「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・天帝伝 2
神様たちの話、第351話。
真実の究明。
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2.
南方への遠征計画が始まって以降、ゲートはゼロの側から遠ざけられていた。それまでの、高潔で公明正大だったはずのゼロからは到底考えられないような対応であり、ゲートの方からも「正当性が無い」と何度と無く抗議していた。
だが、それに対してゼロは、まったく応じないばかりか――やはりゲートが懸念していた通り――エリザと親しくしていることを理由に、本営におけるあらゆる要職から退けさせてしまった。事実上失脚したゲートだったが、それでも思い直してくれることを願いつつ、7年間をいち農夫としてのんびり過ごしていた。
しかし人づてに、遠征計画が終了したにもかかわらず1000名もの兵士が一人も帰って来ないことを聞き付け、ゲートは自分と同様、義憤に燃えつつも冷遇され始めていたアロイと共に、調査を開始した。
しかし事情を知っているはずのゼロや、遠征計画に関わった将軍や大臣たちに直接尋ねて回っていたが、その誰からもまともな回答が得られず、業を煮やしていた。そればかりか、ゲートたちを拘束しようとしていると言う動きまで出始め、窮した二人はエリザと「頭巾」で連絡を取った。
「……ってわけで、手ぇ貸してくれるか?」
《ええよ》
「まずは船を貸して欲しい。今、南で何が起こってるのか、調べなきゃならんからな」
《ヒトとカネもいるやろ? こっちで50人くらい都合したるで。おカネはクラムやと向こうで使えへんかも分からんから、現物の金塊もなんぼか渡すわ》
「痛み入ります」
《……気ぃ付けてな》
「ああ。エリちゃんも」
エリザの協力を得たゲートとアロイは双月暦38年3月、南の地に到着した。
「マリアが行方不明!? 死んだって聞いたぞ、俺は?」
そして現地に駐留したままの遠征隊から事の次第を聞き、ゲートとアロイは愕然とした。
「あの、帝国がどうの、と言う話は……?」
「そのような報告は一切行っておりません。存在したと言うような事実からして、全くございません」
「マジかよ」
ゲートとアロイは顔を見合わせ、状況を整理する。
「マリアたちは皇帝と戦って刺し違えたって話だったよな?」
「ええ」
「現地の人間は帝国に虐げられてて、……って話だったけど、今にして思えば、北方の出来事を丸ごと写したような話だよな」
「その帝国そのものが存在しない、となると、……一体あなた方は誰と、いや、何と戦っていたのですか?」
アロイに尋ねられ、士官は表情を曇らせた。
「開戦から、いえ、上陸から7年が経った今でも、何を敵と認めるべきであったのか、良く分からないのです。気付けば我々は、現地の者たちから『悪魔』と罵られ、四方八方から攻められていました」
「そんな……」
「途中でやめようとは思わなかったのか? ゼロに報告してたんなら、撤収命令を下してるはずだよな?」
問いただしたゲートに、士官は泣きそうな顔で答えた。
「陛下は徹底継戦を命じられました。『最後までやるしかない。エリザに介入させないためには、最後まで自分たちの手で戦いを進めるしか無いんだ』と」
「なっ……!?」
二人はもう一度顔を見合わせ、どちらからともなくつぶやく。
「じゃあ、ゼロは……」
「……父上は、知っていながら」
そして同時に、怒りに満ちたうめきを発した。
「なんてひどいことを……!」
と、様子を見ていた士官から、悲痛な問いが投げかけられた。
「将軍、皇太子、その――我々はいつ、戻れるのでしょうか?」
「……」
ゲートとアロイは三度、顔を見合わせ、そしてゲートが答えた。
「……善処する。いや、可能な限り、早く戻れるように配慮する」
現地で真実を知ったゲートたちは、すぐに帰国の途に着いた。その途中、エリザに連絡を取っていたが――。
《ちょとまずいみたいやで。クロスセントラルにおる子らから聞いたけど、アンタら二人を反逆罪にかけようと動いとるみたいやで》
「マジかよ」
《一旦、アタシの街に来た方がええな。そのまんまノースポートとかに入港したら間違い無く捕まるで》
「分かった。そこからどうする?」
《あんまりなー……、こう言うハナシには持って行きたくなかったんやけども》
そこでエリザの言葉が途切れるが、ゲートは彼女が言わんとすることを察していた。
「……戦争になるだろうな」
