今日の旅岡さん
そーゆーとこやで
夏休み、温泉へ一泊二日の旅行へ行くことになった旅岡さん。
クルマを借り、北の方へ。
「どこまで行くん?」
「ウチのおかんの知り合いがやっとるトコや」
「環(たまき)さんの知り合い? ホンマ人脈広いなぁ」
「おかん、昔は色々やってはったからな。今は手芸一本やけど」
「しゅげい?」
と、後部座席の富士見さんが狐耳をぴこっと揺らす。
「どんなの作ってるんですか、旅岡さん?」
「なんでやねん。いつもみたく『紅ちゃん』でええやんか」
ミラー越しに話しかけた旅岡さんに、富士見さんがぱたぱた手を振る。
「いや違くて、えっと、お姉さんの方」
「なんか勘違いしとるみたいやけど、おねえは『お姉ちゃん』やなくて『従姉妹』な」
「あっ、そうなの? すみません、えっと……」
顔を真っ赤にする富士見さんに、円さんもミラー越しに応じる。
「ええよ、コイツが説明してへんだけやし。ほな自己紹介しとこか。
ウチは深草円。円って呼んでくれたらええからな」
「はーい。……あ、えっと、円さん、さっきの……」
尋ねかけたが、同時に大江さんが口を開く。
「円、途中どっか寄る? 飲み物欲しい」
「え、双葉ちゃん? 呼び捨て……」
富士見さんは目を丸くするが――。
「あー、せやな。ちょっとコンビニ寄ろか」
どうやら当の本人は、意に介していないらしい。
「あ、あの、……いいんですか?」
旅岡さんが、「ええねん」と返す。
「おねえは精神年齢あたしらと一緒やもん」
「なんちゅうコト言うねん。ウチ、一回り年上やねんで」
円さんは口を尖らせたが、旅岡さんは鼻で笑う。
「口開いたらすぐゲームの話するやんか、おねえは」
「オトナがゲームしたってええやんか」
「週3であたしん家に来て、双葉と遊びまくっとるやん。
横で見てたらふつーに友達やし、一回り上感ゼロやで」
「そんなん言うんやったらクルマ乗せへんで」
円さんも応戦するが――。
「すぐ怒るとこがコドモじゃん」
大江さんにまで突っ込まれ、円さんは「ぐぬぬ」とうなった。
「でも財布は大人って言うか、スゴいよ」
と、猫藤さんが助太刀する。
「ビックリしたもん。いきなり『ゲーム買う』ってライン来たし、
マジに買ってもらったし。赤いの、って言うかピンクいの」
「ピンク? じゃ、あたしのとおそろいか」
大江さんはそう言って、かばんからゲーム機を取り出す。
「ほら、ピンク」
「お~。……あー、と」
猫藤さんが、遠慮がちにぼそっと尋ねる。
「……みんな何のゲームしてる?」
大江さん「マ○クラ」
富士見さん「あ○森」
旅岡さん「ブ○ワイ」
バラバラの答えが返り、猫藤さんの猫耳が垂れていく。
「……誰か野球、やってる?」
「やってない」
「全然」
「ごめん」
「そか……」
しょんぼりする猫藤さんに、円さんが応じる。
「一緒に買うたアレやんな? 面白そうやからウチも買うてみよかなーて思てたトコやねん。
旅行から帰ったら一緒に買いに行こか」
「ホンマけぇ!? ……じゃないや、本当ですか!?」
「おっ、さてはカープ推しやな?」
「あ、はい!」
野球の話題を振られた途端、猫藤さんは饒舌になった。
「あたし生まれが広島で……」
「そら推すわな。よっしゃ、ほんならウチは阪神いじろ」
「じゃ、あたしも頑張ってぶちつよチーム作ります!」
「あんまり強くせんといてやー。ウチ、ゲームへたっぴやし」
「え、そうなんですか?」
と、二人のやり取りを眺めていた大江さんが、クスっと笑う。
「円はそーゆーとこ、姉御肌って感じするよ」
「へっへっへ、どーや紅? ウチ姉御やで、姉御」
得意満面の笑みを向けた円さんに、旅岡さんは苦い顔を返した。
「そーゆーとこやで、おねえ」

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クルマを借り、北の方へ。
「どこまで行くん?」
「ウチのおかんの知り合いがやっとるトコや」
