「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・平東伝 3
神様たちの話、第339話。
解体と再構築。
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3.
ハンとクーもよりを戻し、改めて彼女の無事が、彼女自身の口からゼロに伝えられた。
「……ですので、わたくしは無事です。ご心配をおかけいたしました」
《そうか……。無事で何よりだよ。本当に、この3ヶ月のことは何も覚えてないみたいだね。あと、……こんなことを何度も確認して、本当に済まないと思ってはいるけれど、……何もされていないんだね?》
「ええ。皇帝には、何も」
この言葉に、ハンが咳き込む。
《どうしたの、ハン?》
「い、いえ、何も。空気が乾いているせいでしょう。……ともかくこうして殿下が戻り、帝国の諸権利が陛下に譲渡されたことで、帝国に対する懸念は何も無くなったと考えてよろしいでしょう。そして帝国以外の北方諸国に対しては、そのすべてにおいて友好条約を締結し、平和的関係を築けたと考えてよろしいのではないかと」
《うん、そうだね。概ね、所期の目的通りと言っていいだろう。ご苦労だったね、ハン。現時点を以て、君の遠征隊隊長としての任を解くと共に、遠征隊の解散を決定する。併せて同日付で、君には北方諸国との友好関係を維持すべく、大使の任を命ずる。……とは言えまた色々、細かい話をしないといけないから、一旦帰還するように》
「了解いたしました」
《……結婚式もしないといけないしね。準備しておくから、早急に帰って来るように》
ゼロの言葉に、ハンはもう一度咳き込んだ。
「お父様、お気付きでしたのね」
《君は母さん似だよ、本当に》
帰国が命じられ、ハンたちはすぐにグリーンプールへの帰途に着いた。
「これから大忙しだな。俺が大使か……」
峠道を下る馬車の中で、ハンが期待と不安の入り混じったため息を漏らす。そんな彼に、マリアが声をかける。
「当然と言えば当然ですよね。一番の功労者で、軍の中で一番こっちの事情に詳しい人ですもん」
「まあ、そうだな。……だがなー」
ハンは肩を抱いていたクーに目をやり、いたずらっぽくつぶやく。
「新婚生活がどうなるか。今一番の不安はそれだな」
「……いきなり態度変えすぎじゃないですか、尉官ってば。や、もう尉官じゃないか」
「ん、ああ……」
大使任命に合わせる形で、ハンはこの日から昇格し、佐官に任ぜられた。
「ってか、そーなってくるともう、シモン班も解散ってことになりますよね」
「……そうなるな。班編成は基本的に、曹官か尉官がリーダーだからな。
それにこう何度も班員が問題を起こして離隊したとなると、評判にキズが付いてるだろう。これ以上シモン班を継続させていては、お前たちの経歴にもキズが付くだろうからな。これまでの成績を考えれば、もっと良い待遇を与えられてしかるべきだ」
「まー、……そーですね。ねー、メリー」
マリアはメリーの手を取り、にこっと笑いかけた。
「次の班でも一緒になれるといいね」
「ええ、そうですね。わたしも希望します」
メリーが微笑み返したところで、クーが口を開く。
「マリア。あなたの功績を鑑みれば、今度はあなたが班長になるのではないかしら?」
「え? あたしが? ……えー」
一転、マリアは面倒臭そうな表情を浮かべる。
「ガラじゃないなー」
「わたしは大丈夫だと思いますよ、マリアさんなら」
「えー、そっかなー、うーん」
そんな、じゃれ合うような会話を続ける一同と距離を置く形で――エリザは黙々と、煙管をふかしていた。
「……あれ? どうしたんですか、エリザさん? 気分悪いんですか?」
マリアに声をかけられ、エリザはわずかに顔を上げ、「ん……」と返す。
「何でもあらへんよ。ちょと考え事しとっただけや。気にせんで」
「あ、はーい。……んでさ、メリー……」
結局、峠道を下り終えるまで、ずっとエリザは黙り込んでいた。
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解体と再構築。
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3.
