「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第6部
琥珀暁・天帝伝 3
神様たちの話、第352話。
まさかの結末。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
エリザの協力で人を集めた上で、ゲートとアロイはクロスセントラルに戻って来た。
「ゲート・シモン将軍、それにアロイ皇太子、……ようこそお戻り下さいました」
武装した士官から挨拶され、ゲートは腰に佩いた剣に手を掛けながら尋ねる。
「状況について教えて欲しい。マジでゼロは、俺たちを捕まえようとしてるのか?」
「それは、……本当です。実際に勅令を発しました。ですが」
士官は首を横に振り、こう続けた。
「流石に軍の上層部から反発があったようで、こうしてお二人が戻って来た今でも、即時拘束すべきか、勅令を撤回するよう要求すべきか、紛糾している模様です。忌憚無く申し上げれば、すぐにでも離れられた方がよろしいのではないかと存じます」
「……ま、そうも行かんさ。俺とアロイがハナシ付けて来る」
「はっ……」
士官と、その後ろに並ぶ兵士たち一個分隊に敬礼され、ゲートとアロイは城へと向かった。
城に入ったところで、ゲートたちはまた武装した兵士たちと、それを率いる同僚の将軍に出くわす。
「げ、ゲート、……その」
声を掛けられ、ゲートは苦笑いする。
「何だよ、マット。シケたツラして」
「分かってんだろ? お前今、捕まえろって言われてんだぜ」
「ゼロにだろ? で、その本人はどこにいんだよ」
「俺たちは、って言うか反対派は、どうにか説得しようとしてんだよ。でも話がこじれてゼロがブチギレてさ、『頭を冷やしてくる。一人にしてくれ』っつって、謁見の間に籠もっちまった」
「そっか。んじゃちょっと、話して来るわ」
「お、おい!」
その場を去ろうとしたところで、肩をつかまれる。
「悪いことは言わねえ、逃げた方がいいって」
「ははっ」
ゲートはその手をやんわりどかし、ニッと笑って返した。
「ちょっと話して、一緒にメシ食ってくるくらいだって。大げさにすんな。いいからお前は帰って書類にサインでもしてろ」
「ゲート……」
心配そうにする友人に背を向け、ゲートとアロイは謁見の間へと進んだ。
「ゼロ、いるかー?」
トントンとドアをノックし、二人はそのまま中へと入った。
「お前何かヘンな勘違いしてるみたいだからよ、いっぺんちょっと肚を割って、……!?」
やんわりと声をかけながら玉座に目を向けたところで、ゲートは絶句した。
「あー……と」
玉座の前に、くしゃくしゃになった三角帽とローブに身を包んだ猫獣人が立っている。そしてその玉座には――すっかり血の気が引いた顔をしたゼロが、目をつぶって座っていた。
いや――。
「……お前が殺したのか?」
「そう思うだろうけどさ、そうじゃないね」
猫獣人は肩をすくめ、こう返した。
「私と話してる最中に、ポックリ逝っちゃったのさ。相当カッカ来てたみたいでね、私に怒鳴り散らしたかと思うと、いきなり胸押さえながらガクッと座り込んで、そのまんま、……ね」
「それを信じろと言うのですか?」
アロイに剣を向けながら尋ねられ、相手はもう一度肩をすくめる。
「信じなきゃ信じないでもいいんだけど、信じといた方が何かといい話だと思うよ、私はね」
「あなたは? 城の者は、あなたが来ていることを存じないようですが。存じていれば、我々に伝えたでしょうし」
「私? 私は……」「あんた、モールさんだろ」
相手が答えるより先に、ゲートが見抜く。
「前に見た時と姿が違うが、あんた、姿を変えられるんだってな。エリちゃんから聞いてる」
「まあ、そんなようなもんだね」
「詳しく聞かせてくれないか? ゼロと最期、どんな話してたんだ?」
「って言ってもねー」
モールは帽子の中に手を入れながら、困った顔をした。
「なーんか『僕の世界は誰にも渡さないぞ』『誰だろうと僕をこの玉座から引きずり下ろせるもんか』みたいなコト、ウダウダ抜かしてたくらいなんだよね。聞きたきゃ詳しく話すけどもさ、そんなの聞いたって、いい感じの遺言にゃならないと思うね、私ゃ」
「……だな」
ゲートは剣の柄から手を放し、アロイにも剣を下げさせるよう示した。
「モールさん、でしたか」
素直に剣を納めながら、アロイが尋ねる。
「先程あなたが仰っていた、『いい話』とは?」
「ん? ああ」
モールはゼロの遺体に一瞬目をやり、二人に振り返った。
