今日の旅岡さん
あいつ、ピンと来てなくね?
温泉街をあちこち回っている内に日も暮れてきたので、
旅岡さんたちは宿に戻って温泉へ。
「あー……っ、気持ちいいね」
「すっげー汗かいたもんなぁ」
大江さんと猫藤さんが並んで湯船に浸かったところで、
いつものように円さんが寄って来る。
「なぁなぁ双葉ぁ~、後で……」
「あ、そうだ円さん」と、猫藤さんが口を開く。
「ゆっこが聞きたいことあるって言ってましたよ」
「ん~? ウチにぃ?」
言われて円さんは、まだ髪を洗っていた富士見さんに声をかけた。
「ゆっこちゃ~ん、なんやった~?」
「えっ、あっ、ちょっと待って下さい」
慌てて泡を洗い流し、富士見さんが振り返る。
「あ、あのですね」「あれっ!?」と、今度は猫藤さんが声を上げる。
「ゆっこって、すげー似てんな? あの、アレ、アイドルの、えーと」
「きっこだろ。富士見橘子」大江さんが代わりに答える。
「そー、それそれ。似てるよな?」
「そりゃ似てるよ」
大江さんは肩をすくめ、髪をバックにまとめた富士見さんを指す。
「妹だし」
「え、マジけ?」
「マジだよ」
「そーだったの!? へぇー!?」
「あ、あのー、雛ちゃん」
富士見さんは困った顔で、ぺらぺら手を振って返した。
「それ、あんまり大声で言わないでね。お姉ちゃん、気にしてるから。
『プライベート晒さないようにしてるから言いふらすな』って」
「……あ、そなの? ごめんな、騒いじゃって」
「ううん、いいよ。……それで、円さ」
言いかけて、富士見さんは口をつぐんでしまった。
円さんはもうその場を離れ、旅岡さんに絡んでいたからだ。
「紅ぃ~、あんたホンマにぺったんこちゃんやな~」
「ほっといて。ホンマにもう、おねえは酔うとタチ悪いな。今日は早よ寝えや?」
「ふぇへへへへへ~」
「……はぁ」
円さんの後姿を眺め、富士見さんはため息をついた。
「あれじゃ何聞いてもワケ分かんなさそう」
「だね。……で、ゆっこ。何聞きたかったの?」
「いやほら、円さんのかばんに付いてたブローチ」
「ああ、環さんのやつ」
「そう、『タマキ・フカクサ』のやつ! 円さんもあのブランド好きなのかなって」
「そりゃ嫌いじゃないだろ」
「やっぱりそうなんだ! へぇー……」
ニコニコを笑みを浮かべ、「しっかり泡流してくるね」
と言って離れた富士見さんの尻尾を眺めながら、猫藤さんがつぶやく。
「あいつ、ピンと来てなくね?」
「だろうね。多分頭ん中で、話がつながってない」
「ここぞってとこで察し悪いよな、ゆっこって」
「つっても『有名デザイナーが実は友達の伯母さんでした』って、普通考えないよ」
「そりゃそうか。あたしだって今の今まで、
ゆっこのお姉ちゃんのこと知らんかったもんなぁ」
こうして富士見さんが真実を悟ることも無いまま、
温泉旅行の夜は更けていくのであった……。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
と言うわけで入浴回。
恐らく温泉に票を投じた人の99%はこれを期待していたのでしょう。
とは言え全年齢対応のうちのブログであれやこれや見せては大変ですし、
そもそも僕みたいなひねくれ者に、そんなストレートに色気があるような描写を求めてはいけません。
よって、一般常識的に見せてはいけないと判断されるであろう部分は、
構図的かつ構造的に、全てきっちり隠しています。
これが最低ラインです。
(それでももし、然るべき筋から問題があると指摘された場合には、
削除も吝かではありません。悪しからず)
温泉でお酒を呑むのは結構ですが、べろんべろんに泥酔した状態で入るのは危険です。
真似しないように。
それをやって平気なのは恐らく、うちの作品の中でも3人くらいしかいません。
これにて特別企画「旅岡さんの夏休み」は終了。
いやぁ、突貫スケジュールだった。
楽しかったことは楽しかったですが、しばらく大きいイラストは描かないかも。
