「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・平南伝 3
神様たちの話、第347話。
銀婚旅行のお誘い。
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3.
ゼロの暴挙に憤慨したゲートは、「頭巾」でエリザに経緯を伝えたが――。
《あら、そうかー》
彼女はあっけらかんとした様子で応じてきた。
《アタシは別に構わへんで》
「えっ!?」
そんな答えが返って来ることを予想しておらず、ゲートは面食らった。
「でもエリちゃん、君が先に……」
《アタシがやろうとしとるんは今んトコ、カーテンロック――あー、こないだ見付けた山をそう呼ぶコトにしたんやけどね――の調査までやね。山の先に何かあるんかまではまだ、見当も何にも付けてへんもん。その先をゼロさんが調査したい言うてるんやったら、調査さしたったらええやんか》
「マジかよぉ……」
ゲートは頭を抱え、後悔した。
「君がそう言うつもりだったんなら、ゼロとケンカしなきゃ良かったな」
《ま、そのうちほとぼりも冷めるやろ。そん時に一緒にご飯でも食べて、仲直りしたらええやんか》
「そうすっかぁ。……ま、どっちにしても遠征すること自体は反対のままだけどな。さっきも言った通り、何があるのか、いや、あるかどうかすら分からんところに何百人も人を送るなんて、正気の沙汰じゃないからな」
《アタシも同感やね。島も何にも無かったら、漂流しておしまいやもんな》
「だから今回、俺は全面的にタッチしない。何言われたって、こっちも無視するつもりだ」
《そうしとき。アンタはもう十分お偉いさんなんやから、この遠征でどんだけ成功してもあんまり旨味も見返りも無い上、失敗したら責任だけ取らされるなんて、アホみたいやもんな》
「まったくだ」
深々とうなずいたところで、エリザが話題を変えてきた。
《ほんならしばらく、ヒマでける感じか?》
「まあ、そうだな。少なくとも遠征隊が組織され、出発するまでは、俺を交えて閣議なんかしようとしないだろう。通常の業務だってちょっとサインする程度だし」
《たまにはこっち来てみいひんか? メノーさんたち連れて》
エリザの提案に、ゲートはくわえていた煙草をぷっと吹き出してしまった。
「げほっ、げほっ……、いや、流石にそりゃまずいだろ? この時期に君と会ったってなると、ゼロにどんな難癖付けられるか、分かったもんじゃない」
《付けさせとけばええやん。ソレで縁遠くなったらアタシが嬉しいし。家族水入らずになるやんか》
「ちょっ……」
慌てるゲートの耳に、エリザのころころとした笑いが届く。
《アッハッハ……、冗談や。真面目な話、アンタを遠ざけたらもう、アタシと接触でける術(すべ)が無くなるやん。ゼロさんもソレは分かってはるやろ》
「はは……、確かにな」
ゲートは苦笑しつつ、床に落ちた煙草を拾って揉み消す。
「もしマジでエリちゃんと縁切ったりなんかしたら、遠征先で何かあった時に援軍が頼めないわけだしな。金塊もらったりとか助言受けたりとか、今までの付き合いだって丸ごとブチ壊しにしちまったら、あいつが困るわけだし」
《自分らだけで何とかしたいと思とるんやったら、ソレはソレで構へんけど。……っちゅうワケでどないや?》
「……んじゃ、ちょっとだけ行っちゃうかなぁ。フレンとかにも、久々に会いたいし」
《ゼラナちゃんにも会ったげてな》
「ゼラナ……? あー、そっか、そうだったな。リンダの娘かー……。
俺、もうおじいちゃんなんだよな。ハンのとこも2人目できたとか聞いたけど、海の向こうの話だし、一度も顔見てないからなぁ。実感湧いてないんだよな、実際」
《アタシもやねんなー……。未だにリンダがもう子持ちやっちゅうのんが、ほぼ毎日ゼラナちゃん見とるのにピンと来おへんねん》
「お互い、気持ちだけは若いまんまってことかな」
《アハハ、……アタシはまだ若いで? トシなん、アンタだけや》
「ちぇ」
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3.
ゼロの暴挙に憤慨したゲートは、「頭巾」でエリザに経緯を伝えたが――。
《あら、そうかー》
彼女はあっけらかんとした様子で応じてきた。
《アタシは別に構わへんで》
「えっ!?」
そんな答えが返って来ることを予想しておらず、ゲートは面食らった。
「でもエリちゃん、君が先に……」
《アタシがやろうとしとるんは今んトコ、カーテンロック――あー、こないだ見付けた山をそう呼ぶコトにしたんやけどね――の調査までやね。山の先に何かあるんかまではまだ、見当も何にも付けてへんもん。その先をゼロさんが調査したい言うてるんやったら、調査さしたったらええやんか》
「マジかよぉ……」
ゲートは頭を抱え、後悔した。
「君がそう言うつもりだったんなら、ゼロとケンカしなきゃ良かったな」
《ま、そのうちほとぼりも冷めるやろ。そん時に一緒にご飯でも食べて、仲直りしたらええやんか》
「そうすっかぁ。……ま、どっちにしても遠征すること自体は反対のままだけどな。さっきも言った通り、何があるのか、いや、あるかどうかすら分からんところに何百人も人を送るなんて、正気の沙汰じゃないからな」
《アタシも同感やね。島も何にも無かったら、漂流しておしまいやもんな》
「だから今回、俺は全面的にタッチしない。何言われたって、こっちも無視するつもりだ」
《そうしとき。アンタはもう十分お偉いさんなんやから、この遠征でどんだけ成功してもあんまり旨味も見返りも無い上、失敗したら責任だけ取らされるなんて、アホみたいやもんな》
「まったくだ」
深々とうなずいたところで、エリザが話題を変えてきた。
《ほんならしばらく、ヒマでける感じか?》
「まあ、そうだな。少なくとも遠征隊が組織され、出発するまでは、俺を交えて閣議なんかしようとしないだろう。通常の業務だってちょっとサインする程度だし」
《たまにはこっち来てみいひんか? メノーさんたち連れて》
エリザの提案に、ゲートはくわえていた煙草をぷっと吹き出してしまった。
「げほっ、げほっ……、いや、流石にそりゃまずいだろ? この時期に君と会ったってなると、ゼロにどんな難癖付けられるか、分かったもんじゃない」
《付けさせとけばええやん。ソレで縁遠くなったらアタシが嬉しいし。家族水入らずになるやんか》
「ちょっ……」
慌てるゲートの耳に、エリザのころころとした笑いが届く。
《アッハッハ……、冗談や。真面目な話、アンタを遠ざけたらもう、アタシと接触でける術(すべ)が無くなるやん。ゼロさんもソレは分かってはるやろ》
「はは……、確かにな」
ゲートは苦笑しつつ、床に落ちた煙草を拾って揉み消す。
「もしマジでエリちゃんと縁切ったりなんかしたら、遠征先で何かあった時に援軍が頼めないわけだしな。金塊もらったりとか助言受けたりとか、今までの付き合いだって丸ごとブチ壊しにしちまったら、あいつが困るわけだし」
《自分らだけで何とかしたいと思とるんやったら、ソレはソレで構へんけど。……っちゅうワケでどないや?》
「……んじゃ、ちょっとだけ行っちゃうかなぁ。フレンとかにも、久々に会いたいし」
《ゼラナちゃんにも会ったげてな》
「ゼラナ……? あー、そっか、そうだったな。リンダの娘かー……。
俺、もうおじいちゃんなんだよな。ハンのとこも2人目できたとか聞いたけど、海の向こうの話だし、一度も顔見てないからなぁ。実感湧いてないんだよな、実際」
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