん、のど乾いてないっスか?」
    「ありがとさん。ちょと欲しいかな」
    「エリザさん、マリアたちと合流するまでまだ間がありますから、軽食を取りましょうか」
    「せやね」
     エリザが両方から、しきりに声をかけられる羽目になった。
    「……ほんでな、ちょと、お二人な?」
     流石のエリザもうっとうしくなったらしく、両方に手のひらをかざして制止した。
    「なんでしょう?」
     二人同時に返事され、エリザは笑い出す。
    「ぷっ、……ハハ、アハハハ、……や、あんな、お二人ともな、アタシのコト好きなんは十分よお分かったから、ええ加減二人で話しよし」
    「え?」
    「いや、話すことは何も……」
     ハンは断りかけたが、ロウの方が話しかけてきた。
    「あー、えーと、アレだ、隊長さんよ」
    (聞くのかよ。エリザさんに言われたからって、律儀にやること無いだろう?)
     面倒には思ったが、わざわざ止めるほどのことでも無く、ハンは耳を貸す。
    「なんだ?」
    「この戦いが終わったらあんた、大出世間違い無しだろうな」
    「はあ?」
     話の脈絡がつかめず、ハンは首をかしげる。
    「どうしてそうなる?」
    「そりゃなるだろうがよ。悪いヤツ倒してお姫様救って凱旋ってなりゃ……」
    「だが『悪い』だの何だのは結局、この邦での話だ。ノースポートを占拠した以上に、本土に悪影響を及ぼしたわけじゃない。それを倒したからって、評価されるとは思えないな」
    「そらちゃうやろ」
     と、エリザも話の輪に加わる。
    「そもそも占拠の話かて、アンタがおらんかったらソレ以上の悪いコトが起こっとった可能性は十分ある。アンタが偶然あの場におらんかったら、本営が気付くのんももっと後やったやろし、その間に町の人ら、何人か死んでたかも分からん。そうならんかったんは間違い無くアンタのおかげや。ソレを評価せえへんかったら、ゼロさんもノースポートの人らも、よっぽどの恩知らずやで。ロウくんかて、あの場におったワケやしな」
    「っスねぇ。ま、その点だけはよ、俺、マジで感謝してっから。な、隊長さんよ」
    「……あ、……ああ」
     素直にロウから礼を言われ、ハンは面食らいつつもうなずいた。
    「その後のコトもな、やっぱりアンタがおったコトは大きいと思とるで」
     胸元から煙管を取り出しつつ、エリザは話を続ける。
    「他の誰が遠征隊の隊長になったとしても、ココまでうまいコト話は進まへんかったはずや。相当早い段階で気が急(せ)いて殴り合いになってまうか、さもなくばアタシの一言一句をヘンな方に受け止めたり曲解したりで、作戦を片っ端からワヤにしてまうか。
     今のゼロさんがどんな裁定下すか分からんけども、少なくともアタシは表彰もんやと思とる。アンタが隊長やったからこそ、こうやってええ感じの結末になったワケや。ありがとうな、ホンマに」
    「……何だか、気恥ずかしいですね。面と向かってそう言われると」
     ハンは――自分でも珍しいと思うくらいに――普段から血色の悪い顔が熱くなっているのを感じつつ、エリザに頭を下げた。
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