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真実の究明。
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南方への遠征計画が始まって以降、ゲートはゼロの側から遠ざけられていた。それまでの、高潔で公明正大だったはずのゼロからは到底考えられないような対応であり、ゲートの方からも「正当性が無い」と何度と無く抗議していた。
だが、それに対してゼロは、まったく応じないばかりか――やはりゲートが懸念していた通り――エリザと親しくしていることを理由に、本営におけるあらゆる要職から退けさせてしまった。事実上失脚したゲートだったが、それでも思い直してくれることを願いつつ、7年間をいち農夫としてのんびり過ごしていた。
しかし人づてに、遠征計画が終了したにもかかわらず1000名もの兵士が一人も帰って来ないことを聞き付け、ゲートは自分と同様、義憤に燃えつつも冷遇され始めていたアロイと共に、調査を開始した。
しかし事情を知っているはずのゼロや、遠征計画に関わった将軍や大臣たちに直接尋ねて回っていたが、その誰からもまともな回答が得られず、業を煮やしていた。そればかりか、ゲートたちを拘束しようとしていると言う動きまで出始め、窮した二人はエリザと「頭巾」で連絡を取った。
「……ってわけで、手ぇ貸してくれるか?」
《ええよ》
「まずは船を貸して欲しい。今、南で何が起こってるのか、調べなきゃならんからな」
《ヒトとカネもいるやろ? こっちで50人くらい都合したるで。おカネはクラムやと向こうで使えへんかも分からんから、現物の金塊もなんぼか渡すわ》
「痛み入ります」
《……気ぃ付けてな》
「ああ。エリちゃんも」
エリザの協力を得たゲートとアロイは双月暦38年3月、南の地に到着した。
「マリアが行方不明!? 死んだって聞いたぞ、俺は?」
そして現地に駐留したままの遠征隊から事の次第を聞き、ゲートとアロイは愕然とした。
「あの、帝国がどうの、と言う話は……?」
「そのような報告は一切行っておりません。存在したと言うような事実からして、全くございません」
「マジかよ」
ゲートとアロイは顔を見合わせ、状況を整理する。
「マリアたちは皇帝と戦って刺し違えたって話だったよな?」
「ええ」
「現地の人間は帝国に虐げられてて、……って話だったけど、今にして思えば、北方の出来事を丸ごと写したような話だよな」
「その帝国そのものが存在しない、となると、……一体あなた方は誰と、いや、何と戦っていたのですか?」
アロイに尋ねられ、士官は表情を曇らせた。
「開戦から、いえ、上陸から7年が経った今でも、何を敵と認めるべきであったのか、良く分からないのです。気付けば我々は、現地の者たちから『悪魔』と罵られ、四方八方から攻められていました」
「そんな……」
「途中でやめようとは思わなかったのか? ゼロに報告してたんなら、撤収命令を下してるはずだよな?」
問いただしたゲートに、士官は泣きそうな顔で答えた。
「陛下は徹底継戦を命じられました。『最後までやるしかない。エリザに介入させないためには、最後まで自分たちの手で戦いを進めるしか無いんだ』と」
「なっ……!?」
二人はもう一度顔を見合わせ、どちらからともなくつぶやく。
「じゃあ、ゼロは……」
「……父上は、知っていながら」
そして同時に、怒りに満ちたうめきを発した。
「なんてひどいことを……!」
と、様子を見ていた士官から、悲痛な問いが投げかけられた。
「将軍、皇太子、その――我々はいつ、戻れるのでしょうか?」
「……」
ゲートとアロイは三度、顔を見合わせ、そしてゲートが答えた。
「……善処する。いや、可能な限り、早く戻れるように配慮する」
現地で真実を知ったゲートたちは、すぐに帰国の途に着いた。その途中、エリザに連絡を取っていたが――。
《ちょとまずいみたいやで。クロスセントラルにおる子らから聞いたけど、アンタら二人を反逆罪にかけようと動いとるみたいやで》
「マジかよ」
《一旦、アタシの街に来た方がええな。そのまんまノースポートとかに入港したら間違い無く捕まるで》
「分かった。そこからどうする?」
《あんまりなー……、こう言うハナシには持って行きたくなかったんやけども》
そこでエリザの言葉が途切れるが、ゲートは彼女が言わんとすることを察していた。
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