ハンとクーもよりを戻し、改めて彼女の無事が、彼女自身の口からゼロに伝えられた。
「……ですので、わたくしは無事です。ご心配をおかけいたしました」
《そうか……。無事で何よりだよ。本当に、この3ヶ月のことは何も覚えてないみたいだね。あと、……こんなことを何度も確認して、本当に済まないと思ってはいるけれど、……何もされていないんだね?》
「ええ。皇帝には、何も」
この言葉に、ハンが咳き込む。
《どうしたの、ハン?》
「い、いえ、何も。空気が乾いているせいでしょう。……ともかくこうして殿下が戻り、帝国の諸権利が陛下に譲渡されたことで、帝国に対する懸念は何も無くなったと考えてよろしいでしょう。そして帝国以外の北方諸国に対しては、そのすべてにおいて友好条約を締結し、平和的関係を築けたと考えてよろしいのではないかと」
《うん、そうだね。概ね、所期の目的通りと言っていいだろう。ご苦労だったね、ハン。現時点を以て、君の遠征隊隊長としての任を解くと共に、遠征隊の解散を決定する。併せて同日付で、君には北方諸国との友好関係を維持すべく、大使の任を命ずる。……とは言えまた色々、細かい話をしないといけないから、一旦帰還するように》
「了解いたしました」
《……結婚式もしないといけないしね。準備しておくから、早急に帰って来るように》
ゼロの言葉に、ハンはもう一度咳き込んだ。
「お父様、お気付きでしたのね」
《君は母さん似だよ、本当に》
帰国が命じられ、ハンたちはすぐにグリーンプールへの帰途に着いた。
「これから大忙しだな。俺が大使か……」
峠道を下る馬車の中で、ハンが期待と不安の入り混じったため息を漏らす。そんな彼に、マリアが声をかける。
「当然と言えば当然ですよね。一番の功労者で、軍の中で一番こっちの事情に詳しい人ですもん」
「まあ、そうだな。……だがなー」
ハンは肩を抱いていたクーに目をやり、いたずらっぽくつぶやく。
「新婚生活がどうなるか。今一番の不安はそれだな」
「……いきなり態度変えすぎじゃないですか、尉官ってば。や、もう尉官じゃないか」
「ん、ああ……」
大使任命に合わせる形で、ハンはこの日から昇格し、佐官に任ぜられた。
「ってか、そーなってくるともう、シモン班も解散ってことになりますよね」
「……そうなるな。班編成は基本的に、曹官か尉官がリーダーだからな。
それにこう何度も班員が問題を起こして離隊したとなると、評判にキズが付いてるだろう。これ以上シモン班を継続させていては、お前たちの経歴にもキズが付くだろうからな。これまでの成績を考えれば、もっと良い待遇を与えられてしかるべきだ」
「まー、……そーですね。ねー、メリー」
マリアはメリーの手を取り、にこっと笑いかけた。
「次の班でも一緒になれるといいね」
「ええ、そうですね。わたしも希望します」
メリーが微笑み返したところで、クーが口を開く。
「マリア。あなたの功績を鑑みれば、今度はあなたが班長になるのではないかしら?」
「え? あたしが? ……えー」
一転、マリアは面倒臭そうな表情を浮かべる。
「ガラじゃないなー」
「わたしは大丈夫だと思いますよ、マリアさんなら」
「えー、そっかなー、うーん」
そんな、じゃれ合うような会話を続ける一同と距離を置く形で――エリザは黙々と、煙管をふかしていた。
「……あれ? どうしたんですか、エリザさん? 気分悪いんですか?」
マリアに声をかけられ、エリザはわずかに顔を上げ、「ん……」と返す。
「何でもあらへんよ。ちょと考え事しとっただけや。気にせんで」
「あ、はーい。……んでさ、メリー……」
結局、峠道を下り終えるまで、ずっとエリザは黙り込んでいた。
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