「環(たまき)さんの知り合い? ホンマ人脈広いなぁ」
「おかん、昔は色々やってはったからな。今は手芸一本やけど」
「しゅげい?」
と、後部座席の富士見さんが狐耳をぴこっと揺らす。
「どんなの作ってるんですか、旅岡さん?」
「なんでやねん。いつもみたく『紅ちゃん』でええやんか」
ミラー越しに話しかけた旅岡さんに、富士見さんがぱたぱた手を振る。
「いや違くて、えっと、お姉さんの方」
「なんか勘違いしとるみたいやけど、おねえは『お姉ちゃん』やなくて『従姉妹』な」
「あっ、そうなの? すみません、えっと……」
顔を真っ赤にする富士見さんに、円さんもミラー越しに応じる。
「ええよ、コイツが説明してへんだけやし。ほな自己紹介しとこか。
ウチは深草円。円って呼んでくれたらええからな」
「はーい。……あ、えっと、円さん、さっきの……」
尋ねかけたが、同時に大江さんが口を開く。
「円、途中どっか寄る? 飲み物欲しい」
「え、双葉ちゃん? 呼び捨て……」
富士見さんは目を丸くするが――。
「あー、せやな。ちょっとコンビニ寄ろか」
どうやら当の本人は、意に介していないらしい。
「あ、あの、……いいんですか?」
旅岡さんが、「ええねん」と返す。
「おねえは精神年齢あたしらと一緒やもん」
「なんちゅうコト言うねん。ウチ、一回り年上やねんで」
円さんは口を尖らせたが、旅岡さんは鼻で笑う。
「口開いたらすぐゲームの話するやんか、おねえは」
「オトナがゲームしたってええやんか」
「週3であたしん家に来て、双葉と遊びまくっとるやん。
横で見てたらふつーに友達やし、一回り上感ゼロやで」
「そんなん言うんやったらクルマ乗せへんで」
円さんも応戦するが――。
「すぐ怒るとこがコドモじゃん」
大江さんにまで突っ込まれ、円さんは「ぐぬぬ」とうなった。
「でも財布は大人って言うか、スゴいよ」
と、猫藤さんが助太刀する。
「ビックリしたもん。いきなり『ゲーム買う』ってライン来たし、
マジに買ってもらったし。赤いの、って言うかピンクいの」
「ピンク? じゃ、あたしのとおそろいか」
大江さんはそう言って、かばんからゲーム機を取り出す。
「ほら、ピンク」
「お~。……あー、と」
猫藤さんが、遠慮がちにぼそっと尋ねる。
「……みんな何のゲームしてる?」
大江さん「マ○クラ」
富士見さん「あ○森」
旅岡さん「ブ○ワイ」
バラバラの答えが返り、猫藤さんの猫耳が垂れていく。
「……誰か野球、やってる?」
「やってない」
「全然」
「ごめん」
「そか……」
しょんぼりする猫藤さんに、円さんが応じる。
「一緒に買うたアレやんな? 面白そうやからウチも買うてみよかなーて思てたトコやねん。
旅行から帰ったら一緒に買いに行こか」
「ホンマけぇ!? ……じゃないや、本当ですか!?」
「おっ、さてはカープ推しやな?」
「あ、はい!」
野球の話題を振られた途端、猫藤さんは饒舌になった。
「あたし生まれが広島で……」
「そら推すわな。よっしゃ、ほんならウチは阪神いじろ」
「じゃ、あたしも頑張ってぶちつよチーム作ります!」
「あんまり強くせんといてやー。ウチ、ゲームへたっぴやし」
「え、そうなんですか?」
と、二人のやり取りを眺めていた大江さんが、クスっと笑う。
「円はそーゆーとこ、姉御肌って感じするよ」
「へっへっへ、どーや紅? ウチ姉御やで、姉御」
得意満面の笑みを向けた円さんに、旅岡さんは苦い顔を返した。
「そーゆーとこやで、おねえ」

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旅岡さんの夏休み、第2回。
移動回です。
富士見さんが旅岡さんの陰に隠れてしまった。
おわびとして、次回イラストは一番前に出してあげようと思います。
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