「この時点までで起こってる問題事をさ、解決できる手があるって話さね」
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エリザの協力で人を集めた上で、ゲートとアロイはクロスセントラルに戻って来た。
「ゲート・シモン将軍、それにアロイ皇太子、……ようこそお戻り下さいました」
武装した士官から挨拶され、ゲートは腰に佩いた剣に手を掛けながら尋ねる。
「状況について教えて欲しい。マジでゼロは、俺たちを捕まえようとしてるのか?」
「それは、……本当です。実際に勅令を発しました。ですが」
士官は首を横に振り、こう続けた。
「流石に軍の上層部から反発があったようで、こうしてお二人が戻って来た今でも、即時拘束すべきか、勅令を撤回するよう要求すべきか、紛糾している模様です。忌憚無く申し上げれば、すぐにでも離れられた方がよろしいのではないかと存じます」
「……ま、そうも行かんさ。俺とアロイがハナシ付けて来る」
「はっ……」
士官と、その後ろに並ぶ兵士たち一個分隊に敬礼され、ゲートとアロイは城へと向かった。
城に入ったところで、ゲートたちはまた武装した兵士たちと、それを率いる同僚の将軍に出くわす。
「げ、ゲート、……その」
声を掛けられ、ゲートは苦笑いする。
「何だよ、マット。シケたツラして」
「分かってんだろ? お前今、捕まえろって言われてんだぜ」
「ゼロにだろ? で、その本人はどこにいんだよ」
「俺たちは、って言うか反対派は、どうにか説得しようとしてんだよ。でも話がこじれてゼロがブチギレてさ、『頭を冷やしてくる。一人にしてくれ』っつって、謁見の間に籠もっちまった」
「そっか。んじゃちょっと、話して来るわ」
「お、おい!」
その場を去ろうとしたところで、肩をつかまれる。
「悪いことは言わねえ、逃げた方がいいって」
「ははっ」
ゲートはその手をやんわりどかし、ニッと笑って返した。
「ちょっと話して、一緒にメシ食ってくるくらいだって。大げさにすんな。いいからお前は帰って書類にサインでもしてろ」
「ゲート……」
心配そうにする友人に背を向け、ゲートとアロイは謁見の間へと進んだ。
「ゼロ、いるかー?」
トントンとドアをノックし、二人はそのまま中へと入った。
「お前何かヘンな勘違いしてるみたいだからよ、いっぺんちょっと肚を割って、……!?」
やんわりと声をかけながら玉座に目を向けたところで、ゲートは絶句した。
「あー……と」
玉座の前に、くしゃくしゃになった三角帽とローブに身を包んだ猫獣人が立っている。そしてその玉座には――すっかり血の気が引いた顔をしたゼロが、目をつぶって座っていた。
いや――。
「……お前が殺したのか?」
「そう思うだろうけどさ、そうじゃないね」
猫獣人は肩をすくめ、こう返した。
「私と話してる最中に、ポックリ逝っちゃったのさ。相当カッカ来てたみたいでね、私に怒鳴り散らしたかと思うと、いきなり胸押さえながらガクッと座り込んで、そのまんま、……ね」
「それを信じろと言うのですか?」
アロイに剣を向けながら尋ねられ、相手はもう一度肩をすくめる。
「信じなきゃ信じないでもいいんだけど、信じといた方が何かといい話だと思うよ、私はね」
「あなたは? 城の者は、あなたが来ていることを存じないようですが。存じていれば、我々に伝えたでしょうし」
「私? 私は……」「あんた、モールさんだろ」
相手が答えるより先に、ゲートが見抜く。
「前に見た時と姿が違うが、あんた、姿を変えられるんだってな。エリちゃんから聞いてる」
「まあ、そんなようなもんだね」
「詳しく聞かせてくれないか? ゼロと最期、どんな話してたんだ?」
「って言ってもねー」
モールは帽子の中に手を入れながら、困った顔をした。
「なーんか『僕の世界は誰にも渡さないぞ』『誰だろうと僕をこの玉座から引きずり下ろせるもんか』みたいなコト、ウダウダ抜かしてたくらいなんだよね。聞きたきゃ詳しく話すけどもさ、そんなの聞いたって、いい感じの遺言にゃならないと思うね、私ゃ」
「……だな」
ゲートは剣の柄から手を放し、アロイにも剣を下げさせるよう示した。
「モールさん、でしたか」
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「先程あなたが仰っていた、『いい話』とは?」
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