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旅岡さんたちは宿に戻って温泉へ。
「あー……っ、気持ちいいね」
「すっげー汗かいたもんなぁ」
大江さんと猫藤さんが並んで湯船に浸かったところで、
いつものように円さんが寄って来る。
「なぁなぁ双葉ぁ~、後で……」
「あ、そうだ円さん」と、猫藤さんが口を開く。
「ゆっこが聞きたいことあるって言ってましたよ」
「ん~? ウチにぃ?」
言われて円さんは、まだ髪を洗っていた富士見さんに声をかけた。
「ゆっこちゃ~ん、なんやった~?」
「えっ、あっ、ちょっと待って下さい」
慌てて泡を洗い流し、富士見さんが振り返る。
「あ、あのですね」「あれっ!?」と、今度は猫藤さんが声を上げる。
「ゆっこって、すげー似てんな? あの、アレ、アイドルの、えーと」
「きっこだろ。富士見橘子」大江さんが代わりに答える。
「そー、それそれ。似てるよな?」
「そりゃ似てるよ」
大江さんは肩をすくめ、髪をバックにまとめた富士見さんを指す。
「妹だし」
「え、マジけ?」
「マジだよ」
「そーだったの!? へぇー!?」
「あ、あのー、雛ちゃん」
富士見さんは困った顔で、ぺらぺら手を振って返した。
「それ、あんまり大声で言わないでね。お姉ちゃん、気にしてるから。
『プライベート晒さないようにしてるから言いふらすな』って」
「……あ、そなの? ごめんな、騒いじゃって」
「ううん、いいよ。……それで、円さ」
言いかけて、富士見さんは口をつぐんでしまった。
円さんはもうその場を離れ、旅岡さんに絡んでいたからだ。
「紅ぃ~、あんたホンマにぺったんこちゃんやな~」
「ほっといて。ホンマにもう、おねえは酔うとタチ悪いな。今日は早よ寝えや?」
「ふぇへへへへへ~」
「……はぁ」
円さんの後姿を眺め、富士見さんはため息をついた。
「あれじゃ何聞いてもワケ分かんなさそう」
「だね。……で、ゆっこ。何聞きたかったの?」
「いやほら、円さんのかばんに付いてたブローチ」
「ああ、環さんのやつ」
「そう、『タマキ・フカクサ』のやつ! 円さんもあのブランド好きなのかなって」
「そりゃ嫌いじゃないだろ」
「やっぱりそうなんだ! へぇー……」
ニコニコを笑みを浮かべ、「しっかり泡流してくるね」
と言って離れた富士見さんの尻尾を眺めながら、猫藤さんがつぶやく。
「あいつ、ピンと来てなくね?」
「だろうね。多分頭ん中で、話がつながってない」
「ここぞってとこで察し悪いよな、ゆっこって」
「つっても『有名デザイナーが実は友達の伯母さんでした』って、普通考えないよ」
「そりゃそうか。あたしだって今の今まで、
ゆっこのお姉ちゃんのこと知らんかったもんなぁ」
こうして富士見さんが真実を悟ることも無いまま、
温泉旅行の夜は更けていくのであった……。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
と言うわけで入浴回。
恐らく温泉に票を投じた人の99%はこれを期待していたのでしょう。
とは言え全年齢対応のうちのブログであれやこれや見せては大変ですし、
そもそも僕みたいなひねくれ者に、そんなストレートに色気があるような描写を求めてはいけません。
よって、一般常識的に見せてはいけないと判断されるであろう部分は、
構図的かつ構造的に、全てきっちり隠しています。
これが最低ラインです。
(それでももし、然るべき筋から問題があると指摘された場合には、
削除も吝かではありません。悪しからず)
温泉でお酒を呑むのは結構ですが、べろんべろんに泥酔した状態で入るのは危険です。
真似しないように。
それをやって平気なのは恐らく、うちの作品の中でも3人くらいしかいません。
これにて特別企画「旅岡さんの夏休み」は終了。
いやぁ、突貫スケジュールだった。
楽しかったことは楽しかったですが、しばらく大きいイラストは描かないかも。
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